この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

6. 『……ぼく、なんでみんなに見つめられてるの？』

園生活、2日目。
ぼくはパパとママに見送られながら、園の門をくぐった。

　

するとすぐ──

　

「ルカ様！今日も……その、すごく可愛い……」
「……目、合った……もう一日が終わってもいい……」
「やば……今日は髪型が昨日よりゆるふわ……天才じゃん……」

　

（……まただ）

　

昨日と同じく、というか、
昨日よりさらに、視線が突き刺さってる気がする。

　

隣にいるミミルをぎゅっと抱きしめながら、ぼくは首をかしげた。

「……ミミル、ぼく、なにか変かな？」

ミミルは、ふわりとやさしく光った。

　

◇

　

午前中の工作の時間。

先生が紙を配ると、みんなが急に静かになった。

──そして、まさかの出来事が起きた。

　

「ルカ様、これは僕の“愛の折り紙”です」
「わたしじゃなくて、ぼくも、ルカ様に……この紙で……指輪を……」
「俺、もうプロポーズ済ませてるから！」

　

（……え！？）

　

みんながぼくに、
折り紙で作った指輪や花束、ケーキまで差し出してくる。

　

「……ありがとう。でも、工作の時間……？」

「ルカ様に贈るための時間ですよ、当然です！！」

　

──どうしてみんな、そんなに真剣な顔してるの……？

　

◇

　

お昼ごはんの後、外で遊んでいたら、
ぼくのズボンのポケットに、なにかが入っているのに気づいた。

　

（……これ、香り袋？）

　

中には、小さな紙が入っていた。

【ルカ様の今日の香り：優しさ・甘さ・ほんのり恋心】

──なんで、ぼくの感情をアロマにしてるの……？

　

顔が熱くなった。

　

◇

　

夕方、自由時間。
ぼくは読書をしていたけど──

「ルカ様、隣、空いてますか？」

「いえ、予約が入ってますので──明日の昼以降で！」

「ちょっ、勝手に予約帳つくんな！オレ先週から待ってた！」

　

もう、誰かがぼくのとなりに座るだけで争いが起こる。

「……みんな、なんでそんなに、必死なの？」

ミミルにそっと尋ねると、ミミルはふわりと震えた。

　

──もしかして……ぼく、すごく……困ったことになってる？

　

◇

　

その日の夜。
ママが言った。

「ルカ、明日から“お付きの補佐係”を園から選ぶんですって」

「おつき……？」

「ルカの安全と癒しのために、って。国が決めたそうよ」

　

（癒し……？）

　

「明日、全園児からの“立候補者”の中から選ぶらしいわ」

　

──翌日、ぼくは知ることになる。

補佐係の選考会は、告白合戦のような修羅場になることを。

　

◇

　

その夜の魔法カレンダーの言葉は、こうだった。

『誰かにとって“好き”な存在になると、
　世界の景色が少しだけ変わるよ』

　

ぼくの世界は、すこしずつ、でも確実に──
恋という名前の光に包まれはじめていた。