テンプレ最強勇者に転生したら魔女が妻になった

紡識かなめ

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第34話 選ばれる世界、選ぶ勇者

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 “選ぶ資格は、あなたにある”


 クロノミナの言葉は、静かに神殿の空気に溶け込んでいった。


 だが、ルークの心はまだ揺れていた。

 それは、彼が誰よりもこの世界を大切にしていた証だった。


 彼は、ゆっくりと振り返る。


 自分の背中を守ってくれた仲間たち――

 心を通わせ、共に戦ってきた魔女たち――


 彼らの顔を一人ひとり見つめながら、ルークは口を開いた。


 「……みんな。俺は、ここで――この世界の行く末を決めなきゃいけないらしい」


 「……この世界を、終わらせるか。続けるか。俺の手に委ねられてる」


 「だから、教えてくれ。お前たちは……どうしたい?」





 最初に口を開いたのは、ジークだった。


 「なにそれ。そんなん、お前に任せるに決まってるだろ」

 あっけらかんと笑って、いつも通りの調子で言う。


 「俺はお前の相棒だ。世界がどうなろうと、最後まで一緒にいくよ」


 続いて、フィオナが両手を胸に重ねて言った。


 「ルーク様の選ぶ道が……世界を照らすものだと、私は信じています」


 そして、ミレイアが目を伏せ、低い声で呟いた。


 「あなたに救われた私が言えるのは、一つだけ。

 どんな選択をしようと、あなたを否定する資格なんて誰にもない」


 クラリスは、ふっと苦笑した。


 「私たちは、あんたの“旅の物語”の登場人物だったかもしれない。

 でも、私は本気で怒って、笑って、泣いて、あんたを好きになった。

 それが嘘だなんて思わないし……あんたが決めるって言うなら、それでいいよ」


 グレイアは穏やかな表情で言った。


 「私たちは、“魔女”としてこの世界の柱だった。

 でも今は、“あなた”が私の軸になってる。

 あなたが選んだ未来に、私は微笑んでいたいわ」


 リィナは、ジークの腕にしがみつきながら不安そうに言った。


 「……難しいことはよくわかんないけど……

 でも、ルークが笑える未来がいい。ちゃんと笑ってくれなきゃやだもん」


 そして、最後にセフィナが口を開く。


 「あなたは、選ばされたのではなく、自ら選べる存在になった。

 私たちは、それを信じてここまで来たの。

 だから……最後も、あなたに任せるわ」





 沈黙が流れる。


 けれどそれは、もう迷いの沈黙ではなかった。


 皆の言葉が、ルークの胸に静かに、強く灯をともしていた。


 (……ありがとう)


 (こんなにも俺を信じてくれる存在がいる)


 (だから――)


 ルークは、再びクロノミナの方へ向き直った。


 その瞳には、もう一切の迷いはなかった。


 ルークは静かに歩を進める。

 その手には、聖剣アルシエルがある。


 鞘から抜かれたその刃は、光も影も映さない。

 ただ、まっすぐに――“今この瞬間”だけを切り裂くためにある。


 クロノミナは、動かなかった。

 逃げもせず、防御の構えも取らず――ただ、微笑みながら待っていた。


 「最後の質問に、答えてくれ」


 ルークの声は澄んでいた。


 「お前を倒した先にあるのが“破滅”でも、“解放”でも……

 お前は、それを受け入れる覚悟があるのか?」


 クロノミナは、ゆっくりと瞬きし、静かに頷く。


 「ええ。私は“あなたが選んだ世界の終点”として、ここにいる。

 たとえこの世界が終わるとしても、それは――あなたが歩んできた答え。

 私は、それを否定しないわ」


 ルークは、目を閉じた。


 仲間たちの声が、心に浮かぶ。


 ミレイアの忠誠。クラリスの笑顔。グレイアのぬくもり。セフィナの誇り。リィナの無邪気な瞳。

 ジークの背中。フィオナの祈り。


 ――そして、今この世界にある全ての温もりが、剣に宿る。


 「ありがとう」


 それは、世界そのものへの感謝。


 そして――


 「――これが、俺の答えだ」


 ルークが一歩踏み込み、剣を振り上げる。


 クロノミナは目を閉じ、微笑みをたたえたまま――ただ、そこにいた。


 そして、


 ――一閃。


 光も音もない。


 ただ、世界が一瞬で“無”に包まれる。


 何も見えず、何も聞こえない。


 全ての色が褪せていく。

 時間も、空間も、重力も、何もかもが――
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