この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

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86. 「世界樹の精霊からの手紙」

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その手紙が届いたのは、
争奪演武祭の翌々日、朝の光が園庭を照らしはじめた頃だった。

園の門の前に、誰にも気づかれずにそっと置かれていた木箱。
ふたを開けると、中には──黄金に輝く葉脈の手紙。

「……これは、精霊の封筒だな」

園長先生が目を細めて言った。

「封じに使われているのは、世界樹の若葉。こんなもの……滅多に見ない」

ボクは、胸がどきどきしてた。

(世界樹……?)

それは、この国でも最も古くから“守り神”として伝わる存在。
風も火も氷も、すべての魔法の根源であり、命の始まりだとされている。

**

封筒の中から現れたのは、一枚の半透明な葉。

そこに魔力で刻まれていたのは、たったひとこと。

《光の子よ。
あなたに、“守人(もりびと)“の資格を仮授する。
汝が望むなら、森は扉を開くだろう》

「……守人?」

ノアがぽかんと口を開ける。

「ってことは、なんか……森の王様になるとか?」

「ちがうよ」

カインがぽつりと答えた。

「これは、“世界と契約する者”にだけ届く手紙だ」

ユリウスが続ける。

「世界樹の精霊は、千年のあいだ一度も人間と会話していない。
それがいま、ルカに“仮授”とはいえ声をかけてきた……これは、事件だ」

「え、ええ~……? ボク、そんなつもりじゃ……」

ミミルを抱きしめて、ボクは思わず顔をうずめた。

(ただみんなと仲良くしたいだけだったのに……)

**

けれど、心の奥で。

ほんの少しだけ──その言葉があたたかくて、こわかった。

「……ルカが選ばれるのは、もう“偶然”じゃないんだと思う」

レオンが、空を見上げながら言った。

「神様とか精霊とか、そんなの信じてなかったけど……
でも、今なら思える。ルカは、なんか“持ってる”んだって」

**

その日の夜。

ボクは世界樹からの葉っぱを、そっと部屋の窓辺に置いた。

ミミルが耳元でつぶやく。

「……行くか?」

(どこに?)

「森の扉だよ。呼ばれたのは、おまえだけだからな」

(……今は、まだ)

ボクは静かに首をふった。

(まだ、ボク……みんなの手を、離したくないから)

ミミルは、ぽふっと耳を揺らして笑った。

「よし。それが正しい。扉は逃げねぇ。
今は、あったかい手を握っとけ」

**

窓の外で、ひとひらの葉が風に舞った。

世界が、静かにボクに目を向けはじめている。
そのことに、胸がふるえた春の夜だった。
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