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そして入学へ
54 キング達の密談
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「は? あのエセ聖女にマリーが絡まれた?」
王太子ルドルフの元にもたらされた情報にキング達は眉毛を跳ね上げた。
「おい」「はっ!」
「誰か」「はっ!」
「報告が遅いですよ」「申し訳ございません」
「どうなってるのかな?」「申し訳ございません」
それぞれのキングの元にそれぞれの手の者が音もなく現れて叱責され……情報は共有され、統一された。
マリエルの事は抜け駆けせず、大切にしていこうと言う協定が王太子とキング達の間で約束されているからだ。
「つまり、登校してくるマリエルに指を突きつけ侮辱したと?」
「ありもしない濡れ衣を着せようと?」
はあ、全員はため息をついた。
「殿下、あの黒髪の自称聖女とは何者なのですか?」
「あれはニギル子爵が勝手に地方神殿で行った聖女召喚でやって来た異世界の少女らしい」
「……この国に聖女などこれ以上必要ないじゃないですか?」
この国はとても住み良い。大きな問題もないし、国民達もとても穏やかだ。以前は大きかった貧民街もどこかの誰かのせいでそこから抜け出す子供が増えたので、小さくなりつつある。
街にある三つ葉塚歌劇団が、色々な物を発注するので商人達も潤って交易も盛んだ。
鍛冶師の集団は「小娘に負けらんねー!」と謎の合言葉で逸品を生み出しているし、最近復帰した伝説の師匠も元気に槌を振るっているし、彫金や細工に目覚める者も多い。
それより農作物の改良が進み、味が良く虫や寒さに強い品種が生み出されていて、収穫量が鰻登りだったり……まあだいたい誰かが何かをしていたようだ。
「そうだ。だから国家予算で聖女召喚をするとあった申請は当然却下した。それなのにニギル子爵は地方で行い……聖女だから、国で面倒を見るように要請して来た」
「なんと迷惑な。勿論断ったんですよね?」
ダイヤキング、ケーニッヒは呆れたとため息をつく。
「勿論だ。聖女ならマリエルがいるからな。もし万が一にもマリエルより強い力を持っていたら考慮の余地はあったかもしれんが……見習い神官程では話にならん」
「……その程度で聖女を名乗るとは、驚きを隠せませんね」
スペードキング、デュカスがまとめられた報告書を見てから、テーブルに置く。本当にため息しか出ない内容だったからだ。
「そうなんだ。もし、国が荒れ、手がつけられない状態だったならあの程度の実力の聖女にすら縋っていただろうが」
「どんどん良くなってるもんねー。誰かさんのお陰で」
くすくすっと楽しそうにハートキング、テオドールが少し影のある笑顔を浮かべる。
「そんな見習い娘が、私達の聖女マリエルに誹謗中傷を浴びせた」
「そんなものを学園に置いておくなんて殿下の不手際ですよ、そんな方に大切な妹はお任せ出来ないのですが?」
クラブキング、ヴィンセントはデュカスが投げ捨てた報告書を拾い上げ目を通しているが、静かに深く怒っている。
「対処したいのだが一応聖女だ。早めに片をつけるよ」
「やっぱりマリーの婚約者は私にしないか? ヴィンセント。私がマリーを守るよ」
「いやいや、それならやっぱり私にしようヴィンセント。商人の力を知ってるだろう?」
身分の序列を守って泣く泣く諦めたはずのデュカスとケーニッヒはここぞとばかりに売り込みに来ている。
「あーあ、私じゃ近すぎるからなあ~悔しいなぁ」
テオドールはつまらないと唇を尖らせる。
「ええい! マリーの婚約者は私で決定したんだ! 諦めろ、二人とも!」
いつもは声を荒げた事がない王太子ルドルフの少し焦った顔に、4人のキングは笑みを深くし、友情をはぐくんでいくのであった。
王太子ルドルフの元にもたらされた情報にキング達は眉毛を跳ね上げた。
「おい」「はっ!」
「誰か」「はっ!」
「報告が遅いですよ」「申し訳ございません」
「どうなってるのかな?」「申し訳ございません」
それぞれのキングの元にそれぞれの手の者が音もなく現れて叱責され……情報は共有され、統一された。
マリエルの事は抜け駆けせず、大切にしていこうと言う協定が王太子とキング達の間で約束されているからだ。
「つまり、登校してくるマリエルに指を突きつけ侮辱したと?」
「ありもしない濡れ衣を着せようと?」
はあ、全員はため息をついた。
「殿下、あの黒髪の自称聖女とは何者なのですか?」
「あれはニギル子爵が勝手に地方神殿で行った聖女召喚でやって来た異世界の少女らしい」
「……この国に聖女などこれ以上必要ないじゃないですか?」
この国はとても住み良い。大きな問題もないし、国民達もとても穏やかだ。以前は大きかった貧民街もどこかの誰かのせいでそこから抜け出す子供が増えたので、小さくなりつつある。
街にある三つ葉塚歌劇団が、色々な物を発注するので商人達も潤って交易も盛んだ。
鍛冶師の集団は「小娘に負けらんねー!」と謎の合言葉で逸品を生み出しているし、最近復帰した伝説の師匠も元気に槌を振るっているし、彫金や細工に目覚める者も多い。
それより農作物の改良が進み、味が良く虫や寒さに強い品種が生み出されていて、収穫量が鰻登りだったり……まあだいたい誰かが何かをしていたようだ。
「そうだ。だから国家予算で聖女召喚をするとあった申請は当然却下した。それなのにニギル子爵は地方で行い……聖女だから、国で面倒を見るように要請して来た」
「なんと迷惑な。勿論断ったんですよね?」
ダイヤキング、ケーニッヒは呆れたとため息をつく。
「勿論だ。聖女ならマリエルがいるからな。もし万が一にもマリエルより強い力を持っていたら考慮の余地はあったかもしれんが……見習い神官程では話にならん」
「……その程度で聖女を名乗るとは、驚きを隠せませんね」
スペードキング、デュカスがまとめられた報告書を見てから、テーブルに置く。本当にため息しか出ない内容だったからだ。
「そうなんだ。もし、国が荒れ、手がつけられない状態だったならあの程度の実力の聖女にすら縋っていただろうが」
「どんどん良くなってるもんねー。誰かさんのお陰で」
くすくすっと楽しそうにハートキング、テオドールが少し影のある笑顔を浮かべる。
「そんな見習い娘が、私達の聖女マリエルに誹謗中傷を浴びせた」
「そんなものを学園に置いておくなんて殿下の不手際ですよ、そんな方に大切な妹はお任せ出来ないのですが?」
クラブキング、ヴィンセントはデュカスが投げ捨てた報告書を拾い上げ目を通しているが、静かに深く怒っている。
「対処したいのだが一応聖女だ。早めに片をつけるよ」
「やっぱりマリーの婚約者は私にしないか? ヴィンセント。私がマリーを守るよ」
「いやいや、それならやっぱり私にしようヴィンセント。商人の力を知ってるだろう?」
身分の序列を守って泣く泣く諦めたはずのデュカスとケーニッヒはここぞとばかりに売り込みに来ている。
「あーあ、私じゃ近すぎるからなあ~悔しいなぁ」
テオドールはつまらないと唇を尖らせる。
「ええい! マリーの婚約者は私で決定したんだ! 諦めろ、二人とも!」
いつもは声を荒げた事がない王太子ルドルフの少し焦った顔に、4人のキングは笑みを深くし、友情をはぐくんでいくのであった。
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