【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は１００年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。

屋敷に戻ってきました

　学園から連絡がいっていたので、両親は玄関ホールで待っていてくれた。

　私はなぜかモーバー卿に抱っこされている。

「ミオリア！」

「モーバー卿、この度はなんとお礼を申し上げれば良いか。学園の先生からの伝書で話は聞きいております」

　先生は伝書を飛ばしてくれていたようだ。
　伝書とは、魔法で手紙を送ることだ。リアルタイムですぐに書いた手紙が本人の手元に届く。

　私が階段から突き落とされ意識を失ったが、モーバー卿が助けてくれたので怪我はないと連絡があったそうだ。

　抱っこしているからと、私の部屋のベッドまで私を運んでくれた。重いのに申し訳ない。

「確かに送り届けましたので、私はこれで失礼します。リスミー嬢、ゆっくり休んで下さい」

「ありがとうございます」

　モーバー卿が私を下ろし部屋を出た。父母と廊下で何やら話をしているようだ。


「ミオリア様、あんな素敵な方とそんな仲だったのですか？」

　私の着替えを手伝ってくれている侍女のエマがニヤニヤしながら聞いてきた。

「そんな仲ってどんな仲よ。あの方とは挨拶をしたくらいのただの顔見知りで、今日はじめてちゃんとお話したのよ。階段から落ちた私を受け止めてくれたそうなの。重いのに抱えて家にまで送って下さって申し訳ないわ」

「そうなのですか？　でもあの方はミオリア様のことを愛おしく思われているようにお見受けいたしましたよ。私はてっきり恋人だと思いましたわ」

　エマは何を言っているのだろう？　そんなわけないじゃない。

「もう、そんな訳ないわ。あの方はモーバー公爵家の嫡男で次期宰相よ。学年も違うし、私なんかに思いを寄せる訳がないわ」

「そうなのですか！　どおりでしっかりされていると思いました。ミオリア様、私なんかと仰いますが、ミオリア様はこのリスミー侯爵家のお嬢様ですし、可愛いです。釣り合いますよ。大丈夫でございます。モーバー卿の一目惚れかもしれませんね」

　エマはニヤニヤしている。

「だから、そんなんじゃないの！」

　私は布団を頭の上まで被った。


　しばらく寝ていたようだ。目が覚めたのでサロンに行くと父母がお茶を飲んでいた。

「ミオリア、もう大丈夫なの？」

　母がカップを置き、私の顔を見た。

「大丈夫ですわ。ご心配をお掛けしました」

「モーバー卿から色々聞いた。ペルマックス侯爵の娘に嫌がらせをされていたらしいな。今まで気づいてやれなくてすまなかった」

　父が申し訳なさそうに言う。

「いえ、私も最近まで気がつかなかったのです。何が変だなとは思っていたのですが、まさかペルマックス嬢が嫌がらせをしていたなんて。ペルマックス嬢は私をどなたかと間違えていらっしゃるんだと思います」

「間違えている？」

　父は驚いたような顔をした。

「ペルマックス嬢は私とご自分の婚約者のルートガー殿下が恋仲だと思っているようなのですが、私は殿下と口を利いたこともないのです」

「そうだな。とにかくペルマックス家には抗議しておいた。モーバー家からも抗議してくれるそうだ。ペルマックス嬢と殿下はうまくいっていないと聞く。殿下に誰か好いた女性がおるのかもしれんな。しかし、間違えられて殺されかけたなど笑い事では済まされない。明日、陛下と話をしてみるよ」

　父はちょうど明日、陛下と約束があるらしい。

　それにしてもいったいなんで私がこんな目に遭うのだろう？　

　急に思い出した前世と何か関係があるのだろうか？

　前世のことを調べてみようかな。

　あの後あの国やあの人達はどうなったのか？　　

　私はメイドが入れてくれたお茶をひと口飲み、マカロンを頬張った。