この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

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第152話 鎖を断つ、最後の戦い

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泉の扉を背に、アスが鎖を広げた。
 その赤黒い光は、まるで血と呪いを混ぜたように脈打っている。
 ──契約の力が、限界まで高まっている。

「ルカ……もう下がってくれ」
「嫌だ。君を置いて行かない」
「なら……俺は、お前を倒すしかない」

 鎖が音を立てて襲いかかる。
 ユリウスが前に出ようとしたが、ボクは手を上げて制した。
「これは、ボクとアスの戦いだ」

 詠唱と同時に、光の盾を展開して鎖を受け止める。
 だが、契約の力を帯びた鎖は盾を削り取るように進んでくる。
「……強いな」
「当たり前だ。お前を守るために、俺は……!」
 言葉の途中でアスの顔が苦痛に歪む。
 契約の命令と、彼自身の意思がぶつかっている。

 ボクは踏み込み、精霊語を重ねる。
 光の刃が鎖をはじき、その反動でアスの腕が揺らぐ。
 隙を逃さず、彼の胸の刻印に手を伸ばした。
「アス……帰ろう!」
「……できない!」

 鎖が再び巻き付き、今度はボクの腰を締め上げる。
 息が詰まる。それでも目を逸らさず、彼を見つめた。

「君がどんな姿でも……ボクは君を好きだ!」
 その言葉に、アスの動きが止まった。
 鎖の力がわずかに弱まり、刻印の光が揺れる。

 ──今だ。
 全力で詠唱を完成させ、両手を刻印に押し当てる。
「《浄化の泉よ、契約を断ち切れ》!」

 まばゆい光が爆発し、鎖が一気に霧のように消えた。
 アスの身体が崩れ落ち、ボクは慌てて抱きとめた。

「……ルカ……」
 弱々しい声。
「もう……自由だよ」
 そう告げると、彼は小さく笑った。
「……良かった……最後に、お前を守れて」

 その笑顔は、これまで見たどの笑顔よりも優しかった。
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