この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

7. （ユリウス視点） 『その存在は、罪だ。だって──ただ息をしてるだけで、僕を狂わせる』

ルカ様と出会ったのは、ほんの数日前のこと。
それまで完璧だった僕の心は、たった一つの存在にすべてを掻き乱された。

　

白い肌。透きとおる声。天使のようなまつげ。
そして、あのぬいぐるみ──“ミミル”を抱いて、まっすぐに僕を見る瞳。

　

一瞬で分かった。
この方は、「選ばれた存在」だ。

　

◇

　

「ユリウス、最近落ち着きがなくない？」

と、友人に言われるようになった。

たしかに、園での僕は今、以前の自分とは別人のようだ。

　

・食事はルカ様の向かいの席になるよう細工済。
・トイレのタイミングを計算し、偶然を装った遭遇は3回目。
・今日の“折り紙時間”では、純白のバラと指輪を献上。

　

（……おかしい。僕はこんな策略家じゃなかった）

　

でも、ルカ様を前にすると……
なぜか心が暴れ出してしまうんだ。

　

◇

　

「ユリウスくん、これ……くれるの？」

そう微笑んで、折り紙の指輪をそっと薬指に乗せたルカ様。

──その瞬間。

　

“この手を、絶対に誰にも渡さない”
という激しい衝動が、僕の中で燃え上がった。

　

恋なんて、もっと静かなものだと思ってた。
だけど今、僕の中にあるのは──

「所有欲」
「排他性」
「独占欲」

　

誰かに奪われるくらいなら、僕のすべてを捧げても構わない。

　

◇

　

その夜、園の選挙で「ルカ様のお付き補佐係」が決まると聞いた。

　

（ふふ、まさか……国が本気でルカ様を“管理”しようとするなんて）

でも、ルカ様は“誰のものにもなってほしくない”。

　

けれど、誰よりもそばにいたい。

　

──なら、僕がなるしかないじゃないか。

　

僕だけが、ルカ様の髪に触れてもいい人に。
僕だけが、ルカ様を支えていい人に。

　

◇

　

選考会前夜、鏡に映った自分の顔は、少しだけ怖かった。

笑っているのに、目が笑っていない。

　

（ルカ様……僕は、あなたにすべてを捧げます）

たとえ、それが“恋”ではなく“崇拝”だったとしても。

　

◇

　

翌日の魔法カレンダーの言葉は、こうだった。

『ときに恋は、祈りに似ている。
　触れられずとも、ただ願うだけで、幸せになれるから』

　

──でも僕は、触れたいんだ。
この想いは、もうただの祈りじゃすまないから。