獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない

たま

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獣人の国マカミ

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「お帰りなさいなさいませ。」

執務室に転移で戻ると首席文官マイルズと、なんと将軍のガイルまでが待ち構えていた。

「ハーデンに派遣していた騎士団につがいが見つかった様だな。」

「「⁈」」

ガイルはともかく、普段表情を変える事のないマイルズを驚かせた事に柄にもなく嬉しくなってしまう。思っている以上に俺は浮かれているらしい。

「で?雁首揃えてなんだ。何か問題でも?」

2人の動揺が続いている事はわかる。
つがいの元から戻ってこれ程機嫌が良かったことはないからな。今ならなんでも出来るな。例えばハーデン国を守る為に、イベリスを消す事も…。まあ出来る事と、実際行動に移すかは別だかな。

今回のハーデン国への騎士団派遣はあわよくば騎士達の誰かに人族のつがいが現れればと淡い期待をもっていたがまさかこんなに都合よくいくとは

さて、後は本人に頑張ってもらってしっかりつがいを連れ帰ってもらえれば…

「…つがいを連れ帰れると思うか。」

「「・・・」」

2人に同時に目を逸らされた。

「王自身も身をもって学ばれたと思いますが?」

マイルズ言う通り、我々獣人と人族のつがいは幸せとは程遠い、色々違いすぎるからだ。
そもそも人族はつがいと言う概念がない。獣人はつがい以外愛せないが人族は違う、容易につがい以外の者に心を移してしまう。愛するつがいに別れを告げられ去ろうとするのを目の当たりにして狂わない獣人は居ないだろう。人族にとって我々獣人族の思いは最早愛などとは呼べないモノなのだろう。

「我々獣人、それも武人に人族それも女性の機微を察せると思うか。俺は出来る気がせん。」

俺もそう思う…
さっきまでの高揚感がこの世の終わりかの様な絶望感に変わる。

「…で?アレスから連絡は?」

「ありましたよ。アレスのつがいがいる街に入れないからなんとかしてくれとだけ。
私が街の領主に王の代理として、敵意の無いことを説明してそれっきりですがね。」

「街に入れたのなら良かったじゃねーか。今頃つがいを追いかけ回してなきゃいいがな。」

まあ落ち着いたら連絡するだろう。アレスの奴が無理でも、副団長のダルム辺りから連絡が来るだろう。



まさかつがいが目の前から消えてしまい、壊れたアレスに大慌ての獣人騎士団は誰一人連絡する事を思い出せる者がいないとは思いもしなかった。
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