あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己

文字の大きさ
136 / 574
第5部 ギウリーク動乱篇~ミトラへの道

第117話 邪神さま、天にかわって鬼退治いたす!

しおりを挟む
一応、道らしきものはあった。
ただ、もともとのランゴバルド旧街道だって相当にひどいものだったから、この間道になるとところどころに目印の白石があるだけ。
道が分かれているところには、木の棒が虚しくたっている。行き先を示す看板はすでに地面におちていて、留めた釘痕から、たぶんこれはこの向きについていて、だからミトラの東部に出るというのはこっちだろう、と推測するしかない。
当たりは一行以外に行き来するものもない山中だった。
異世界人のアキルなどは「遭難」「行き倒れ」などということばが、頭をよぎったりするのだが、オルガはそしたら、野生動物でも狩って、しばらく山籠りもいいかな、と言い出し、ジウルが、なあにいざとなれば転移もある。
そう言って、アキルを安心させた。

ヴァルゴールとしては、転移などそれほど難しいものとは認識していなかったし、アキルとしてもこの世界にきてから、ギムリウスやロウなど「歩くのがめんどい」で転移をつかうものに囲まれていただので、そう思ってしまったのだが、言うまでもなく「肉体」を持った状態での転移は、はるかに難易度があがるし、ジウルにしても人数を連れての転移ではせいぜいマーカーをおいてある、グランダに舞い戻るのが精一杯だったろう。

とはいえ、全員にとって、なかなかこれはつらい道行ではあったのだ。
肉体的には一番、頑強なジウルも旅などというものは、その若い頃に行っただけであり、それから百年にわたり、もっぱら魔道の研鑽と宮中相手の権謀術策にあけくれてきたのだ。
整備された街道などはともかく、獣道とかわらないような山道はこたえた。
彼女の弁によれば、濡れ衣を着せられてひとり、逃げてきたというオルガであるが、その素行の悪さとはうらはらにお姫さま育ちであり、およそ、辛いこと、退屈なことには堪え性というものがまるでない。
ドロシーも、ロウやジウルといった半ば人外のものに鍛えてもらっているとは言っても、所詮は街でそだった。それもどちらかと言えば、座業でこつこつと勉強を積み重ねてきたインドアタイプだった。
アキルは身体を動かすのはすきなほうであったが、それはあくまで、女子高生の一般レベルである。
ヴァルゴールはすでに「身体を動かす」感覚すら忘れていた。

というわけで、一行はなんとか、日が落ちる直前に村にたどりついた。
一応、宿場めいたつくりにはなっている。
通りを挟んで何軒かの家が立ち並び、その中には「旅籠」とかかれた看板がさびしげに傾きながら、ゆらゆらと踊っていた。

入口でしばらく、案内のものもないままに、立ち尽くしていると、奥からシワだらけの小男がのこのことやったきた。
なぜそんなにシワだらけなのかと、よくよく、見れば苦虫をかみ潰したような顔をしている。
「お客さんかい?」

そうだ、とジウルが答えると、
「一人5000。個室が欲しけりゃ10000。前金だ。」

連れが女で無ければ野宿も考えたジウルだが、オルガが言っていた野盗とやらの情報もほしかった。
言われた通りに金を渡すと、
「奥の2部屋を使いな。
飯は囲炉裏に雑炊が煮えてるから勝手に食ってくれ。」
それから、やっと一行のほうをじろり、と見た。
「こんな辺鄙なところに女連れかい?」
「ああ。ギウリークに行くつもりなんだ。ここが近道ときいてきたんだが、どうも、ハズレだったようだな。」
「そりゃあ、おめえさんが騙されたんだよ。
地図には道がまともかなんてのってねえからな。」
「亭主はここはながいのか?」

ジウルが尋ねると旅籠の主は何がおかしいのか、けたけたと笑った。
「そんなことは、どうでもいいだろう。ほれ、宿帳だ。」
アキル
ジウルもドロシーもオルガも。堂々と本名を書いている。アキルだけは出身をグランダにしたおいた。
ごゆっくり、の一言もなく、ひっこんだ主はほっておいて、ジウルたちは炉端の部屋に行ってみた。

驚いたことに先客がいた。
引退した商人のご隠居といったふぜいの老人と、その供回りの屈強な男が二人、楽器を抱えた婀娜っぽい女が一人と、その仲間の男。これはおそらくは旅芸人の類だろう。

どちらが刺客か。
と、オルガとジウルは思った。

昨日泊まった宿場町では、名前を出したうえで行き先からそのルートまで公言して賑やかに食事をしている。
山道で襲ってこなかったところを見ると先回りしている公算が大だが、あるいはまだ情報がもれてはおらず、ずっと遅れているのか。
あるいは、彼らが宿場町の手前の山中で全滅させたものがとりあえずのすべてであったのか。

追われる身としてはこれがキツい。
行き交う者すべてが、刺客に見える。本人もキツいが人違いで殺される一般人はたまったものではないだろう。

二言三言、言葉は交わしたが、どちらもおかしな様子はなかった。
それぞれ、雑炊には手をつけず手持ちの携行食糧を腹におさめていた。
ジウルも雑炊を覗いたが、うまいまずい以前の問題だった。
彼は、闇姫に目配せし、食った振りをして、捨てた。              
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

処理中です...