あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己

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幕間2

真祖と神獣はロクなことしない

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「ギムリウス!
わたしは考えたんだが。」

ギムリウスは、繭から首だけ出している。
眠そうなとろりとした顔の少女が、天井の隅に作った繭から首だけ出しているのは、見るものによってはトラウマ級の恐怖体験となるだろう。
だが、自らが真祖吸血鬼というトラウマ級の恐怖の対象であるロウ=リンドはびくともしなかった。

「はい。」

起きています。という意味の生返事だけして、ギムリウスはのろのろと繭から降りた。

「ドロシーのことだ。」

「はい。また糸が入りますか?」

「そこだ!」

「どこです?」

まあ、座れ。
と、ロウはばんばんと、椅子を叩いた。

ここは、ギムリウスとアモンの部屋なのだが。

ロウは我が物顔である。

ギムリウスは、別段、立っているより座った方が楽、というわけでもなかったのだが、大人しく言われた通りにした。

「ドロシーはなんかいい感じに仕上がってきた。
もともとスタイルは悪くないんだ。だが、痩せすぎで運動嫌いのツケでだな、あれ。」
うんうん、と一人納得しながら、ロウは続けた。
「わたしの適度な運動の指導のおかげで、けっこう、筋肉も出来て、肌艶も良くなってる。
姿勢が良くなったんでもともとのスタイルの良さも活きてきた。

いやあ、自分でいうのもなんだが、あれはルトの好みのタイプだ。」

「はあ。」

ギムリウスは、生返事をした。

「ルトには、フィオリナという婚約者がいますが。
そして、ドロシーには、マシューという相手がいるように思えます。

なぜ、ドロシーをルトと番わせようとするのですか?」

「ルトが困るのを見るのが楽しいからだっ!」
胸を張って、真祖吸血鬼は断言した。
「あいつが困って右往左往するのが見たい。間違って、そういう関係になって、フィオリナにぶっ飛ばされるのが見たい。」

「・・・・・」
ギムリウスは、天井を見上げて少し考え込んでいた。ロウの話にふさわしい単語を探していたのだ。
「・・・・悪趣味。」

「そこで、だ。」

「協力しませんよ。」
と言って、ギムリウスは巣に戻りかけた。別に眠くはないが、こいつと話してるくらいなら眠っていた方がマシだ。

「ならば、こう言い換えよう。
ドロシーの魅力をさらに引き出すボディスーツの開発に協力してほしい。」

「なるほど。」

常識の通じないギムリウスはまた座り直した。

「具体的にどうしますか?」

「体の線や筋肉の動きは今のスーツでも十分だと思う。
なので、彼女の肌艶を引き立てるスーツの色を工夫したい。」

「なるほど。」

ギムリウスは、少し考えた。

「彩色は可能です。わたしの考えでは、ルトは健康そうで、活動的な女性に魅力を感じると思います。
ドロシーの肌は、最初に会った時よりはだいぶマシになっていると思います。それを引き立てる色というと・・・・」

「当然! !だ。」

「なるほど。」

ある意味とても素直な神獣は、真面目に考え、真面目に答えた。

「完全に透明にしてしまうのは無理ですが、半透明くらいならば可能です。しかし・・・・」

「なにが気になる、ギムリウス。」

「それでは見た目、裸体と変わらなくなるのではないでしょうか?
人間は、通常服を着て生活しています。地域ごとの差はあるようですが、通常は、ある程度肌を布で隠すのが当然です。

(これはギムリウスが今日の授業で習ったばっかりのところで、彼女はとても得意そうだった)

ドロシーはこの国で生まれて育っているわけですから、肌を隠すのもこの国の基準で、はしたない、とか下品と思われない程度にしないといけません。」

その基準だと、すでにこの人外どもが提供しているボディスーツでアウトだったのだが、ギムリウスはそんなことは思いつきもしない。

「どの程度、隠せばいいかな?」

「人間が単独、またはパートナーとだけ行う作業の時にしか露出しない部分は最低でも隠すべきだと思いますね。

具体的には、排泄と繁殖行為。

それに、ランゴバルドでは、授乳も人前であまり行わないようです。おっぱいの露出はいかがでしょう?」

「メイリュウは、けっこう出してだぞ。もうちょっとで溢れるくらい。」
ロウは、大体の正解はわかっていたが、あえてギムリウスを訂正はしなかった。
「すべて露出しなければいいんじゃないのかな。どうせ今のスーツでも形はわかってしまうから。」

「そうですね。実際に授乳に使うのは先端部分ですから、そこが隠れれば問題ないでしょう。」

かくして出来上がったスーツを着せられたドロシーは悲鳴をあげて、その場にうずくまった。

ちょっとした魔力暴走が起こり、ロウの部屋は、氷漬けになった。
それでダメージを受けるような真祖ロウ=リンドではなかったが、部屋の片付けはけっこう大変だったのである。






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