この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

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5.『ぼく、“おまけのお菓子”だけのはずだったのに……』

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初めての園生活。
まだ慣れない朝の支度で、パパとママに手を引かれながら門をくぐる。

 

園の門を通るとき、ぐるりと視線が集まった。

──痛いくらいに、まっすぐで、強い。

 

(えっ……?)

 

園児さんたちは、みんな大きくてかっこいい。
でも、なんだか──その目が、ちょっと熱すぎる。

 

「……今日も小動物みたい……」

「このちんまいのが、俺らと同い年……信じられん」

「さわりてぇ……いや、でも、許可がいる……!」

 

ぼくは思わず、ぎゅっとミミルを抱きしめた。
みんなの視線が、こそばゆくて。

 



 

園の先生が、今日のおやつ係を発表した。

「今日は、ルカくんが“おまけのお菓子”を配ってくれるって~」

「えっ!? ルカ様が!? それって食べていいんですか!?ルカ様の手から!?」

「この園で初の、ルカ様タッチつきお菓子……ッ」

 

ぼくはただ、
クッキーをひとつずつ袋に入れて、名前を呼んで手渡すだけ。

……だけなのに。

 

「ルカ様っ、ありがとうっ……!」
「やばい、手が震える……今の触れたよね!?やば……」
「一生、開けられねぇ……この袋……」

 

なんでみんなそんな顔してるの……?

まるで、大切な宝物でも受け取ったみたいに。

 



 

その後、絵本の時間。
先生が読んでくれるのを、みんなで輪になって聞く時間なんだけど──

 

「ルカ様、隣、いいですか……?」

「いえ、僕がさっき約束してたんで!」

「ちょっと! 押すなって、ルカ様にぶつかる!」

 

──おかしい。
絵本の時間って、こんなに静かじゃないの?

なんで、ぼくの“隣”を巡って戦争が起きてるの……?

 

そのうち、先生が困り果てて言った。

「じゃあ、今日はルカくん……“ひざの上”でも大丈夫かな?」

「は、はい……?」

 

それを聞いた瞬間、園児たちの顔が──
完全に「勝負」になった。

 



 

「ルカ様、軽い……あったか……」
「この体温を記憶する魔法、誰か持ってない!?」
「ミミルが俺に怒ってる気がする……!」

 

(──なんでぼく、ひざの上リレーみたいになってるの?)

 

気づけば、
みんなぼくを見る目が、なんか……熱い。どきどきしてるような。

 

でも、ぼくにはその意味が、まだよくわからなかった。

ただ、胸がくすぐったくて、顔が少し熱かった。

 



 

その夜。
ミミルを抱きしめて、寝室の窓から空を見上げた。

 

「……みんな、優しいけど……なんか、ちょっと不思議だよね」

ミミルは、ふわりと光った。

 

今日の魔法日めくりカレンダーの言葉は、こうだった。

『知らないうちに、あなたは誰かの“好き”になってる。
 それって、すごいことだよ。』

 

──まだ気づかない。
でも、この日から、ぼくの周りは「愛」で溢れ始めていた。
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