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第170話 氷の宮殿への招待状
しおりを挟む昼下がり。
市場でパンを選んでいたボクの前に、白い影がすっと立った。
振り向くと──セレン。
いつもより柔らかい表情で、小さな封筒を差し出してきた。
「神子。氷の宮殿で開かれる祝宴へ、ぜひお越しください」
「え……?」
「あなたのためだけに、雪を降らせます」
そう言って微笑むその横顔に、一瞬だけ胸がきゅっとなる。
でも、その封筒がボクの手に触れる前に──
ドンッ!と横からカインの腕が伸びてきた。
「没収だ」
「それはルカのものです」(セレン)
「いや、俺たち全員の平穏のために処分する」
続いてユリウスが封筒を奪い、レオンがそれをさらに奪い、ノアが横から引っ張り……
気づけば招待状争奪バトルが市場の真ん中で勃発していた。
「おい! せっかくのパンがつぶれるよ!」
「ルカ、パンより安全のほうが大事ですぞ!」(ユリウス)
「いや、パンも大事だろ」(レオン)
「パンよりルカが大事だ」(カイン)
「……ボクは食べ物より軽いの?」
争奪戦の末、封筒は──ボクの手の中に戻ってきた。
全員が同時に息を呑む。
「神子……まさか行くつもりでは」(ノア)
「いや、行かないよ!? ボク、氷漬けは遠慮する!」
そう言った瞬間、セレンが一歩近づいて囁く。
「……私の本当の目的は、あなたに真実を見てほしいということです」
真実?
その言葉が、ボクの中で小さくひっかかった。
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