30 / 129
第29話 帳簿を読む
しおりを挟む
「この帳簿を見てどう思う?」
三代目から新橋へ。
「どう思うと言われても……私には数字にしか見えないんで、申し訳ない。四代目は?」
新橋から四代目へ。
「俺に投げるなよ、新橋。ん?お義父さん?」
「新橋で構いませんよ。それに四代目にお義父さんと呼ばれる方が気恥ずかしいです。組員からの視線も気になります。そうなると自然と茜への視線も…」
「茜に組員の視線が行くのは迷惑だな。若姐というのか?立場的に仕方ないが、ヤローの視線が茜に向かうのは好ましいことじゃないな」
「同感です」
「おい、新婚さんと親バカはいいとして、川野はどう思う?」
「明らかに表と裏に数字の違いがありますね。どういうことでしょう?詳しいことは俺らよりも姐さんの方がこういう事は得意じゃないかと思います」
「聞いたか?俺はこういう具体的な答えを求めてたんだよ!お前ら二人で茜談義してるんじゃねーよ」
「姐さんを呼んで参ります」
私が赤川の表帳簿と裏帳簿と対面した。私には茜ちゃんが若姐として同行していた。
「表帳簿は前に想像した通り。三代目が継いだ直後の上納金が突然増えてる。そして、ちょい出し。茜ちゃんわかるかい?この数字なんだけど…。あ~!グラフとか作れると分かりやすいんだけど、今ちょちょいと作るかい?」
私はグラフで説明した。
「この辺りで三代目が襲名。直後に上納金が突然の増額。これは三代目へのアピールって昔はみてた。それで、そのままわりかし高い水準で上納金がここに払われてるんだけど、この不況の中、おかしいと思わないかい?」
「収入は突然増えたりしないですよね。そして、高水準をキープ…」
「そこなんだよ!それを三代目が襲名する以前から赤川が不正に懐に入れていて、襲名後ちょい出ししてきたと考える。さて、その不正とは?で、使うのが今回の帳簿さ。表の帳簿と裏の帳簿の金額を同時にPCでグラフ化した時に差が出るのは……。交際費の支出?収入は?‘その他の収入’の部分が増えてるねぇ」
茜ちゃん曰く、私は悪そうな笑みを浮かべていたらしい。
「三代目、‘その他の収入’について調べておくれよ。これは調べると真っ黒かもしれないよ?」
「そうだな……」
真っ黒……薬を売買して収入を得た可能性が大きい。警察が関与して逮捕・起訴するのは簡単だけれど、それは極道の掟『薬を扱ってはいけない』というものを大きく守っていないことにあたり、極道的には処刑。警察が関与してしまうと法的な裁きになり懲役刑となるだろう。しかも悪いことに赤川くらいになるとスケープゴートを使ったりもするし、金を積んでムショから出てくる可能性もある。
いかに迅速に警察よりも早く証拠を固めるかが勝負となる。
「『交際費の支出』は…やっぱりお得意様というのがいるんだろうね。それも結構な立場の人だ。交際費がかかるような人だからね。その辺でホイホイできないんだよ。まぁ、モノがモノだけど」
三代目から新橋へ。
「どう思うと言われても……私には数字にしか見えないんで、申し訳ない。四代目は?」
新橋から四代目へ。
「俺に投げるなよ、新橋。ん?お義父さん?」
「新橋で構いませんよ。それに四代目にお義父さんと呼ばれる方が気恥ずかしいです。組員からの視線も気になります。そうなると自然と茜への視線も…」
「茜に組員の視線が行くのは迷惑だな。若姐というのか?立場的に仕方ないが、ヤローの視線が茜に向かうのは好ましいことじゃないな」
「同感です」
「おい、新婚さんと親バカはいいとして、川野はどう思う?」
「明らかに表と裏に数字の違いがありますね。どういうことでしょう?詳しいことは俺らよりも姐さんの方がこういう事は得意じゃないかと思います」
「聞いたか?俺はこういう具体的な答えを求めてたんだよ!お前ら二人で茜談義してるんじゃねーよ」
「姐さんを呼んで参ります」
私が赤川の表帳簿と裏帳簿と対面した。私には茜ちゃんが若姐として同行していた。
「表帳簿は前に想像した通り。三代目が継いだ直後の上納金が突然増えてる。そして、ちょい出し。茜ちゃんわかるかい?この数字なんだけど…。あ~!グラフとか作れると分かりやすいんだけど、今ちょちょいと作るかい?」
私はグラフで説明した。
「この辺りで三代目が襲名。直後に上納金が突然の増額。これは三代目へのアピールって昔はみてた。それで、そのままわりかし高い水準で上納金がここに払われてるんだけど、この不況の中、おかしいと思わないかい?」
「収入は突然増えたりしないですよね。そして、高水準をキープ…」
「そこなんだよ!それを三代目が襲名する以前から赤川が不正に懐に入れていて、襲名後ちょい出ししてきたと考える。さて、その不正とは?で、使うのが今回の帳簿さ。表の帳簿と裏の帳簿の金額を同時にPCでグラフ化した時に差が出るのは……。交際費の支出?収入は?‘その他の収入’の部分が増えてるねぇ」
茜ちゃん曰く、私は悪そうな笑みを浮かべていたらしい。
「三代目、‘その他の収入’について調べておくれよ。これは調べると真っ黒かもしれないよ?」
「そうだな……」
真っ黒……薬を売買して収入を得た可能性が大きい。警察が関与して逮捕・起訴するのは簡単だけれど、それは極道の掟『薬を扱ってはいけない』というものを大きく守っていないことにあたり、極道的には処刑。警察が関与してしまうと法的な裁きになり懲役刑となるだろう。しかも悪いことに赤川くらいになるとスケープゴートを使ったりもするし、金を積んでムショから出てくる可能性もある。
いかに迅速に警察よりも早く証拠を固めるかが勝負となる。
「『交際費の支出』は…やっぱりお得意様というのがいるんだろうね。それも結構な立場の人だ。交際費がかかるような人だからね。その辺でホイホイできないんだよ。まぁ、モノがモノだけど」
53
あなたにおすすめの小説
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
男に間違えられる私は女嫌いの冷徹若社長に溺愛される
山口三
恋愛
「俺と結婚してほしい」
出会ってまだ何時間も経っていない相手から沙耶(さや)は告白された・・・のでは無く契約結婚の提案だった。旅先で危ない所を助けられた沙耶は契約結婚を申し出られたのだ。相手は五瀬馨(いつせかおる)彼は国内でも有数の巨大企業、五瀬グループの若き社長だった。沙耶は自分の夢を追いかける資金を得る為、養女として窮屈な暮らしを強いられている今の家から脱出する為にもこの提案を受ける事にする。
冷酷で女嫌いの社長とお人好しの沙耶。二人の契約結婚の行方は?
【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています
22時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。
誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。
そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。
(殿下は私に興味なんてないはず……)
結婚前はそう思っていたのに――
「リリア、寒くないか?」
「……え?」
「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」
冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!?
それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。
「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」
「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」
(ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?)
結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?
不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
入海月子
恋愛
有本瑞希
仕事に燃える設計士 27歳
×
黒瀬諒
飄々として軽い一級建築士 35歳
女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。
彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。
ある日、同僚のミスが発覚して――。
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
俺様系和服社長の家庭教師になりました。
蝶野ともえ
恋愛
一葉 翠(いつは すい)は、とある高級ブランドの店員。
ある日、常連である和服のイケメン社長に接客を指名されてしまう。
冷泉 色 (れいぜん しき) 高級和食店や呉服屋を国内に展開する大手企業の社長。普段は人当たりが良いが、オフや自分の会社に戻ると一気に俺様になる。
「君に一目惚れした。バックではなく、おまえ自身と取引をさせろ。」
それから気づくと色の家庭教師になることに!?
期間限定の生徒と先生の関係から、お互いに気持ちが変わっていって、、、
俺様社長に翻弄される日々がスタートした。
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる