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21話 思惑(ゲオルグ視点2・ラインハルト視点)
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テレーザ? なぜテレーザの名前が出るんだ。
テレーザは私の恋人だった。魔法学校の後輩だった。彼女が卒業したら結婚しようと思っていた。
だが、私が卒業し、バウムガルテンに戻っている間に彼女の家は借金で父親が自害し、没落した。彼女は借金を返すためにどこかの後妻になったと聞いた。
すぐにクラウベルクに向かった。私がもっと早く彼女の家の状態を把握できていれば没落は防ぐことができたかもしれない。私は後悔し、テレーザの行方を探した。
婚家で幸せにしているかどうか知りたかった。
しかし、どんなに探してもテレーザも嫁いだ先も全くわからなかった。
私は時戻しができる魔導士を探し、学生時代に時を戻してほしいと頼んだが、私ではどうにもできないくらい法外な値段を突きつけられた。時戻しの魔法とはそれくらいの対価が必要らしい。私に用意できる金額ではなかった。父や母に諦めろと言われたが諦められなかった。
「テレーザは結婚したのでは?」
「テレーザ嬢は優秀な魔導士だ。あんな金の亡者の後妻になどしてはいけないと母が保護したのだ。伯爵家の借金は王家が肩代わりした、領地も今は王家が管理している。テレーザ嬢は魔法省で働いているよ」
テレーザがいる。結婚していなかった。
「まさか、テレーザ嬢があなたの恋人だったとは私も最近まで知らなかった。あの母のことだから最初から知っていて保護したのかもしれないな。あなたにはテレーザ嬢と結婚してもらい、伯爵になってもらうつもりです。そして私の側近としてこの国で生きてもらいたのです」
「テレーザに会わせてください!」
「エデルとともにこの国に永住し、私の側近になってくれますか?」
エデルガルト様ありきか。ええぃ、ままよ。エデルガルト様すみません。
「もちろんです。クラウベルク王国とラインハルト殿下に誠心誠意お仕え致します」
私は殿下に忠誠を誓ってしまった。
好きな女をちらつかせて私を取り込む作戦だったのだろうが、もとよりエデルガルト様が望めばクラウベルクに骨を埋めるつもりだった。このことがわかってもエデルガルト様は私をなじったりしないだろう。
「テレーザ嬢をこちらに」
殿下は後ろを振り返り侍女に声をかけた。
侍女は扉を開け、女性を招き入れる。
テレーザか?
女性は俯いている。4年ぶりに見るテレーザは髪が短くなっていて、少し痩せたようだ。
「テレーザ? テレーザなのか?」
私が駆け寄り、顔を覗き込むとテレーザは小さく頷く。
テレーザだ。もう誰とも恋も結婚も、するつもりなどなかった。私はテレーザ以外の女など考えられなかった。テレーザがここにいる。夢のようだ。
「会いたかった」
テレーザは黙ったままだ。
殿下は笑みを浮かべ立ち上がった。
「では、あとはふたりで話をして下さい。ゲオルグ、これからのことはまた日を改めて話しましょう。私はこれで」
殿下はサロンから出て行った。
「殿下は姫様を娶るために、私をあなたに与えたのですね。あなたはその見返りに何も知らない姫様を殿下に差し出すのですか?」
テレーザは眉根を寄せている。
「テレーザ、誤解だ。エデル様と殿下は思いあっておられる。私は背中を押すだけだ。側近の話もどちらでもいい。私はテレーザといられればそれでいい」
「本当ですか?」
「あぁ、本当だ。信じて欲しい。エデル様にも会って欲しい」
「しかし、私のようなものでよろしいのですか? あなたはバウムガルテン王国の宰相様のご子息。私は没落した伯爵家の娘ですよ。あの頃から不釣り合いでしたが、今は本当に釣り合わない」
「この国では、私はただのゲオルグだ。殿下の側近がいやなら断るよ。私はテレーザて一緒にいられればそれでいい。それだけで十分なんだ」
「だったら殿下に断ってくれますか?」
「テレーザが望むなら」
私は殿下と話すために部屋から出て行こうとドアに向かったが、テレーザに腕を掴まれた。
「ごめんなさい。あなたを試しました」
試した?
「側近という地位を得るために私を妻にするのだと思ったのです。貴方を信じたいけど、あれからもう4年。私は貴方を裏切り他の人に嫁ごうてした身。あなたがまだ私を思ってくれているとはにわかには信じられなくて……ごめんなさい」
私はテレーザを抱きしめた。
「私はテレーザだけだ。誰とも結婚するつもりはなかったよ」
「私もあなただけ。嫁いだらすぐに自害するつもりでした」
私達はそれから4年の時間を埋めるように長い時間話をした。
***ラインハルト視点
ゲオルグは取り込めたな。テレーザを押さえておくとは母はすごいな。
私の記憶が戻ってから聞いた話だが、父母はエデルガルトが生まれた時、バウムガルテンにお祝いに行った。エデルの顔を見た時に生まれ変わりだとわかり、エデルに記憶があることもわかったそうだ。
そして私がライムントだともわかっていた。
母は私達を今度こそ添い遂げさすために全ての可能性を見逃さないようにしたらしい。
ゲオルグは必ず大成する。だからテレーザを保護した。あわよくばエデルはもちろん、ゲオルグも我が国にというわけだ。
母は「あなたの黒さは陛下に似たのよ」と言うが、母に似たのだと思う。まぁ、父も大概黒い。
ライムントは清廉潔白だった。欲も野心もなかった。でも私はちがう。ライムントの時の失敗はもうしない。綺麗だけでは勝てないのだ。今度こそエデルガルトを守る。絶対死なせない。幸せにする。そのために私は転生したのだろうから。
アーベルが無能なら、我が国の属国にすればいい。エデルガルトがバウムガルテンを心配するなら国ごと私が守ればいい。
私の幸せはエデルガルトが幸せであることなのだから。
テレーザは私の恋人だった。魔法学校の後輩だった。彼女が卒業したら結婚しようと思っていた。
だが、私が卒業し、バウムガルテンに戻っている間に彼女の家は借金で父親が自害し、没落した。彼女は借金を返すためにどこかの後妻になったと聞いた。
すぐにクラウベルクに向かった。私がもっと早く彼女の家の状態を把握できていれば没落は防ぐことができたかもしれない。私は後悔し、テレーザの行方を探した。
婚家で幸せにしているかどうか知りたかった。
しかし、どんなに探してもテレーザも嫁いだ先も全くわからなかった。
私は時戻しができる魔導士を探し、学生時代に時を戻してほしいと頼んだが、私ではどうにもできないくらい法外な値段を突きつけられた。時戻しの魔法とはそれくらいの対価が必要らしい。私に用意できる金額ではなかった。父や母に諦めろと言われたが諦められなかった。
「テレーザは結婚したのでは?」
「テレーザ嬢は優秀な魔導士だ。あんな金の亡者の後妻になどしてはいけないと母が保護したのだ。伯爵家の借金は王家が肩代わりした、領地も今は王家が管理している。テレーザ嬢は魔法省で働いているよ」
テレーザがいる。結婚していなかった。
「まさか、テレーザ嬢があなたの恋人だったとは私も最近まで知らなかった。あの母のことだから最初から知っていて保護したのかもしれないな。あなたにはテレーザ嬢と結婚してもらい、伯爵になってもらうつもりです。そして私の側近としてこの国で生きてもらいたのです」
「テレーザに会わせてください!」
「エデルとともにこの国に永住し、私の側近になってくれますか?」
エデルガルト様ありきか。ええぃ、ままよ。エデルガルト様すみません。
「もちろんです。クラウベルク王国とラインハルト殿下に誠心誠意お仕え致します」
私は殿下に忠誠を誓ってしまった。
好きな女をちらつかせて私を取り込む作戦だったのだろうが、もとよりエデルガルト様が望めばクラウベルクに骨を埋めるつもりだった。このことがわかってもエデルガルト様は私をなじったりしないだろう。
「テレーザ嬢をこちらに」
殿下は後ろを振り返り侍女に声をかけた。
侍女は扉を開け、女性を招き入れる。
テレーザか?
女性は俯いている。4年ぶりに見るテレーザは髪が短くなっていて、少し痩せたようだ。
「テレーザ? テレーザなのか?」
私が駆け寄り、顔を覗き込むとテレーザは小さく頷く。
テレーザだ。もう誰とも恋も結婚も、するつもりなどなかった。私はテレーザ以外の女など考えられなかった。テレーザがここにいる。夢のようだ。
「会いたかった」
テレーザは黙ったままだ。
殿下は笑みを浮かべ立ち上がった。
「では、あとはふたりで話をして下さい。ゲオルグ、これからのことはまた日を改めて話しましょう。私はこれで」
殿下はサロンから出て行った。
「殿下は姫様を娶るために、私をあなたに与えたのですね。あなたはその見返りに何も知らない姫様を殿下に差し出すのですか?」
テレーザは眉根を寄せている。
「テレーザ、誤解だ。エデル様と殿下は思いあっておられる。私は背中を押すだけだ。側近の話もどちらでもいい。私はテレーザといられればそれでいい」
「本当ですか?」
「あぁ、本当だ。信じて欲しい。エデル様にも会って欲しい」
「しかし、私のようなものでよろしいのですか? あなたはバウムガルテン王国の宰相様のご子息。私は没落した伯爵家の娘ですよ。あの頃から不釣り合いでしたが、今は本当に釣り合わない」
「この国では、私はただのゲオルグだ。殿下の側近がいやなら断るよ。私はテレーザて一緒にいられればそれでいい。それだけで十分なんだ」
「だったら殿下に断ってくれますか?」
「テレーザが望むなら」
私は殿下と話すために部屋から出て行こうとドアに向かったが、テレーザに腕を掴まれた。
「ごめんなさい。あなたを試しました」
試した?
「側近という地位を得るために私を妻にするのだと思ったのです。貴方を信じたいけど、あれからもう4年。私は貴方を裏切り他の人に嫁ごうてした身。あなたがまだ私を思ってくれているとはにわかには信じられなくて……ごめんなさい」
私はテレーザを抱きしめた。
「私はテレーザだけだ。誰とも結婚するつもりはなかったよ」
「私もあなただけ。嫁いだらすぐに自害するつもりでした」
私達はそれから4年の時間を埋めるように長い時間話をした。
***ラインハルト視点
ゲオルグは取り込めたな。テレーザを押さえておくとは母はすごいな。
私の記憶が戻ってから聞いた話だが、父母はエデルガルトが生まれた時、バウムガルテンにお祝いに行った。エデルの顔を見た時に生まれ変わりだとわかり、エデルに記憶があることもわかったそうだ。
そして私がライムントだともわかっていた。
母は私達を今度こそ添い遂げさすために全ての可能性を見逃さないようにしたらしい。
ゲオルグは必ず大成する。だからテレーザを保護した。あわよくばエデルはもちろん、ゲオルグも我が国にというわけだ。
母は「あなたの黒さは陛下に似たのよ」と言うが、母に似たのだと思う。まぁ、父も大概黒い。
ライムントは清廉潔白だった。欲も野心もなかった。でも私はちがう。ライムントの時の失敗はもうしない。綺麗だけでは勝てないのだ。今度こそエデルガルトを守る。絶対死なせない。幸せにする。そのために私は転生したのだろうから。
アーベルが無能なら、我が国の属国にすればいい。エデルガルトがバウムガルテンを心配するなら国ごと私が守ればいい。
私の幸せはエデルガルトが幸せであることなのだから。
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