あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己

文字の大きさ
21 / 574
第2部 学長戦線異常なし

第21話 神竜騎士団

しおりを挟む
神竜騎士団。

そう名乗った連中は、男女合わせて10人はいた。
いずれも「いかつい」。
全員が、制服の左袖を引きちぎって、それをバンダナのように頭に巻いていた。
うん。

「ださっ」。

テーブルを叩いた男は、リウのコップに残った茶を食べかけのサンドイッチの上にこぼした。
台無しになった朝食をリウは無言で見つめた。

「さて、お子様たちは痛い思いをするか、わび料を払って立ち去るか選ばせてやる。」

リウの「見かけの」年齢よりは4つ5つ年上だろう。15で入学して18で卒業、という冒険者学校のモデルプランからははずれているから、あるいはぼくらのように経験のある冒険者が資格をとるために入学したのかもしれなかった。

昨日は夜まで、トラブル続き、今朝も朝食からトラブル続出だけど、まあ、いいや。
とりあえず、解決のつかないロウの浮気疑惑は、後回しにできそうだ。いやまさか。
疑惑じゃなくてほんとに「浮気」になるのか、これ?

キャベツは炒められることが歓びだったとする。人間が食欲のみでキャベツを炒めたらそれは浮気になるのか?
とある女性は性交渉そのものが歓びだったとする。ある男性が性欲のみでその女性を抱いたら。

浮気だ。浮気に間違いありません。残念ながら浮気です。

どうもロウの理屈のほうが正しそうだと気がついて、そんな余計なことを考えていたので、「神竜騎士団」を名乗ったチンピラがこぶしを振り上げたのに対し、ぼくは一瞬、反応が遅れた。
危うし!チンピラの命!

風のようにかけつけてくれたのは、ネイア先生だった。
こぶしは、彼女の掌のなかにそっと収まって、そのまま、彼女は、相手をひねり倒した。怪力だけじゃない。体術もちゃんと勉強している。

それでもテーブルの上のものが飛び散り、燻製肉やピクルスののった大皿が割れ、あたりは騒然となった。

「ネイア先生? 生徒同士のトラブルに教師が首をつっこむのはご法度よ。」

「神竜騎士団」の方向から、悠然と現れたのはリーダーらしき女性だった。
素肌の上に、軽く制服のジャケットを羽織っただけ。前をはだけているので、一応下着はつけているものの、乳房の形から、おへそまで丸見えの状態なのだ。
北の街でこの格好で歩いたら完全に逮捕案件なのだが・・・・。

「メイリュウ。彼らは、昨日入学したばかりだ。多めに見てやってはくれまいか?」

「あら。」
メイリュウと呼ばれたリーダーの女はクスクスと笑った。どこか狂的な匂いのある嫌な笑い方だった。
「そっちの坊やは昨夜、ルールス元『学長』のところに呼ばれたあと、あなたと第三学寮の小道の近く。ちょうど木立になったあたりで、いいことしてたんじゃないかしら。
愛人をかばうのも大変だけど、教師たるものあまり吸血鬼の本能をむきだしにしないほうがいいと思うわ。それとも吸血鬼より“女”の部分かしらね。」

格好は馬鹿っぽいが、こいつらはけっこう、学内で隠然たる勢力をもっているようだ。そしておそらく。

「ジャンガ=ジャンガの」
「ジャンガ=グローブ学長、ね。」
メイリュウは眉を顰めた。
「どこを聞き違えるのかわからないけど、それ学長がいやがるからやめてね。
まあ、少しは話が通じてるみたいで助かる。
ルールス教官についてもあなた方にロクなことはないわ。もし、ここを無事に卒業して冒険者資格を得たいのなら、わたしたちに逆らわないこと!
そうすれば、逆にいい思いができるかもよ。」

メイリュウはくるりと背をむけた。
背中の部分は思い切り大きく刺繍が入っている。

「神竜公姫リアモンド」

金と朱で見事描かれた竜の絵と、上古文字でかかれたその名前。

アモンをみたが、ああ、よかった笑ってる。いやあれは笑いじゃなくって。

歯をむき出しているのか。

入校二日目で、冒険者学校壊滅の予感に怯えながらぼくらは、空きっ腹をかかえて一時限目の授業に急いだ。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...