愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル

文字の大きさ
1 / 13

第1話

しおりを挟む

「いま、何と……?」

思わず聞き直した私は決して悪くはないだろう。

「いや、だからさ。マクベス王国からの友好の使者が来てるだろ? それに同行している隊のひとつがこの町にもきたんだ。そこへ出向してほしい。すでにあちらには作業部屋を用意してもらってあるから。それに連中はいい男ばかりだぞ、コーレだって…………な、なんだよ。別に悪い話じゃないだろ」

気持ちが冷えていく。
目の前の男はなんて言った?
私に『マクベス王国のために仕事をしろ』?
『すでに作業部屋を用意させている』?

「なぜ急にそんな話になったのですか」
「あ~、いや、その……」
「週末に何かあったのですか」
「え? いや、その……」

しどろもどろで会話にならない。
しかし、ここで目の前のバカはギルド長の権力を笠に着た。

「もし断るというならクビだ。この町に居られないようにもしてやるぞ」
「…………分かりました」

私の言葉にギルド長が安堵の表情を見せた。
何を勘違いしているのか。

「いままでお世話になりました」

きびすを返してドアへと向かう。
背後で慌てる音と引き止めようとする雑音が聞こえるが、振り向きひと睨みするとギルド長の動きが止まる。

「私は貴様の道具ではない」

私のこの言葉は、すでに半開きにしていた扉から魔導具師ギルド全体に届いただろう。
わざと声を風魔法に乗せて施設内全体に広げたのだから。

「私の存在を賭けの道具にした挙げ句、『断るならクビだ! この町にも住めなくしてやる』と脅し、マクベス王国の兵士たちが用意した部屋で連中の娼婦になってこい? ふっざけんじゃないわよ!!!」
「違う! 娼婦ではなく……」
「分からんのか! 『作業部屋を用意する』という言葉の意味が!」

青ざめて驚愕の表情。
あの男は意味がわかっていなかったようだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勘違いって恐ろしい

りりん
恋愛
都合のいい勘違いって怖いですねー

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

冬薔薇の謀りごと

ono
恋愛
シャルロッテは婚約者である王太子サイモンから謝罪を受ける。 サイモンは平民のパン職人の娘ミーテと恋に落ち、シャルロッテとの婚約破棄を望んだのだった。 そしてシャルロッテは彼の話を聞いて「誰も傷つかない完璧な婚約破棄」を実現するために協力を申し出る。 冷徹で有能なジェレミア公爵やミーテも巻き込み、それぞれが幸せを掴むまで。 ざまぁ・断罪はありません。すっきりハッピーエンドです。

彼女(ヒロイン)は、バッドエンドが確定している

基本二度寝
恋愛
おそらく彼女(ヒロイン)は記憶持ちだった。 王族が認め、発表した「稀有な能力を覚醒させた」と、『選ばれた平民』。 彼女は侯爵令嬢の婚約者の第二王子と距離が近くなり、噂を立てられるほどになっていた。 しかし、侯爵令嬢はそれに構う余裕はなかった。 侯爵令嬢は、第二王子から急遽開催される夜会に呼び出しを受けた。 とうとう婚約破棄を言い渡されるのだろう。 平民の彼女は第二王子の婚約者から彼を奪いたいのだ。 それが、運命だと信じている。 …穏便に済めば、大事にならないかもしれない。 会場へ向かう馬車の中で侯爵令嬢は息を吐いた。 侯爵令嬢もまた記憶持ちだった。

大好きなおねえさまが死んだ

Ruhuna
ファンタジー
大好きなエステルおねえさまが死んでしまった まだ18歳という若さで

悪役令嬢に相応しいエンディング

無色
恋愛
 月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。  ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。  さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。  ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。  だが彼らは愚かにも知らなかった。  ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。  そして、待ち受けるエンディングを。

本当に、貴女は彼と王妃の座が欲しいのですか?

もにゃむ
ファンタジー
侯爵令嬢のオリビアは、生まれた瞬間から第一王子である王太子の婚約者だった。 政略ではあったが、二人の間には信頼と親愛があり、お互いを大切にしている、とオリビアは信じていた。 王子妃教育を終えたオリビアは、王城に移り住んで王妃教育を受け始めた。 王妃教育で用意された大量の教材の中のある一冊の教本を読んだオリビアは、婚約者である第一王子との関係に疑問を抱き始める。 オリビアの心が揺れ始めたとき、異世界から聖女が召喚された。

それは報われない恋のはずだった

ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう? 私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。 それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。 忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。 「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」 主人公 カミラ・フォーテール 異母妹 リリア・フォーテール

処理中です...