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助けてもらったようです。
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どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。
前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。
それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう?
私の願い通り滅びたのだろうか?
「リスミー嬢! リスミー嬢!」
誰の声だろうか?
私の手を握っているこの人は誰?
ゆっくりと目を開くとぼんやり見えるその人は誰だろう?
「リスミー嬢~! 良かった」
痛い。
えっと、痛いんですけど……。
そうだ! この人は確かモーバー卿だ。
そういえば階段から落ちる時に姿が見えたような気がする。
「モーバー卿……」
「リスミー嬢、良かった」
モーバー卿は私が目覚めたからか握ってくれていた手にかなり力が入っている。
だから痛いって。
「……痛……い」
モーバー卿の顔を見上げる。
「す、すまない」
慌てて手を離した。
モーバー卿が肩が気になる。怪我をしているのかな。
まさか、階段の下で私を受け止めてくれたのかしら?
「モーバー卿、まさか私を受け止めてくれたのですか?」
モーバー卿は照れ臭そうに微笑んだ。
「君が階段の上から宙に舞った姿を見た時は生きた心地がしなかったよ。怪我がなくて良かった」
「モーバー卿はそのせいて怪我をされているんじゃありませんか?」
「大丈夫さ。少し肩を痛めただけだ」
私は光属性の魔法が使える。
他人の身体の違和感がわかり、回復魔法で治すことができるのだが、自分には使えない。
私はモーバー卿に回復魔法をかけた。
「こ、これは? 肩が……。リスミー嬢、回復魔法か? 自分の身体が辛い時に私の事など気にしなくてもいい。身体は大丈夫か?」
「大丈夫ですわ。痛みはとれましたか?」
「あぁ、もうなんでもない。ありがとう」
肩の痛みは取れたようだ。
モーバー卿は我が国の王太子であるルートガー殿下の側近、リーンハルト・モーバー公爵子息。
宰相の嫡男で学園に通いながら宰相補佐をしている。
今まで私とはそれほど接点はなかった。ただの顔見知りくらいの間柄のはず。なぜ助けてくれたのだろう?
たまたま近くにいたからか?
この学園に入学して以来、なぜかルートガー殿下の婚約者のマヌエラ・ペルマックス侯爵令嬢が私に嫌がらせをするようになった。
どうしてなのかわからないが、ペルマックス侯爵令嬢は私が殿下に言い寄っていて、殿下も満更では無いと思っているらしい。
私は殿下とは話をしたこともないのよ。人違いじゃ無いのかしらね。
「リスミー嬢、起き上がれそうなら屋敷まで送って行こう」
モーバー卿が声をかけてくれた。でも助けてもらった上にそんな迷惑はかけられない。
「大丈夫ですわ。ひとりで帰れます。助けていただいたお礼はまた日を改めてさせていただきます」
「礼など無用だ。私が勝手にしたことだからね。勝手ついでに送らせて欲しい」
そんなに見つめられたら断りにくい。
それに絶対断らせないぞという圧もすごい。うちの馬車は一度屋敷に戻っているしお言葉に甘えてもいいかな。
「我が家の馬車ならすぐ出せる。送らせて欲しい」
断れなくなり、屋敷まで送ってもらうことになった。
前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。
それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう?
私の願い通り滅びたのだろうか?
「リスミー嬢! リスミー嬢!」
誰の声だろうか?
私の手を握っているこの人は誰?
ゆっくりと目を開くとぼんやり見えるその人は誰だろう?
「リスミー嬢~! 良かった」
痛い。
えっと、痛いんですけど……。
そうだ! この人は確かモーバー卿だ。
そういえば階段から落ちる時に姿が見えたような気がする。
「モーバー卿……」
「リスミー嬢、良かった」
モーバー卿は私が目覚めたからか握ってくれていた手にかなり力が入っている。
だから痛いって。
「……痛……い」
モーバー卿の顔を見上げる。
「す、すまない」
慌てて手を離した。
モーバー卿が肩が気になる。怪我をしているのかな。
まさか、階段の下で私を受け止めてくれたのかしら?
「モーバー卿、まさか私を受け止めてくれたのですか?」
モーバー卿は照れ臭そうに微笑んだ。
「君が階段の上から宙に舞った姿を見た時は生きた心地がしなかったよ。怪我がなくて良かった」
「モーバー卿はそのせいて怪我をされているんじゃありませんか?」
「大丈夫さ。少し肩を痛めただけだ」
私は光属性の魔法が使える。
他人の身体の違和感がわかり、回復魔法で治すことができるのだが、自分には使えない。
私はモーバー卿に回復魔法をかけた。
「こ、これは? 肩が……。リスミー嬢、回復魔法か? 自分の身体が辛い時に私の事など気にしなくてもいい。身体は大丈夫か?」
「大丈夫ですわ。痛みはとれましたか?」
「あぁ、もうなんでもない。ありがとう」
肩の痛みは取れたようだ。
モーバー卿は我が国の王太子であるルートガー殿下の側近、リーンハルト・モーバー公爵子息。
宰相の嫡男で学園に通いながら宰相補佐をしている。
今まで私とはそれほど接点はなかった。ただの顔見知りくらいの間柄のはず。なぜ助けてくれたのだろう?
たまたま近くにいたからか?
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どうしてなのかわからないが、ペルマックス侯爵令嬢は私が殿下に言い寄っていて、殿下も満更では無いと思っているらしい。
私は殿下とは話をしたこともないのよ。人違いじゃ無いのかしらね。
「リスミー嬢、起き上がれそうなら屋敷まで送って行こう」
モーバー卿が声をかけてくれた。でも助けてもらった上にそんな迷惑はかけられない。
「大丈夫ですわ。ひとりで帰れます。助けていただいたお礼はまた日を改めてさせていただきます」
「礼など無用だ。私が勝手にしたことだからね。勝手ついでに送らせて欲しい」
そんなに見つめられたら断りにくい。
それに絶対断らせないぞという圧もすごい。うちの馬車は一度屋敷に戻っているしお言葉に甘えてもいいかな。
「我が家の馬車ならすぐ出せる。送らせて欲しい」
断れなくなり、屋敷まで送ってもらうことになった。
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