【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。

金峯蓮華

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魔法じゃない?

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 学園は転校生のプリシラ・ペルマックス侯爵令嬢が男子生徒を侍らせている。

 その中にはラートガー殿下やリーンハルト様もいる。

 マヌエラに会いに行った時に、幼い頃から父親に魔法の練習をさせられていたが、全く使えず無能! と罵倒されたと言っていた。
 ペルマックス侯爵はそんなに昔から前世の記憶があったのだろうか? それともプルフェン伯爵とは全くの別人でただ成り上がるために娘に魅了の魔法を取得させて手駒にしようとしていたのか?

 今のところはまだペルマックス侯爵とプリシラがあのふたりが生まれ変わった姿なのかどうかわからない。

 しかし、プリシラはキャロラインとよく似ている。顔や形が似ているわけではないが、仕草や語尾の伸びた話し方、上目遣いなところ、庇護欲をそそられるような雰囲気がそっくりなのだ。

 リーンハルト様から近づいてはいけないと言われているが、やはり私だけ何もしないで高みの見物をしているのはなんだか嫌だ。
 もし、本当にプリシラがキャロラインならば何らかの仕返しをしたい。
 キャロラインが現れなければ前世の私はあんな目に遭うこともなかったのだ。

 今の私は回復魔法や浄化魔法が使える。
それは母の実家が医療や薬師の家系で、遺伝のようなものらしい。
 幼い頃から母に手解きを受けているので、薬草などにも詳しいのだ。

 私はこっそりプリシラと取り巻き達に近づき、こっそりと回復魔法をかける。

 気づかれないように緩くかけていく。

 あれ? プリシラから魔力を感じないわ。魅了の魔法では無いのかしら?

 でもかかりが浅い人は魔法が解けていっている。何にかかっているのだろう?

「ミミ、何度も言っているだろう。プリシラに近づくな」

 情報を共有するためにみんなで集まっている王家のサロンでリーンハルト様は怖い顔で怒る。

「大丈夫ですわ。浅くかかっている人なら私の回復魔法で解けます。どんどん深くかかってしまうと手遅れになります。リー様や殿下は大丈夫ですが、他の方達は皆防御しておりません。プリシラのせいで御自分だけてなく婚約者のいる方はその方の人生まで壊してしまいます。プリシラは私が回復魔法を使えることは多分知りません。何かあっても私には影がついているのなら、大丈夫ですわ」

 力説してしまった。

 リーン様は難しい顔をしている。

「わかった。でも無理はするな。それと……」

 リーン様が私の頭の上に手を乗せ、何やら呪文を唱えている。

 手から透明の膜のようなものが流れ出て私の身体を包み込む。

「防御膜だ」

 ぼそっと言って後ろを向いた。

「そんなのあるの? 私にもかけてよ」

 ディアナがリーン様の肘を引っ張る。

「僕にもお願いしますよ」

「私にも……」

 リーン様はため息をついた。

「仕方ない。みんなまとめてかけてやるよ」

「もう、そんないいのがあるなら出し惜しみしないでかけてよ」

「ほんとですよ。リーンハルト様、ミオリア嬢だけに優しいんだから」

 いやいや、たまたまだろう。

「お前達、リーンハルトを揶揄うな。リーンハルト、ありがとう」

 やはり、殿下はちゃんとしてる。

「いや、とにかく早くペルマックス侯爵の悪事の証拠を掴んで、プリシラと離れたい。あの匂いは近くにいるだけで気分が悪くなる」

 匂い? 私には匂いは感じない。

「そうだね。確かにあの匂いは酷い」

 コンラート様は鼻をつまむ仕草をした。

 殿下はそれを見てふっと笑い、ゆっくりと話し出した。

「今朝方ガランタミンに潜入しているインタールの諜報員から報告が来ていた。やはり、人身売買をしているようだ。ガランタミン国に我が国の孤児達を奴隷として売っている。そしてガランタミンからは薬を買っているそうだ」

「薬?」

 私の問いに殿下が頷く。

「あれは魅了の魔法ではない。多分薬だ。薬を粉にして溶いたものを香水にしているのだろう。プリシラから香る匂いが皆を惑わしているようだ」

「確かにあの女から魔力は感じない。何とも言えない気持ちの悪い匂いをさせている。まぁ、近づかなければわからないがな。あの女は自分に必要な者に近づき匂いを嗅がせ、精神状態をおかしくしているのだろう」

 薬なのか。

「だったら、私の回復魔法が効くわ。薬によって精神を害されているのなら、それに何からできた薬かわかれば解毒剤のようなものもつくれるはず」

 私は顔を上げた。

「ガランタミンは薬草の栽培が盛んだわ。ディアナ、その薬は手に入らないかしら? それと何の薬草から薬を作っているのか調べられない?」

「任せて、インタールの影にできないことなんかないわ。すぐに伝書バードを飛ばすわね」

 ディアナはドヤ顔でささっと手紙を書いて魔法で出したバードに持たせた。

「薬のことは母や祖母にも聞いてみるわ。手に入ったら、魔法で分解して解毒薬を作る。それを噴射のように広めれば、プリシラとペルマックス侯爵の偽魅了の魔法は効かなくなるわね」

「じゃあ、ミオリア嬢は薬のことを頼む」

 殿下に肩をポンと叩かれた。

「ミミ、大丈夫か?」

 リーンハルト様は心配そうにしている。

「任せて下さい。私も仕返ししたいの」

 私、こう見えても強いのよ。

「わかった、私はモーバーの手の者達と人身売買の件を探ってみる。プリシラに怪しまれてはいけないからそろそろ戻るとしよう」

 私達はそれぞれの家とレミニール王国を巻き込み、ペルマックス侯爵とガランタミン国の秘密を暴く為に動き出した。




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