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83. 「氷と炎、交わるはずのないふたり」
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「準決勝──ユリウス vs ノア!」
園庭に、ノアの声が響き渡った。
御覧席でミミルを抱きながら、その名を聞いたボクは、ふと首をかしげる。
(あれ……ユリウスって、1回戦やってなかったような……?)
するとノアが、魔法拡声器を使って補足を入れた。
「えーっと!ユリウスくんは、準決勝からのシード枠ですっ!」
「シード……?」
ミミルの耳が、ぽふっと揺れる。
「ほれ、昨日の試合前ミーティングで自分から言ってただろ」
──前日、試合順を決めるくじ引きでのこと。
ノアがくじ箱を抱えてはしゃぐ中、ユリウスは一歩引いて言った。
『僕は最後で構わない。みんなの想いを見届けたうえで、
そのすべてを越えてこそ、ルカの隣に立つ資格がある。』
ノアは最初「かっこつけすぎ~」と笑っていたが、
結局、みんなの同意でユリウスは準決勝から出場するシード枠となったのだった。
(……なんか、ユリウスらしい)
理屈っぽくて、真面目で、ちょっとずるくて、でも。
──ちゃんと、ボクのことを見てくれてるんだと思う。
**
リングの上で、ふたりの少年が向かい合った。
ノアは、相変わらず明るく、けれど強い眼差しで叫ぶ。
「ユリウスくんには、負けないよ! ボクだって……ボクだって、本気なんだから!」
その足元から、ぱちぱちと火花が舞い上がる。
対するユリウスは、冷静なまなざしで手をかざした。
「感情を叫ぶのは戦いじゃない。証明する。理性で、“好き”を貫く強さを」
白い霧のような魔力が、空中に氷の魔方陣を描いた。
──氷と炎。
──静と動。
──知と情熱。
対照的なふたりの“想い”が、空中で火花を散らす。
**
ノアの炎は爆ぜ、ユリウスの氷はそれを正確に打ち消していく。
「ボクは、勝たなきゃいけないって思ってるの! ルカくんのことが、好きだから!」
「……想いの重さは、力では測れない」
ユリウスは、火の弾を見極めてかわし、氷の刃を静かに放つ。
「だが、それでも君が叫ぶなら……全力で受けてみせる」
**
ボクはクッションの上で、ミミルを抱きしめながら見ていた。
(すごい……ふたりとも……)
まっすぐで、やさしくて、強くて。
ボクのことを、全力で思ってくれてるのが伝わってくる。
「……なあ、ルカ」
ミミルがぽふっと揺れた。
「どっちが勝っても、たぶんおまえは“幸せ”だな」
(……うん。そう、思う)
**
炎と氷のぶつかり合いの末──最後にノアの魔力が切れ、膝をついた。
勝者、ユリウス。
ノアは肩で息をしながら、それでも笑った。
「えへへ……負けちゃった。でも、悔しくない。全部、伝えられた気がするから」
ユリウスはその言葉に、小さく笑った。
「……その笑顔は、ルカにも向けてやってくれ」
**
リングを降りたノアに、ボクは駆け寄った。
「ノア、かっこよかったよ」
「ありがとっ! 全力で“好き”って言えた!」
ユリウスにも、ボクはそっと言った。
「ユリウスも、ありがとう。なんだか、静かにぎゅって、胸に届いた」
「……それが、僕の伝え方だ。君が見てくれたなら、それでいい」
**
──準決勝は終わり、いよいよ決勝戦。
「次は……ユリウス vs カイン、だね」
ふたりの目が交差した瞬間、空気が張りつめる。
“氷”と“執念”。
静かなる理性と、沈黙に潜む執着が──火花を散らす。
園庭に、ノアの声が響き渡った。
御覧席でミミルを抱きながら、その名を聞いたボクは、ふと首をかしげる。
(あれ……ユリウスって、1回戦やってなかったような……?)
するとノアが、魔法拡声器を使って補足を入れた。
「えーっと!ユリウスくんは、準決勝からのシード枠ですっ!」
「シード……?」
ミミルの耳が、ぽふっと揺れる。
「ほれ、昨日の試合前ミーティングで自分から言ってただろ」
──前日、試合順を決めるくじ引きでのこと。
ノアがくじ箱を抱えてはしゃぐ中、ユリウスは一歩引いて言った。
『僕は最後で構わない。みんなの想いを見届けたうえで、
そのすべてを越えてこそ、ルカの隣に立つ資格がある。』
ノアは最初「かっこつけすぎ~」と笑っていたが、
結局、みんなの同意でユリウスは準決勝から出場するシード枠となったのだった。
(……なんか、ユリウスらしい)
理屈っぽくて、真面目で、ちょっとずるくて、でも。
──ちゃんと、ボクのことを見てくれてるんだと思う。
**
リングの上で、ふたりの少年が向かい合った。
ノアは、相変わらず明るく、けれど強い眼差しで叫ぶ。
「ユリウスくんには、負けないよ! ボクだって……ボクだって、本気なんだから!」
その足元から、ぱちぱちと火花が舞い上がる。
対するユリウスは、冷静なまなざしで手をかざした。
「感情を叫ぶのは戦いじゃない。証明する。理性で、“好き”を貫く強さを」
白い霧のような魔力が、空中に氷の魔方陣を描いた。
──氷と炎。
──静と動。
──知と情熱。
対照的なふたりの“想い”が、空中で火花を散らす。
**
ノアの炎は爆ぜ、ユリウスの氷はそれを正確に打ち消していく。
「ボクは、勝たなきゃいけないって思ってるの! ルカくんのことが、好きだから!」
「……想いの重さは、力では測れない」
ユリウスは、火の弾を見極めてかわし、氷の刃を静かに放つ。
「だが、それでも君が叫ぶなら……全力で受けてみせる」
**
ボクはクッションの上で、ミミルを抱きしめながら見ていた。
(すごい……ふたりとも……)
まっすぐで、やさしくて、強くて。
ボクのことを、全力で思ってくれてるのが伝わってくる。
「……なあ、ルカ」
ミミルがぽふっと揺れた。
「どっちが勝っても、たぶんおまえは“幸せ”だな」
(……うん。そう、思う)
**
炎と氷のぶつかり合いの末──最後にノアの魔力が切れ、膝をついた。
勝者、ユリウス。
ノアは肩で息をしながら、それでも笑った。
「えへへ……負けちゃった。でも、悔しくない。全部、伝えられた気がするから」
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「……その笑顔は、ルカにも向けてやってくれ」
**
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「ノア、かっこよかったよ」
「ありがとっ! 全力で“好き”って言えた!」
ユリウスにも、ボクはそっと言った。
「ユリウスも、ありがとう。なんだか、静かにぎゅって、胸に届いた」
「……それが、僕の伝え方だ。君が見てくれたなら、それでいい」
**
──準決勝は終わり、いよいよ決勝戦。
「次は……ユリウス vs カイン、だね」
ふたりの目が交差した瞬間、空気が張りつめる。
“氷”と“執念”。
静かなる理性と、沈黙に潜む執着が──火花を散らす。
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