【完結】巻き戻してとお願いしたつもりだったのに、転生?そんなの頼んでないのですが

金峯蓮華

文字の大きさ
19 / 28

19話 内緒にしてね

しおりを挟む
 私の部屋のサロンでゲオルグ、ルドルフ、そしてメアリーと4人でいる。

 ゲオルグは怖い顔をして、私の前に座っている。

「エデル様、いつから前世の記憶があったのですか?」

「最初からよ」

 私の言葉に皆目を丸くしている。

 ルドルフは呆れたような顔をした。

「生まれたばかりの時から23歳の記憶があったのですか?」

「ええ、だから可愛げがなかったでしょう?」

 メアリーは私をぎゅっと抱きしめた。

「そんなことはございませんよ。お嬢様はずっと可愛いです。そんなお小さい頃から記憶があったなんてお辛かったですね」

 私の頭をよしよしと撫でた。

「辛かった訳じゃないけど、混乱したわ。頭や心は23だけど、身体は赤ちゃんだから、話せないし、動けないでしょう。でも、周りを見ているうちに、記憶がある事は内緒にしようと思ったの」

 ゲオルグは眉根を寄せている。

「なぜですか?」

「だって、私に記憶があることを知ったら、アーベルがまた私をたよるでしょう? アーベルのためにならないもの」

「確かに」

「ローザは生まれ変わりということにしたかったみたいね。国民にそう発表して、皆を元気づけたようね」

 私が亡くなった後、国民も元気がなかったらしい。

「そうですね。父も陛下と色々国民の士気を上げようとしたけれど、なかなかうまくいかず、我が国はずっと喪中のような感じでしたね」

 ゲオルグの父親は我が国の宰相で、呑気な父が国王の時も、気弱なアーベルが国王になってからも苦労している。

「妃殿下は『お腹の子が女だったら、この子には悪いけど名前もエデルガルトにして、お義姉様の生まれ変わりだと発表するわ。民に希望を持ってもらわなくては我が国はダメになる。お義姉様はそんなことを望まないわ』と妊娠がわかった時からずっとおっしゃっていましたよ」

 ゲオルグの言葉にメアリーも口を開いた。

「ローザリア様は王太后様と一緒になんとか国をよくしようとアーベル様のお尻を叩いておいででした。アーベル様も頑張ってはおられましたが、やはり、あんな形でエデルお嬢様を亡くしたショックをずっと引きずっておりましたねー」

「全く、アーベルにしても、ライにしても私の最後の願いを忘れているのね。ふたりにはバウムガルテン王国のことを頼んだはずなんだけど」

 私は大きなため息をついた。

「みんなにお願いがあるの。私が前世の記憶があることはバウムガルテンの人には内緒にしてほしいの。私はもう女王なんて嫌なの。記憶があるってわかったら今すぐにでもまた女王にされそうでしょう?」

 私の言葉に3人は頷いてくれた。

 ゲオルグは難し顔をして、私の顔を見る。

「魔法ですか? ライムント様が転生の魔法を掛けたのでしょうか?」

「わからないわ。ラインハルト殿下は最近までライの時の記憶がなかったからね。今なら聞いたらわかるかもしれないわね」

「転生の魔法はとても難しい魔法でクラウベルク王国にも使える者が数人しかおりません。ライムント殿下なら、転生の魔法より、時戻しの魔法を使うと思うのですが……」

 ゲオルグは小さい頃からクラウベルク王国に留学していたので、ライムントのことはよく知っている。確かにライムントなら転生ではなく、時間を巻き戻すだろう。

 エアハルトが魅了の魔法にかかる前に巻き戻し、クラッセン王国に乗り込んで魅了の魔法自体を阻止すると思う。

 ゲオルグは顔を伏せた。

「実は……エデルガルト様が女王になると決まった時、ライムント殿下は時戻しの魔法を使うことを考えておられたのです。しかし、時戻しの魔法の対価は魔導士の寿命です。たとえ時が戻って、エデルガルト様と結婚できても長く生きられないのなら意味がないと躊躇されている間にあんなことが起きてしまったのです」

 まさか、ライムントがそんなことを考えていたなんて。

 メアリーがハンカチで顔を押さえている。

「内緒にしましょう。私はあの時のライムント様を見ています。あの姿が頭に焼き付いています。今度は今度こそはお嬢様と添い遂げさせてあげたいです」

「そうだな。バウムガルテンにはラートガー殿下もリュディガー殿下もいる。エデルガルト様が国を出ても問題はないだろう」

 ルドルフはメアリーの肩に手を置いた。

「一度ラインハルト殿下と話をしてみます。記憶が戻る前のラインハルト殿下とは留学していた頃に何度も話をしたことがあります。子供とは侮れない、なかなかの腹黒策士ぶりなところを何度も見ています。ライムント殿下は裏表のない真っ直ぐな人でしたので、ラインハルト殿下とライムント殿下の人格が混ざり合い、どうなっているのか気になります」

 腹黒策士? ラインハルト殿下ってそんな人なの? 10歳にして腹黒策士って?
ゲオルグは私が困惑しているのがわかったようでくすりと笑った。

「国王になるにはそれくらいでないとだめなんですよ。腹黒策士ですが決して不誠実ではありません。エデルガルト様に関しては特に誠実でしょう。ただ……」

「ただ?」

「前世で拗らせているだけに、執着がひどいかもしれませんね。エデルガルト様を手を入れるためにいろんな策を練り、確実にがんじがらめにしてきそうです。まぁ、エデルガルト様がラインハルト様をお好きであれば問題ないですよ」

 ゲオルグめ、何がそんなにおかしいのだ。

「あ~、そういえば、ライムント殿下はかなりエデルガルト様に惚れ込んでましたよね。なんとか王配になれるように陛下や国の重鎮達を動かそうとしてました。でも、クラウベルクの王家の男は他国に移住することは法律以外の問題でしたからね。今度は何がなんでもじゃないですか」

 怖いですね~と言いながら笑っている。ルドルフもメアリーも半笑いだ。

「とにかく、今はまだ8歳だし、結婚のことは慌ててきめるつもりはないの。私もライも前世とは違う人間として生きているのだから、前世に縛られることはないと思うの。らいも自由になればいいのよ」

 とりあえず、3人はバウムガルテンには内緒にしてくれることになった。トーマスとジェフリーに関しては、釘を刺しておかなくても大丈夫だろう。

 前世で私はライムントが好きだった。ライムントのいない人生なんて考えられなかった。

 もしも、ライムントと結婚できなかったら一生ひとりでいて、アーベルの子供に跡を継がせればいいと思っていた。

 しかし、ラインハルトがライムントの生まれ変わりだと言われても、面影はあるが、10歳の頃のライムントを知らないし、まだそんなに深く話していないので、今のラインハルトの人となりがよくわからない。それにまだ8歳の私は恋愛感情がよくわからない。

 ヴェルミーナは『慌てなくていい、ゆっくり仲良くなって、ラインハルトのお嫁さんになってくれると嬉しいなぁ』と言っていたが、目は逃さないわよと言っていたような気がする。

 犯人探しと魔法を学ぶためにクラウベルクに来たが、ひょっとして時期尚早だったかしら?

 まさかとは思うけど、このままバウムガルテンに帰れなくなったりしないわよね?

 メアリーがお茶のおかわりを注ぐ様子を見ながら今日何度目かのため息をついた。

しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

傾国の王女は孤独な第一王子を溺愛したい

あねもね
恋愛
傾国の王女と評判のオルディアレス王国の第一王女フィオリーナが、ラキメニア王国の第一王子、クロードに嫁ぐことになった。 しかし初夜にクロードから愛も華やかな結婚生活も期待しないでくれと言われる。第一王子でありながら王太子ではないクロードも訳ありのようで……。 少々口達者で、少々居丈高なフィオリーナが義母である王妃や使用人の嫌がらせ、貴族らの好奇な目を蹴散らしながら、クロードの心をもぎ取っていく物語。

契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。

橘ハルシ
恋愛
 ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!  リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。  怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。  しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。 全21話(本編20話+番外編1話)です。

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

必要ないと言われたので、私は旅にでます。

黒蜜きな粉
ファンタジー
「必要ない」 墓守のリリアはある日突然その職を失う。 そう命令を下したのはかつての友で初恋相手。 社会的な立場、淡い恋心、たった一言ですべてが崩れ去ってしまった。 自分の存在意義を見失ったリリアに声をかけてきたのは旅芸人のカイだった。 「来る?」 そうカイに声をかけられたリリアは、旅の一座と共に世界を巡る選択をする。 ──────────────── 2025/10/31 第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞をいただきました お話に目を通していただき、投票をしてくださった皆さま 本当に本当にありがとうございました

【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく

たまこ
恋愛
 10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。  多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。  もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

処理中です...