33 / 78
転章
転章 第一部 第三節
しおりを挟む
悔踏区域外輪の夜は、浅瀬と深瀬がある。
特にこんな雲の厚い空模様とくれば、それは顕著になる特徴と言えた。最たる深瀬は、夜半より一歩手前。星明りが充分に燈る直前の暗さは、一寸先すら見失う闇と言うよりも、底抜けの虚穴に指先を突き込むのを恐怖するような深奥だった。周囲ではなく、知らないうちに踏み込んだ先から自分が失われるのを予感させるような―――そらおそろしさ うそざむさ。
(便所にしたって、もうちょっと早いか遅いかして目ぇ覚ませばよかったのになあ。俺)
ふてくされて、エニイージーは生あくびした。寝床にとんぼがえりするにも極まりの悪い目の冴え方をしてしまい、なんとなく前庭のグラウンドに出ている。惰性で星を探して、そのまま空へと目を寄越した。
(え?)
それが見えた。
ただし、奇妙な迷い星だ。えらい低空で、ちか・ちかと遅い明滅を繰り返しながら、水平に右から左へと移動し……ふと、止まる。
(あ。なんだ。要塞にいる……誰かの提灯か)
廊下を歩く者が眼前に提げた明かりが、各所に設けられた窓に差し掛かるたびに、こちらへと漏れてくるのだろう。倹約というよりか、火をつけたり消したりするうちに尿意に負けるのも馬鹿らしいので、手ぶらで行って帰ってきたエニイージーには、その微細な光源さえ目に留まったのだ。得心するまま、ほっと息を吐く。
のだが。その燈心がある高さは、三階の位置だった。しかも、そこで停止して以降、じっと動かない。
「……―――」
嫌な山勘に痺れを切らして、エニイージーは要塞へ向かった。
夕飯時を過ぎてしまえば、一階廊下ですら定点灯火は落とされる。物置や書庫に使われている二階は言うまでもないし、三階に住んでいるのは頭領以下三人だけというのが実質のところなので、上層階に燈明があること自体が稀なことだと言えた。しかも、動かないとくれば、余計にわけがわからない。移動に差し支える暗闇を押しのけるための懐中行燈だろうに。
視力よりも、手足の感覚と記憶を辿りながら、三階まで行きついた。
廊下に出ると、やはり明かりが点いている。その人の……手元に。
「―――頭領!」
遭逢した幸運に上滑りして、大きく喜色を発してしまった。
その はしゃぎ声に驚くよりも、茫漠とした納得に思索を破られたように。ザーニーイが、立ち尽くしていた窓際から、首から上だけ振り返らせてくる。粒ぞろいした目鼻の中で、痛み切った金髪ばかりが提灯からこぼれた光を吸い込み、その肌色より白々として陶磁器じみて見えた。
駆け寄ってくるエニイージーへと、遅れて呼びかけがやってきた。
「エニイージーか」
「どうしたんですか?」
それとて思わずだったが、訊いてしまう。顔を見るのが二、三週間余りぶりだったこともあるが、なによりザーニーイは―――無表情だった。しかも、表情筋さえ動かせないほど疲弊している風体である。まさか、ともし火に照らされずとも白髪になってしまったのかと疑うほど、消耗して老け込んでいた。閉居して枯座しきりにデスクワークに勤めるという負担の大きさは、多少役が付いた程度の平社員には忖度することしかできないにせよ、心配は心配だった。それゆえだったのだが。
当の本人は気付いていないのか、そっけなく問いを投げ返してくるだけだ。
「お前こそ。どうした? こんなとこまで。こんな夜更けに。夜間警邏じゃねえだろ」
「俺は、その」
触れられなくとも、声は届く……燐光と宵闇の、紫紺の境界線まで来て、立ち止まる。
エニイージーは、恐縮して頭を下げた。
「安心したくて。だから。ありがとうございました。頭領」
「うん?」
「下から見てたら、ここの明かりが動かなくなったもんだから、なにかあったのかと……ここにいてくれたのが、頭領で良かった」
「そうか」
「なに見てたんですか?」
冷やかすでもないが。話題を転じながら姿勢を戻すと、ザーニーイもまた窓へ碧眼を向けていた。熟視というには焦点を絞らない眼差しをそこに触れさせながら、不明瞭に呟いてくる。
「ああ。ちょっと……ぼーっとな。見てみてた、だけさ」
「外を、ですか? 明かり入ってちゃ、硝子板のせいで反射して、あんま見えないでしょ?」
「そうだな。消さなくちゃな」
と言いつつ、提灯もそのままだが。ザーニーイもまた、立っているだけだ。
「?」
エニイージーの不審が、せりふへと紡ぎ上がる前に。
ふと、彼は謎めいた自嘲で、口許を綻ばす。
「もしかしたら、お前なら見えるかな?」
「なに言ってんですか。頭領の燐眼で無理なのに、俺の ふたつっきゃない目ン玉じゃ歯が立たないっすよ。しかも夜目だし。こう曇ってちゃ、目を凝らしたところで、見えて星屑くらいですって」
「星も屑か。こうなっては。そうだな。人の屑とは―――違うものかな。そいつは。どこから屑になるんだろう? 星だったはずだ。人だった……はずだ」
「頭領?」
「なあ」
「はい」
「お前は、俺をどう思う?」
「頭領を? どうって―――」
さすがに戸惑うのだが、それは問いかけそのものについてではなかった。
エニイージーは、固唾を呑んだ。躊躇いはあったが、覚悟を決めて、それを舌に乗せる。
「まさか……霹靂でも、緊張してるんですか? 革命に」
「かくめい?」
反問してくる頭領に、自信をもって念押しする。画然たる思いを込めて、ひと言ひと言、噛んで含めるように。
「革命ですよ。俺たちがやるから、国が変わる……その日を、招くんですから。頭領。これは、頭領だから出来た革命です。俺は、そう思っています―――頭領を」
「……そうか。エニイージー。お前には、いつも気付かされる」
「え?」
ひとり合点に片を付けるように、ザーニーイが居住まいを変える。踵を巡らしてこちらに向き直ると、直前までの流れを手折って、一見無関係に思える四方山を尋ねてきた。
「ついでに聞いていいか?」
「はい。もちろん」
「しなきゃよかったことって、なにかあるか? 生きてきた―――今までに」
「そりゃまあ、……山ほどありますよ。自分でも嫌になるくれえに、たらふく」
情けない話ではあるが。エニイージーは白状がてら、頭髪に編み込んであるバンダナを掻いた。
このバンダナのみどりの色味とて、燐眼と謳われる当人を目の前にしては、選別の根拠からしてたらふくの一部になってしまうだろうから、それについては知らんぷりして別の供儀を供える。
「雑巾入れっぱのままバケツの水を替えんの忘れてて、次の日めちゃくちゃクッサくしちまったり。計算間違いに気づいてなくて、返してもらった釣銭を損してたり。今朝なんか見もしねえで塩瓶傾けたら、満杯にしたばっかだったらしく、目玉焼きの上にどわーっと。それを瓶に戻そうとしたら、炒ったばっかなのに湿気らせることすんじゃねぇって厨房係から大目玉食らっちまうし。踏んだり蹴ったりにダブルのパンチで」
「そうか。まあ、……そんなもんだよな」
「目玉焼きよりも大目玉だったっすよ。食べたけど。しょっぱかったー。あ。大目玉の方じゃなくて目玉焼きの方が。まあハートはしなしなだったっすけど。塩かけられたみたく」
「そいつもまあ、だろうな」
「頭領も、あるんですか? そういうこと」
「あるよ―――ただ、」
やはり、宵時の四隣の寂寞に沿うような静けさで、ザーニーイは付け足してきた。
「俺は、昨日一昨日より前からここにいたから今日明日だってこうしてる―――言わば、砂場のドサまわり上がりの、ならず者だからな。今しなきゃよかったってことを、その時に本当にひとつでも選択していなかったら、きっとここでお前と話してることもなかったろう」
「ええ? なら……ええと、ありがとうございます!」
「は?」
急に口気を滾らせたエニイージーに、きょとんとして目をしばたいてくる頭領。
その無自覚へと焼き付けるように、形骸ではない思いを―――心を込めて、ただただ述べるしかない。
「今になって嫌なことでも、その時は選んでくれてありがとうございました。だって、―――じゃないと俺、ここで旗司誓になれませんでしたから! 頭領に拾われて、今日まで来れて、俺……俺は……本当に、天職だったって……」
意気込んだ独白が迸るにつれて、大元にある情念もまた腹の底から再燃する。目頭が疼いて、エニイージーはどうにか声を途切れさせた。興奮にかまけて、涙が浮かびそうになってしまっている。
(だせえ。ガキじゃあるまいに)
粗相を堪える部下を、どのように捉えたものか。ザーニーイは提灯を持ち替えるついでに、目淵の動きもそこへ逸らした。エニイージーから遠ざける方にした灯火に、過ぎた日を眺める緩い眼光をひたしながら。
「……くたびれた貧民窟の瀬戸際で、怯え慣れた目をすることに諦め切っていた、痩せっぽちの―――あの、お前がな。あの時は、たまたま懐に余裕があった気まぐれで、伸び白がありそうな奴に一宿一飯をくれてやるのも悪かねえかってだけだったが。そのお前が、寄寓するだけにとどまらず、旗司誓として隊の副座を勤め上げるようになって、騎獣を扱える操舵手となり……目線の高さまで、こうして俺と大差なくなった。来年あたりにゃ、きっかり頭半分は追い越されちまうだろう」
「そんな―――」
「そうなるさ。シゾーがそうだった」
ぎくりと動けなくなる。視線のひと振りさえ出来ないほど―――硬直する。
ザーニーイは回顧していた。不言の間のそれは、確かなことだった。ただしそこに、エニイージーはいない。それを確信するしかなかった。だから、息継ぎさえ途絶してしまうほど……身動きが取れない。
「来年、そのまた次の年……その暁に、お前は、どんな大人になるんだろうな?」
だからこそ、今度こそは懐古ではなく未来を含んで、こちらを向いてくれた―――凝固を解いてくれた、その人に。
「俺は、」
エニイージーは、宣誓した。
「頭領に肩を並べるくらいの旗司誓になります。なってみせますから、だから―――その時まで、見ていてください。頭領。俺が、すぐに、そこまで行く様を」
じっと……そのまま、物音すら失くして、しばし。
ザーニーイは、深く首肯した。笑むでもないが、穏当な真面目さを帯びた目線で、無言の感投詞を匂わせた。
「ありがとう……お前の旗幟ならば、俺も信じられると―――そう思えた」
「ありがとうございます。俺も、双頭三肢の青鴉を信じています」
と。
鼻息荒く赤面して拳骨を固めるエニイージーとは裏腹に、沈着とした物腰を更に沈み込ませて、ザーニーイが答弁は終いとばかりに首を横振りしてみせた。
「にしたって……もうそろそろ休め。俺も、明日にして―――もう、行くからよ」
「明日にして?」
ふと引っかかって、訊き返す。
「もしかして、ここで誰か待ってたんですか?」
「あ。ああ、いや―――待ってたって程じゃないさ」
「まさか、ゼラさん? どっか怪我したんですか?」
「違う」
否定そのものでなく、断定の強さと敏捷さに、ぴんとくる。
素知らぬ顔で、エニイージーは鎌をかけた。
「あ。医者なら、副頭領を―――」
「野郎は関係ねえ!」
声を荒らげてまで、中絶を強いてから。
まるでそれ自体が失策だったとばかり、遺憾を込めた舌打ちをして。凄めた剣幕に引きずられるように、ザーニーイが叱咤を飛ばしてくる。
「あのな。こればっかりは くどいほど言ってるが、お前は解せねえくれえにシゾーにだきゃあ風当たりが強すぎだ。いやしくも副頭領相手に―――蛇蝎じゃねえんだぞ。そこまで根っからにされちゃ、俺だってたまったもんじゃねえ。逐一どやしつけるにしたって追っつくかってんだ」
「すみません」
「いいか、食えねえ奴にゃあ関わんな。こんな時まで、……いい加減にしやがれ」
「すみません」
「たりめぇだ畜生、くさくささせやがって……まっぴらだ。食傷にしたって、煮しめた小言なんざ食えたもんじゃねえっつの。いいか。あいつ見かけても、このことは黙っとけよ。じゃあな。背に二十重ある祝福を」
「はい。背に二十重ある祝福を」
そのまま、提灯と共に廊下の奥へと去っていく背中を見送って。
その足取りの滑らかさこそ、ぎくしゃくと蹌踉めく肢体に気を抜けない状態なのだと、語るに落ちていた。そう……見えた。
見えたからこそ、またしても暗闇にひとりだけ。その空間に釣り合う陰気な激昂を、エニイージーは―――隠密ながら、食い殺し損ねてしまった。
「神経質になってたのは……今ばっかりは、頭領の方じゃないですか」
そして再び、拳を固める。ただし今回は、まごつくことのない、別の激情に駆られて。
(あの野郎―――なにしやがった。医者見習いのあんたさえ要らないくらいのかすり傷なら、ゼラさんの魔術が必要なわけねえ。だのに……だと言うのに、それでもな。頭領は今、あんたを回護していたぞ。ゼラさんの部屋を訪ねるみたいな、直接的な動きさえ遠慮するくらいに。幼馴染みだからってだけで。今回すら!)
シゾー・イェスカザ。悪しき確証として、これはもう死活的だ。邪推だと高を括っていられる余地などない―――不倶戴天の怨敵に、とうに立つ瀬など残されていない。それほどまでに、ありとあらゆる渉猟は、これについては し尽してきた。
(あいつのことだ……ぜってえ、なにかを、革命の折に仕出かすぞ。それは、三年前よりも非道に違いない、外道ななにかだ)
それを滅却できるのは、眼識を練ってきた自分だけだ。ザーニーイその人までもが、こうまでシゾーの肩を持つ姿勢を固めているのだから、これは当然の成り行きと言える。頭領は悪くない。ただ、昔からの眷顧に背かず、人情家の兄貴風に吹かれるまま子分を手塩にかけているだけだ―――それが、昔馴染みの弟分から、筺底の蒼炎に化けてしまっていようとも、肩を貸しているが故に死角となってしまっている。がら空きのわき腹に、本物の懐刀を差し込まれても、いつも通りに信じたままだから無防備でいる。三年より前から、そうだったように。
エニイージーは、窓から外を見上げた。頭領が見ていた悔踏区域外輪の空は、闇と雲に呑まれて、在天しているはずの月の朧すら失っている。
(今はもう、そんな昔とは違う。俺がいる。頭領には、俺がいるんだ。俺が、なにがあっても、なにがなんでも―――!)
確固としたそれに、なお確かなものを足したくて、エニイージーは残りを声に変えた。情を立てた。誓いを立てた。操を立てた。人を立てた。旗のように。
「俺だけは、……いますから。絶対に。だから、頭領。俺だけは。そばで、ずっと」
いつだって大切にしてきた大切なものを、ずっと大切にしていく。これまでと変わらず、これからも。それはたった、それだけのこと。
特にこんな雲の厚い空模様とくれば、それは顕著になる特徴と言えた。最たる深瀬は、夜半より一歩手前。星明りが充分に燈る直前の暗さは、一寸先すら見失う闇と言うよりも、底抜けの虚穴に指先を突き込むのを恐怖するような深奥だった。周囲ではなく、知らないうちに踏み込んだ先から自分が失われるのを予感させるような―――そらおそろしさ うそざむさ。
(便所にしたって、もうちょっと早いか遅いかして目ぇ覚ませばよかったのになあ。俺)
ふてくされて、エニイージーは生あくびした。寝床にとんぼがえりするにも極まりの悪い目の冴え方をしてしまい、なんとなく前庭のグラウンドに出ている。惰性で星を探して、そのまま空へと目を寄越した。
(え?)
それが見えた。
ただし、奇妙な迷い星だ。えらい低空で、ちか・ちかと遅い明滅を繰り返しながら、水平に右から左へと移動し……ふと、止まる。
(あ。なんだ。要塞にいる……誰かの提灯か)
廊下を歩く者が眼前に提げた明かりが、各所に設けられた窓に差し掛かるたびに、こちらへと漏れてくるのだろう。倹約というよりか、火をつけたり消したりするうちに尿意に負けるのも馬鹿らしいので、手ぶらで行って帰ってきたエニイージーには、その微細な光源さえ目に留まったのだ。得心するまま、ほっと息を吐く。
のだが。その燈心がある高さは、三階の位置だった。しかも、そこで停止して以降、じっと動かない。
「……―――」
嫌な山勘に痺れを切らして、エニイージーは要塞へ向かった。
夕飯時を過ぎてしまえば、一階廊下ですら定点灯火は落とされる。物置や書庫に使われている二階は言うまでもないし、三階に住んでいるのは頭領以下三人だけというのが実質のところなので、上層階に燈明があること自体が稀なことだと言えた。しかも、動かないとくれば、余計にわけがわからない。移動に差し支える暗闇を押しのけるための懐中行燈だろうに。
視力よりも、手足の感覚と記憶を辿りながら、三階まで行きついた。
廊下に出ると、やはり明かりが点いている。その人の……手元に。
「―――頭領!」
遭逢した幸運に上滑りして、大きく喜色を発してしまった。
その はしゃぎ声に驚くよりも、茫漠とした納得に思索を破られたように。ザーニーイが、立ち尽くしていた窓際から、首から上だけ振り返らせてくる。粒ぞろいした目鼻の中で、痛み切った金髪ばかりが提灯からこぼれた光を吸い込み、その肌色より白々として陶磁器じみて見えた。
駆け寄ってくるエニイージーへと、遅れて呼びかけがやってきた。
「エニイージーか」
「どうしたんですか?」
それとて思わずだったが、訊いてしまう。顔を見るのが二、三週間余りぶりだったこともあるが、なによりザーニーイは―――無表情だった。しかも、表情筋さえ動かせないほど疲弊している風体である。まさか、ともし火に照らされずとも白髪になってしまったのかと疑うほど、消耗して老け込んでいた。閉居して枯座しきりにデスクワークに勤めるという負担の大きさは、多少役が付いた程度の平社員には忖度することしかできないにせよ、心配は心配だった。それゆえだったのだが。
当の本人は気付いていないのか、そっけなく問いを投げ返してくるだけだ。
「お前こそ。どうした? こんなとこまで。こんな夜更けに。夜間警邏じゃねえだろ」
「俺は、その」
触れられなくとも、声は届く……燐光と宵闇の、紫紺の境界線まで来て、立ち止まる。
エニイージーは、恐縮して頭を下げた。
「安心したくて。だから。ありがとうございました。頭領」
「うん?」
「下から見てたら、ここの明かりが動かなくなったもんだから、なにかあったのかと……ここにいてくれたのが、頭領で良かった」
「そうか」
「なに見てたんですか?」
冷やかすでもないが。話題を転じながら姿勢を戻すと、ザーニーイもまた窓へ碧眼を向けていた。熟視というには焦点を絞らない眼差しをそこに触れさせながら、不明瞭に呟いてくる。
「ああ。ちょっと……ぼーっとな。見てみてた、だけさ」
「外を、ですか? 明かり入ってちゃ、硝子板のせいで反射して、あんま見えないでしょ?」
「そうだな。消さなくちゃな」
と言いつつ、提灯もそのままだが。ザーニーイもまた、立っているだけだ。
「?」
エニイージーの不審が、せりふへと紡ぎ上がる前に。
ふと、彼は謎めいた自嘲で、口許を綻ばす。
「もしかしたら、お前なら見えるかな?」
「なに言ってんですか。頭領の燐眼で無理なのに、俺の ふたつっきゃない目ン玉じゃ歯が立たないっすよ。しかも夜目だし。こう曇ってちゃ、目を凝らしたところで、見えて星屑くらいですって」
「星も屑か。こうなっては。そうだな。人の屑とは―――違うものかな。そいつは。どこから屑になるんだろう? 星だったはずだ。人だった……はずだ」
「頭領?」
「なあ」
「はい」
「お前は、俺をどう思う?」
「頭領を? どうって―――」
さすがに戸惑うのだが、それは問いかけそのものについてではなかった。
エニイージーは、固唾を呑んだ。躊躇いはあったが、覚悟を決めて、それを舌に乗せる。
「まさか……霹靂でも、緊張してるんですか? 革命に」
「かくめい?」
反問してくる頭領に、自信をもって念押しする。画然たる思いを込めて、ひと言ひと言、噛んで含めるように。
「革命ですよ。俺たちがやるから、国が変わる……その日を、招くんですから。頭領。これは、頭領だから出来た革命です。俺は、そう思っています―――頭領を」
「……そうか。エニイージー。お前には、いつも気付かされる」
「え?」
ひとり合点に片を付けるように、ザーニーイが居住まいを変える。踵を巡らしてこちらに向き直ると、直前までの流れを手折って、一見無関係に思える四方山を尋ねてきた。
「ついでに聞いていいか?」
「はい。もちろん」
「しなきゃよかったことって、なにかあるか? 生きてきた―――今までに」
「そりゃまあ、……山ほどありますよ。自分でも嫌になるくれえに、たらふく」
情けない話ではあるが。エニイージーは白状がてら、頭髪に編み込んであるバンダナを掻いた。
このバンダナのみどりの色味とて、燐眼と謳われる当人を目の前にしては、選別の根拠からしてたらふくの一部になってしまうだろうから、それについては知らんぷりして別の供儀を供える。
「雑巾入れっぱのままバケツの水を替えんの忘れてて、次の日めちゃくちゃクッサくしちまったり。計算間違いに気づいてなくて、返してもらった釣銭を損してたり。今朝なんか見もしねえで塩瓶傾けたら、満杯にしたばっかだったらしく、目玉焼きの上にどわーっと。それを瓶に戻そうとしたら、炒ったばっかなのに湿気らせることすんじゃねぇって厨房係から大目玉食らっちまうし。踏んだり蹴ったりにダブルのパンチで」
「そうか。まあ、……そんなもんだよな」
「目玉焼きよりも大目玉だったっすよ。食べたけど。しょっぱかったー。あ。大目玉の方じゃなくて目玉焼きの方が。まあハートはしなしなだったっすけど。塩かけられたみたく」
「そいつもまあ、だろうな」
「頭領も、あるんですか? そういうこと」
「あるよ―――ただ、」
やはり、宵時の四隣の寂寞に沿うような静けさで、ザーニーイは付け足してきた。
「俺は、昨日一昨日より前からここにいたから今日明日だってこうしてる―――言わば、砂場のドサまわり上がりの、ならず者だからな。今しなきゃよかったってことを、その時に本当にひとつでも選択していなかったら、きっとここでお前と話してることもなかったろう」
「ええ? なら……ええと、ありがとうございます!」
「は?」
急に口気を滾らせたエニイージーに、きょとんとして目をしばたいてくる頭領。
その無自覚へと焼き付けるように、形骸ではない思いを―――心を込めて、ただただ述べるしかない。
「今になって嫌なことでも、その時は選んでくれてありがとうございました。だって、―――じゃないと俺、ここで旗司誓になれませんでしたから! 頭領に拾われて、今日まで来れて、俺……俺は……本当に、天職だったって……」
意気込んだ独白が迸るにつれて、大元にある情念もまた腹の底から再燃する。目頭が疼いて、エニイージーはどうにか声を途切れさせた。興奮にかまけて、涙が浮かびそうになってしまっている。
(だせえ。ガキじゃあるまいに)
粗相を堪える部下を、どのように捉えたものか。ザーニーイは提灯を持ち替えるついでに、目淵の動きもそこへ逸らした。エニイージーから遠ざける方にした灯火に、過ぎた日を眺める緩い眼光をひたしながら。
「……くたびれた貧民窟の瀬戸際で、怯え慣れた目をすることに諦め切っていた、痩せっぽちの―――あの、お前がな。あの時は、たまたま懐に余裕があった気まぐれで、伸び白がありそうな奴に一宿一飯をくれてやるのも悪かねえかってだけだったが。そのお前が、寄寓するだけにとどまらず、旗司誓として隊の副座を勤め上げるようになって、騎獣を扱える操舵手となり……目線の高さまで、こうして俺と大差なくなった。来年あたりにゃ、きっかり頭半分は追い越されちまうだろう」
「そんな―――」
「そうなるさ。シゾーがそうだった」
ぎくりと動けなくなる。視線のひと振りさえ出来ないほど―――硬直する。
ザーニーイは回顧していた。不言の間のそれは、確かなことだった。ただしそこに、エニイージーはいない。それを確信するしかなかった。だから、息継ぎさえ途絶してしまうほど……身動きが取れない。
「来年、そのまた次の年……その暁に、お前は、どんな大人になるんだろうな?」
だからこそ、今度こそは懐古ではなく未来を含んで、こちらを向いてくれた―――凝固を解いてくれた、その人に。
「俺は、」
エニイージーは、宣誓した。
「頭領に肩を並べるくらいの旗司誓になります。なってみせますから、だから―――その時まで、見ていてください。頭領。俺が、すぐに、そこまで行く様を」
じっと……そのまま、物音すら失くして、しばし。
ザーニーイは、深く首肯した。笑むでもないが、穏当な真面目さを帯びた目線で、無言の感投詞を匂わせた。
「ありがとう……お前の旗幟ならば、俺も信じられると―――そう思えた」
「ありがとうございます。俺も、双頭三肢の青鴉を信じています」
と。
鼻息荒く赤面して拳骨を固めるエニイージーとは裏腹に、沈着とした物腰を更に沈み込ませて、ザーニーイが答弁は終いとばかりに首を横振りしてみせた。
「にしたって……もうそろそろ休め。俺も、明日にして―――もう、行くからよ」
「明日にして?」
ふと引っかかって、訊き返す。
「もしかして、ここで誰か待ってたんですか?」
「あ。ああ、いや―――待ってたって程じゃないさ」
「まさか、ゼラさん? どっか怪我したんですか?」
「違う」
否定そのものでなく、断定の強さと敏捷さに、ぴんとくる。
素知らぬ顔で、エニイージーは鎌をかけた。
「あ。医者なら、副頭領を―――」
「野郎は関係ねえ!」
声を荒らげてまで、中絶を強いてから。
まるでそれ自体が失策だったとばかり、遺憾を込めた舌打ちをして。凄めた剣幕に引きずられるように、ザーニーイが叱咤を飛ばしてくる。
「あのな。こればっかりは くどいほど言ってるが、お前は解せねえくれえにシゾーにだきゃあ風当たりが強すぎだ。いやしくも副頭領相手に―――蛇蝎じゃねえんだぞ。そこまで根っからにされちゃ、俺だってたまったもんじゃねえ。逐一どやしつけるにしたって追っつくかってんだ」
「すみません」
「いいか、食えねえ奴にゃあ関わんな。こんな時まで、……いい加減にしやがれ」
「すみません」
「たりめぇだ畜生、くさくささせやがって……まっぴらだ。食傷にしたって、煮しめた小言なんざ食えたもんじゃねえっつの。いいか。あいつ見かけても、このことは黙っとけよ。じゃあな。背に二十重ある祝福を」
「はい。背に二十重ある祝福を」
そのまま、提灯と共に廊下の奥へと去っていく背中を見送って。
その足取りの滑らかさこそ、ぎくしゃくと蹌踉めく肢体に気を抜けない状態なのだと、語るに落ちていた。そう……見えた。
見えたからこそ、またしても暗闇にひとりだけ。その空間に釣り合う陰気な激昂を、エニイージーは―――隠密ながら、食い殺し損ねてしまった。
「神経質になってたのは……今ばっかりは、頭領の方じゃないですか」
そして再び、拳を固める。ただし今回は、まごつくことのない、別の激情に駆られて。
(あの野郎―――なにしやがった。医者見習いのあんたさえ要らないくらいのかすり傷なら、ゼラさんの魔術が必要なわけねえ。だのに……だと言うのに、それでもな。頭領は今、あんたを回護していたぞ。ゼラさんの部屋を訪ねるみたいな、直接的な動きさえ遠慮するくらいに。幼馴染みだからってだけで。今回すら!)
シゾー・イェスカザ。悪しき確証として、これはもう死活的だ。邪推だと高を括っていられる余地などない―――不倶戴天の怨敵に、とうに立つ瀬など残されていない。それほどまでに、ありとあらゆる渉猟は、これについては し尽してきた。
(あいつのことだ……ぜってえ、なにかを、革命の折に仕出かすぞ。それは、三年前よりも非道に違いない、外道ななにかだ)
それを滅却できるのは、眼識を練ってきた自分だけだ。ザーニーイその人までもが、こうまでシゾーの肩を持つ姿勢を固めているのだから、これは当然の成り行きと言える。頭領は悪くない。ただ、昔からの眷顧に背かず、人情家の兄貴風に吹かれるまま子分を手塩にかけているだけだ―――それが、昔馴染みの弟分から、筺底の蒼炎に化けてしまっていようとも、肩を貸しているが故に死角となってしまっている。がら空きのわき腹に、本物の懐刀を差し込まれても、いつも通りに信じたままだから無防備でいる。三年より前から、そうだったように。
エニイージーは、窓から外を見上げた。頭領が見ていた悔踏区域外輪の空は、闇と雲に呑まれて、在天しているはずの月の朧すら失っている。
(今はもう、そんな昔とは違う。俺がいる。頭領には、俺がいるんだ。俺が、なにがあっても、なにがなんでも―――!)
確固としたそれに、なお確かなものを足したくて、エニイージーは残りを声に変えた。情を立てた。誓いを立てた。操を立てた。人を立てた。旗のように。
「俺だけは、……いますから。絶対に。だから、頭領。俺だけは。そばで、ずっと」
いつだって大切にしてきた大切なものを、ずっと大切にしていく。これまでと変わらず、これからも。それはたった、それだけのこと。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる