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62. 『春の祝祭──世界中の“好き”が集まる日』
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春の匂いが風に乗って届くころ。
王都では年に一度の大きな祭り──**「春の祝祭」**が開かれる。
この日だけは、身分も年齢も関係なく、
みんなが“好き”なものを持ち寄って自由に楽しむのが決まりなんだって。
「ルカ様、今年の祝祭はご参加なさいますか?」
魔法団の使者が屋敷に訪ねてきたとき、ママは当然のように言った。
「もちろん出るわよね、ルカ?」
「えっ……」
──人混み、ちょっと苦手なんだけど……?
◇
だけど、当日。
僕はママが作ってくれたふんわりした白い外套を着て、
ミミルを胸に抱いて、パパの肩の上で移動していた。
「高い~~~!!お空が近い~~!!」
「はっはっは!わしの筋肉は、祝祭専用エレベーターじゃ!」
なにそれ。
◇
祝祭の広場は、まるでおもちゃ箱みたいだった。
花飾りのついた屋台がずらっと並び、
お菓子、絵本、動物、魔法の試作品──
「ルカ様ー!こちらのスライムパフェ、食べてみませんか!?」
「ルカ様向けに特製魔法ステッキ、用意しておりますっ!!」
「うちのわんこ(巨大)とツーショットどうですかーー!!」
……みんな、僕の“好き”を完全に把握している。
こわい。すごい。ありがとう。
◇
少し奥まったところに、小さな屋台があった。
そこには「アス」が立っていた。
「ルカ様っ……!」
「アスくん……!あれ、これは?」
「ぼく、今年初めて“出店”してみたんです。
“心があったまるお茶”──魔法茶葉を調合してみて……」
そう言って渡されたティーカップからは、
やさしい香りがふんわり立ちのぼった。
ひと口飲むと、胸がふっとゆるんだ。
「……おいしい……あったかい……」
「よかった……!」
アスくんのほうが、もっと嬉しそうに笑ってた。
◇
夜になると、空に魔法花火が打ち上がった。
僕はミミルと一緒に、空を見上げる。
──“好き”って、なんだろう。
前世では、“好き”になってくれた人はいたけれど。
“好き”だって口にしたら、いつも何かが壊れていた。
でも、今は。
みんなの“好き”が、ただまっすぐに、優しくて。
壊すんじゃなくて、つないでくれる。
◇
【魔法カレンダー:今日の言葉】
『“好き”は、言葉じゃなくて“温度”で伝わる。
それが、ほんとうの祝祭。』
祝祭の夜、花火が空いっぱいに咲いた。
誰もが、誰かを見て笑っていた。
この世界で生きてるって、
すこしずつ、本当に幸せなことなんだなって思えたんだ。
王都では年に一度の大きな祭り──**「春の祝祭」**が開かれる。
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なにそれ。
◇
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こわい。すごい。ありがとう。
◇
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“心があったまるお茶”──魔法茶葉を調合してみて……」
そう言って渡されたティーカップからは、
やさしい香りがふんわり立ちのぼった。
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「……おいしい……あったかい……」
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◇
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