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プロローグ
しおりを挟むあるアパートの一室にて、こんな会話がされていた。
「ユキ?まだ空いてる時間があるんだから、その時間にバイトを増やせばいいでしょ?」
「おお、それはいい考えだな。ユキもそう思うだろ?」
肌艶血色のいい中年の夫婦が娘と思しき人間にそのように言っている。
睡眠時間が2時間くらいしかないのにまだ、バイト増やすの?自分たちで稼げばいいでしょ?何で娘の私にたかるのよ。この両親は。
「娘なんだから、親を養って当然でしょ?」
それは高齢の老夫婦を養うとかでしょ?まだまだ働くことができるような両親が娘にたかるってどういうこと?
私は早朝のバイトで意識も朦朧としているところに、我が家へあの人は突然やってきた―――
「こいつは手付金だと思ってくれればいい。こいつの働きでもっと額が…」
話の途中だというのに私、南ユキ(18)の両親は無心にアタッシュケースに入っている1万円札の束に手を出した。
「おいおい、話の最中だというのに…。まあいい。娘はもらっていく。その金でせいぜい思うように生きればいい」
現金にして25億……。それをポーンと払えるこの人は白川大雄さん(24)は凄いと思うけど、仕方がない。白川大雄さんはこの小市民の私でも知ってる白虎商事のCEOなのだから。
私は黒塗りの高級車で半ば売り払われていった。
「あ、今日はこの後バイトのシフトが入っていて……。その後にもバイトに行かなきゃ……」
「ああ、それ全部ユキはキャンセル。うちの若いもんが代わりに行くことになってる」
若いもん?
「おかえりなさいやし、三代目!」
「ああ」
「そちらのお嬢さんが例の?」
「そうだ」
『例の』って何?っていうかこの日本庭園のある豪邸(純日本家屋)に白川大雄さんは『三代目』って呼ばれてた。それに…うちの若いもんってまさかだけど……。
「「「おかえりなさいやし!三代目ぁ‼‼」」」
「おお」
強面の男達がたくさんいる…。このお屋敷はまさか極道さんのお屋敷なのですか?
「おい、今頃気づいたのか?俺は確かに白虎商事のCEOだが、白虎組の組長でもある」
知りませんよ、小市民がそんなこと。
「それより、私は『例の』らしいですけど、なんですか?」
「知りたいのか?不幸になるかもしれないぞ?」
臓器売買?娼婦?ここで女一人だし。ああ、自分のことだし気になる!
「教えてください!」
「仕方ないなぁ。お前はこの組の姐になれ!」
はぁ?
姐ってアレ?映画とかで、やたらと組員に慕われる組長の奥さん。着物着てるけど、なんか色気があるアレ?私に色気ないんですけど?
「色気について思案中なのか?」
超能力者なの?何で考えてることわかるの?
「色気は追々付くもんだ。まぁなんとかなるだろう」
そう言う白川大雄さんの方が私より色気があると思う。
うん、まぁあのまま親に搾取され続ける人生よりもいいかも。……姐になる方が。
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