85 / 574
第4部 グランダ魔道学院対抗戦
第70話 迷宮のチェスゲーム
しおりを挟む
グリムド、と飛ばれている3次元ボードゲームがある。
一般には流通していないし、今後も流行ることはないだろう。
騎兵、弓兵、重装歩兵・・・などを模したコマを動かして戦う。新たな兵を生産したり、新しい兵種を創造したり、場合によっては相手の戦力を自軍に引き寄せたり、することもできるため、消耗戦というよりは持久力の試される戦略が必要だ。
対局者は、何時間も、展開によっては何日もその球体状に展開した模擬戦状と向き合わなければならない。
そして、このゲームの最大の特徴は。
「槍兵を、黒の森へ二つ。バリスタの準備にかかる。索敵兵を赤の原へ。」
コマに手などかけない。
アモンの命じたとおりに、彼女のコマが移動する。
が、槍兵のコマがひとつ。
移動した先で消滅した。
いつも野太い笑みを絶やさない口元が、歪み
「グリムドかっ」
と忌々しげにつぶやいた。
「今回のグリムドは、透明化が使えるらしい。
索敵を増やした方がよくないか?」
リウはそう言いながらも、彼のもつ重装歩兵を白の草原に展開させる。
索敵を出す気などさらさらない。
正面からの真っ向勝負だ。
しかし、陣形は防御に適したものを選んでいる。
もっとも左においた歩兵が、バチバチと火花をあげて消滅していく。
そこに、アモンがバリスタによる遠距離攻撃を叩き込んだ。
手応え、はあった。見えぬクリムドが悲鳴をあげて消えていく。
そう。
このゲームの最大の特徴は、ゲームの名前にもなっている第三勢力「グリムド」の存在にあった。
ゲーム開始と同時に、召還される「それ」がどんな能力をもち、敵なのか味方なのかプレーヤーにはわからない。
プレーヤーたちはときにはともにグリムドを討ち、あるいは、相手にグリムドをけしかけ、最終的には相手プレーヤーの殲滅を目指す。
プレイするにはかなりの魔力を消費する。
ゆえに。
このゲームをプレイすることができるのは、一流以上の魔導師に限られていた。
「リウがこのゲームのプレーヤーだとは、知らなかったぞ。」
アモンは目を細めた。まずは協力して第三勢力「グリムド」を叩く展開か。
「魔素の過剰摂取による凶暴化を実際の戦闘ではなく、ゲームで発散できないか。」
リウは言いながら弓兵によるなにもない場所への斉射をしかける。
バタバタと見えない兵が倒れていく。
「このグリムドは、わりと成績がよくてな。実際の戦闘の三割程度は、凶暴化抑制に効果があった。」
「魔力の消費量が。」
「魔素による強化をなめるなよ。少なくとも魔法に素養のある魔族なららこの程度、やすやすとプレイすることができたぞ。」
「作ったのは亜空竜ウドアだ。」
アモンは斥候を走らせる。
空振り。
「つまり古竜を基準に、魔力消費量を設定している。それに匹敵する魔力をもつとなると・・・」
「まったくウィルニアの迷宮封じ込め作戦は正しかった・・・としか言いようがない。」
リウは頷いた。
「世界を滅ぼすまで戦った後は、お互い同士が殺し合う。そしてなにも残らなくなる。
・・・また見えないところに弓の斉射。なにかが苦悶の声をあげて倒れた。
「もうひとつ、このゲームで気に入っているのはこれだ。」
「・・・・」
「もうひとりのプレーヤー『グリムド』。
現実における戦いも決して、相対している敵だけがすべてではない。必ず、それを見守っている第三者がいる。」
浮かべた笑みは魔王のものだった。
「そして、そいつはいつでも敵にまわる。」
一般には流通していないし、今後も流行ることはないだろう。
騎兵、弓兵、重装歩兵・・・などを模したコマを動かして戦う。新たな兵を生産したり、新しい兵種を創造したり、場合によっては相手の戦力を自軍に引き寄せたり、することもできるため、消耗戦というよりは持久力の試される戦略が必要だ。
対局者は、何時間も、展開によっては何日もその球体状に展開した模擬戦状と向き合わなければならない。
そして、このゲームの最大の特徴は。
「槍兵を、黒の森へ二つ。バリスタの準備にかかる。索敵兵を赤の原へ。」
コマに手などかけない。
アモンの命じたとおりに、彼女のコマが移動する。
が、槍兵のコマがひとつ。
移動した先で消滅した。
いつも野太い笑みを絶やさない口元が、歪み
「グリムドかっ」
と忌々しげにつぶやいた。
「今回のグリムドは、透明化が使えるらしい。
索敵を増やした方がよくないか?」
リウはそう言いながらも、彼のもつ重装歩兵を白の草原に展開させる。
索敵を出す気などさらさらない。
正面からの真っ向勝負だ。
しかし、陣形は防御に適したものを選んでいる。
もっとも左においた歩兵が、バチバチと火花をあげて消滅していく。
そこに、アモンがバリスタによる遠距離攻撃を叩き込んだ。
手応え、はあった。見えぬクリムドが悲鳴をあげて消えていく。
そう。
このゲームの最大の特徴は、ゲームの名前にもなっている第三勢力「グリムド」の存在にあった。
ゲーム開始と同時に、召還される「それ」がどんな能力をもち、敵なのか味方なのかプレーヤーにはわからない。
プレーヤーたちはときにはともにグリムドを討ち、あるいは、相手にグリムドをけしかけ、最終的には相手プレーヤーの殲滅を目指す。
プレイするにはかなりの魔力を消費する。
ゆえに。
このゲームをプレイすることができるのは、一流以上の魔導師に限られていた。
「リウがこのゲームのプレーヤーだとは、知らなかったぞ。」
アモンは目を細めた。まずは協力して第三勢力「グリムド」を叩く展開か。
「魔素の過剰摂取による凶暴化を実際の戦闘ではなく、ゲームで発散できないか。」
リウは言いながら弓兵によるなにもない場所への斉射をしかける。
バタバタと見えない兵が倒れていく。
「このグリムドは、わりと成績がよくてな。実際の戦闘の三割程度は、凶暴化抑制に効果があった。」
「魔力の消費量が。」
「魔素による強化をなめるなよ。少なくとも魔法に素養のある魔族なららこの程度、やすやすとプレイすることができたぞ。」
「作ったのは亜空竜ウドアだ。」
アモンは斥候を走らせる。
空振り。
「つまり古竜を基準に、魔力消費量を設定している。それに匹敵する魔力をもつとなると・・・」
「まったくウィルニアの迷宮封じ込め作戦は正しかった・・・としか言いようがない。」
リウは頷いた。
「世界を滅ぼすまで戦った後は、お互い同士が殺し合う。そしてなにも残らなくなる。
・・・また見えないところに弓の斉射。なにかが苦悶の声をあげて倒れた。
「もうひとつ、このゲームで気に入っているのはこれだ。」
「・・・・」
「もうひとりのプレーヤー『グリムド』。
現実における戦いも決して、相対している敵だけがすべてではない。必ず、それを見守っている第三者がいる。」
浮かべた笑みは魔王のものだった。
「そして、そいつはいつでも敵にまわる。」
19
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる