この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

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105. 「ノア、恋と信仰の境界線(理性が追いつかない想い)」(ノア視点)

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「……これは、恋なのか。信仰なのか。
それとも、ただの……依存?」

ノアはひとり、書斎の机にうずくまっていた。

ルカ宛に各国から届く無数の恋文と贈り物。
外交という名の求愛。
そして、彼を囲む園児たちの、抑えきれない感情の爆発。

すべてを冷静に分析してきたノアの心が、
ここにきて、追いつかなくなっていた。

「おかしいな……知ってたはずなのに」

──ルカが“誰のものにもならない”ってことも。
──誰よりも純粋で、誰にも特別な距離を与えないことも。

知っていた。わかっていた。
なのに――どうしてこんなに、苦しい?

「こんな気持ち、教科書には載ってなかった」

ノアは眼鏡を外し、机に伏せた。

喉の奥が焼けるように熱い。
誰かに奪われるわけじゃない。
誰かに選ばれるわけでもない。

でも、ルカが他の誰かと笑っているのを見るだけで、
胸がざらついて、息が浅くなる。

「……これが、恋?」

「それとも、“神子”としての信仰心が、ねじれただけ?」

答えは出ない。

でも、そんな混乱のなかでも、ひとつだけわかったことがある。

──自分は、もう二度と、ルカを「ただの友達」とは呼べない。

***

「ノアくん……?」

扉の向こうから、ルカの声が聞こえた。

咄嗟に椅子から飛び上がる。
乱れた髪とシャツを直す間もなく、扉がそっと開いた。

「ごめん、入っちゃった……具合、悪いのかなって……」

「……違う。ちょっと、考え事してただけ」

ノアの声は、いつもより掠れていた。

ルカは静かに近づき、彼の隣に座る。

「……ノアくん、最近ちょっと、元気ないね」

「うん……そう、かも」

「ボクで、何か……困らせた?」

「……違うんだ」

ノアは、唇を噛んだ。

言いたい。
でも言えない。

「……君は、いつも“誰のものにもならない”って言うけど……
じゃあ、ボクたちは、どうすればいい?」

その問いに、ルカはふっと目を伏せた。

「ノアくんの“好き”を、信じることしか、ボクにはできないの」

「でも、信じるから。ノアくんがそばにいてくれる理由を」

沈黙が降りる。

ノアは、ぎゅっと拳を握った。

「……ねえ、ルカ」

「うん?」

「もし、君が誰かを選んだら……ボクはきっと、笑って“おめでとう”って言うよ」

「……うん」

「でも、たぶん、心のなかでは、すごく泣いてると思う」

「……それでも、ノアくんが“言ってくれる”の、ボクは知ってるよ」

ルカは、そっと彼の手に触れた。

「だから、ノアくんの気持ちが“どんな名前”でも、ボクは逃げない」

「恋でも、信仰でも、依存でも──どんな形でも、ノアくんがボクを想ってくれるなら、それは全部、うれしいことだから」

その一言で、ノアの視界がぼやけた。

理性では、もう答えが出せない。

でも、これだけは確かだった。

──自分は、この子を好きになってしまった。

理由も、名前も、もうどうでもいいくらいに。
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