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親戚関係で、ひとりっ子の私を猫可愛がり……いえ違いますね。
公爵家の方々は私を取り合っていました。
男勝りでドレスよりパンツスタイルだったアメリア様以外に娘はいないため、公爵家のメイドも含めた皆さんで私を着飾っていたのです。
もちろん、一度着たドレスや小物は私の帰宅と共に我が家に運ばれてきました。
そのため、私の衣装代は伯爵家から支払われたことはありません。
そのお礼も兼ねて、学園に通学するランドルフを我が家でお預かりしたのです。
アメリア様も、生まれたばかりの私にひとめぼれしてしまい、「私が騎士になって守るのぉぉぉ!!」と叫んだ八歳。
次期当主の勉強の傍ら、公爵家の騎士隊長に突撃して直接手習いを受けて騎士隊員と共に汗を流した九歳。
学園に入学した日に言いがかりをつけた第一王子を模擬剣で王子の矜持だけでなく傲慢な精神まで叩き壊した十歳。
学園中の令嬢たちから慕われ、学園中の子息たちから嫉妬されたものの、充実した学園生活。
公爵家の、それも次期当主相手に誰も手も足も口も出せないまま迎えた卒業の日。
第一王子も含めて、アメリア様に集団プロポーズして、たったひと言で玉砕したのは私の代でも有名な話です。
「明日、結婚いたしますの」の言葉を最後に学園を去ったのですから。
アメリア様の結婚相手は在学中に2年間の交換留学生として滞在していた帝国の同級生。
帝国でも「女の分際で」と言った男子学生たちを再起不能なまでに叩きのめしたそうです。
「鉄剣を手に集団で襲いかかって、全員がアメリアに利き腕の骨を砕かれたんだよ」
アメリア様の旦那様曰く、地面に伏した男子学生たちの中で息を乱すこともなく凛々しく立っていたアメリア様は不思議そうに小首を傾げて仰ったそうだ。
「帝国では徒党を組んで襲う行為が正しい騎士道精神であり、女である私に返り討ちになるほど弱くても騎士になれるのでしょうか?」と。
それも、アメリア様が手にしたのは日傘。
日傘には傷ひとつついていなかったそうです。
「あら、石突が傷つきましたのよ。お気に入りでしたのに」
件の男子学生たちは騎士科から追放されたそうです。
当然ですね、日傘を差した女生徒に20人ほどの騎士科の学生が鉄剣で襲ったのですから。
騎士道精神を持たない者に剣など持つ資格はありません。
彼らがアメリア様を襲ったのも、同じ交換留学生として加わった男子学生に試合で負けた際に「自分より強い同級生がいる」と聞いたから。
「時間と場所を指定して下さったらお相手させていただいたのですが」
アメリア様の仰る『お相手』とは、騎士道に沿った型通りということです。
帝国では「公爵家の次期当主のため、ただ守られるだけでなく自身でも身を守れるように育てられたのだろう」と称賛されたようです。
∮
主役は朝から自分磨きに忙しい。
もちろん磨くのはメイドたちであり、私は大人しく磨かれる大理石だ。
磨かれ終わると今度は着せ替え人形。
メイドたちの腕の見せ所である。
こうしてできた私は、誕生日パーティーの主役としての下準備が整った。
「来てるよ、招かれざる連中が」
「ご縁のなかった方々に祝っていただきたくありませんわ」
伯爵子息は婚約を断ったことを言い出せなかったのでしょうか、それともご両親が信じなかったのでしょうか。
ですが、確認の問い合わせもひと言の謝罪でもあるかと思っておりましたが、本日までございませんでした。
ですから、こちらは『礼を欠く行為』を理由に最低限のおつきあいに縮小いたします。
あちらの関係者は全員『参加お断り』となっているのですが、アドモス伯爵がああですので、婚約者候補から降りたことをご存じなかったのでしょう。
下手に騒いで、正規の参加者に顔と名前を知られてブラックリストに加えられるより、黙って引き下がられたようです。
お祝いの品だけ置いて帰られた方もいらっしゃられるそうです。
そちらの方には直接お礼を言えませんから、のちほどお礼状をお送りしましょう。
「せっかく公爵家とのご縁を足がかりに顔と子どもたちを売りだすチャンスでしたものね」
パーティーに参加される高位貴族に名と顔を売り、あわよくば子息令嬢の婚約者に我が子を据えることが出来れば、という甘い考えだったのでしょう。
「父と兄がひと睨みさせたら黙って帰って行ったよ」
公爵家の現当主と次期当主補佐に睨まれては明日から生きていけませんからね。
「あら、私に教えて下されば良かったのに」
ボディーガードとして私の側に付き添っていてくれたアメリア様が大変残念そうな声をあげられました。
私の婚約者に指名してもらおうと、パーティー会場の控室にやってくる子息がいます。
中には断られたら既成事実をつくろうと目論む不埒な考えの子息も。
ですが、私に付き添っている次期公爵様を前にして、「誕生日のお祝いを申し上げます」とだけ告げて去っていきました。
彼らの家名は記録されており、後ほど公爵家から抗議文が届くでしょう。
次男の婚約者ですから、私。
公式発表はこれからですけどね。
「お手を、私のお姫様」
差し出された手に微笑んで重ねた。
外では何やら騒いでいる声が途切れ途切れに届く。
婚約をしないと選択したことで受けるマイナス要素をようやく知ったようですね。
ですが、あなたが選んだことですよ。
「発表後が楽しみだね」
「公爵家の後ろ盾を甘く見てオイタするヤツは…………イタイ目にあっちゃうゾ❤️」
ああ…………アメリア様の目が輝いています。
「公爵家からの盛大な婚約祝いよ。ありがたく受け取ってね❤️」
その請求書を突きつけられるであろうアドモス伯爵家の皆様。
それもこれも、あなた方のご子息がお決めになられたことですわ。
ギリギリ没落を免れることを祈っておりますわ。
親戚関係で、ひとりっ子の私を猫可愛がり……いえ違いますね。
公爵家の方々は私を取り合っていました。
男勝りでドレスよりパンツスタイルだったアメリア様以外に娘はいないため、公爵家のメイドも含めた皆さんで私を着飾っていたのです。
もちろん、一度着たドレスや小物は私の帰宅と共に我が家に運ばれてきました。
そのため、私の衣装代は伯爵家から支払われたことはありません。
そのお礼も兼ねて、学園に通学するランドルフを我が家でお預かりしたのです。
アメリア様も、生まれたばかりの私にひとめぼれしてしまい、「私が騎士になって守るのぉぉぉ!!」と叫んだ八歳。
次期当主の勉強の傍ら、公爵家の騎士隊長に突撃して直接手習いを受けて騎士隊員と共に汗を流した九歳。
学園に入学した日に言いがかりをつけた第一王子を模擬剣で王子の矜持だけでなく傲慢な精神まで叩き壊した十歳。
学園中の令嬢たちから慕われ、学園中の子息たちから嫉妬されたものの、充実した学園生活。
公爵家の、それも次期当主相手に誰も手も足も口も出せないまま迎えた卒業の日。
第一王子も含めて、アメリア様に集団プロポーズして、たったひと言で玉砕したのは私の代でも有名な話です。
「明日、結婚いたしますの」の言葉を最後に学園を去ったのですから。
アメリア様の結婚相手は在学中に2年間の交換留学生として滞在していた帝国の同級生。
帝国でも「女の分際で」と言った男子学生たちを再起不能なまでに叩きのめしたそうです。
「鉄剣を手に集団で襲いかかって、全員がアメリアに利き腕の骨を砕かれたんだよ」
アメリア様の旦那様曰く、地面に伏した男子学生たちの中で息を乱すこともなく凛々しく立っていたアメリア様は不思議そうに小首を傾げて仰ったそうだ。
「帝国では徒党を組んで襲う行為が正しい騎士道精神であり、女である私に返り討ちになるほど弱くても騎士になれるのでしょうか?」と。
それも、アメリア様が手にしたのは日傘。
日傘には傷ひとつついていなかったそうです。
「あら、石突が傷つきましたのよ。お気に入りでしたのに」
件の男子学生たちは騎士科から追放されたそうです。
当然ですね、日傘を差した女生徒に20人ほどの騎士科の学生が鉄剣で襲ったのですから。
騎士道精神を持たない者に剣など持つ資格はありません。
彼らがアメリア様を襲ったのも、同じ交換留学生として加わった男子学生に試合で負けた際に「自分より強い同級生がいる」と聞いたから。
「時間と場所を指定して下さったらお相手させていただいたのですが」
アメリア様の仰る『お相手』とは、騎士道に沿った型通りということです。
帝国では「公爵家の次期当主のため、ただ守られるだけでなく自身でも身を守れるように育てられたのだろう」と称賛されたようです。
∮
主役は朝から自分磨きに忙しい。
もちろん磨くのはメイドたちであり、私は大人しく磨かれる大理石だ。
磨かれ終わると今度は着せ替え人形。
メイドたちの腕の見せ所である。
こうしてできた私は、誕生日パーティーの主役としての下準備が整った。
「来てるよ、招かれざる連中が」
「ご縁のなかった方々に祝っていただきたくありませんわ」
伯爵子息は婚約を断ったことを言い出せなかったのでしょうか、それともご両親が信じなかったのでしょうか。
ですが、確認の問い合わせもひと言の謝罪でもあるかと思っておりましたが、本日までございませんでした。
ですから、こちらは『礼を欠く行為』を理由に最低限のおつきあいに縮小いたします。
あちらの関係者は全員『参加お断り』となっているのですが、アドモス伯爵がああですので、婚約者候補から降りたことをご存じなかったのでしょう。
下手に騒いで、正規の参加者に顔と名前を知られてブラックリストに加えられるより、黙って引き下がられたようです。
お祝いの品だけ置いて帰られた方もいらっしゃられるそうです。
そちらの方には直接お礼を言えませんから、のちほどお礼状をお送りしましょう。
「せっかく公爵家とのご縁を足がかりに顔と子どもたちを売りだすチャンスでしたものね」
パーティーに参加される高位貴族に名と顔を売り、あわよくば子息令嬢の婚約者に我が子を据えることが出来れば、という甘い考えだったのでしょう。
「父と兄がひと睨みさせたら黙って帰って行ったよ」
公爵家の現当主と次期当主補佐に睨まれては明日から生きていけませんからね。
「あら、私に教えて下されば良かったのに」
ボディーガードとして私の側に付き添っていてくれたアメリア様が大変残念そうな声をあげられました。
私の婚約者に指名してもらおうと、パーティー会場の控室にやってくる子息がいます。
中には断られたら既成事実をつくろうと目論む不埒な考えの子息も。
ですが、私に付き添っている次期公爵様を前にして、「誕生日のお祝いを申し上げます」とだけ告げて去っていきました。
彼らの家名は記録されており、後ほど公爵家から抗議文が届くでしょう。
次男の婚約者ですから、私。
公式発表はこれからですけどね。
「お手を、私のお姫様」
差し出された手に微笑んで重ねた。
外では何やら騒いでいる声が途切れ途切れに届く。
婚約をしないと選択したことで受けるマイナス要素をようやく知ったようですね。
ですが、あなたが選んだことですよ。
「発表後が楽しみだね」
「公爵家の後ろ盾を甘く見てオイタするヤツは…………イタイ目にあっちゃうゾ❤️」
ああ…………アメリア様の目が輝いています。
「公爵家からの盛大な婚約祝いよ。ありがたく受け取ってね❤️」
その請求書を突きつけられるであろうアドモス伯爵家の皆様。
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ギリギリ没落を免れることを祈っておりますわ。
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