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第5部 ギウリーク動乱篇~ミトラへの道
第143話 風雲のオールべ
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魔道列車が止まったなら竜に運ばせればいいじゃない。
列車の旅はそろそろ飽きた。復旧まで待つのも面倒になったので、深淵竜を呼びつけてミトラまで運ばせよう。
と、提案したのは、もちろんウィルニアである。他国に自分の国の息のかかった古竜を、竜の姿のままで送り込んだら、もう宣戦布告、が昔も今も常識なのだが、ウィルニアはわかってやっている節もある。典型的な愉快犯なのだ。
クローディアは笑って、アウデリアは怒って、その提案を即時却下した。
かわりにアウデリアは、その列車の運行を妨害する『白狼団』と名乗るならず者の首を駅舎の軒に並べようと提案したのだが、クローディアはこれも却下した。
とにかくここは、もはやギウリーク聖帝国の国内である。
あまり、他国で暴力沙汰を起こしてほしくはない。
かと言っていつまでも駅のホームで延々と待ち続けるわけにもいかなかった。
他の乗客も次々と、駅を後にして街中に移動している。
まずは、食事や休憩の場所を、そして宿の手配も。場合によっては何日も宿泊しなければならないかもしれない。
どこからどうみても、現役バリバリの冒険者にしか見えないクローディア大公とその奥方、そしていまでは誰も着なくなったトーガ姿の、
伝説の大賢者ウィルニアのコスプレにしか見えないウィルニアは、オールべの町に降り立った。
意外にもオールべの町は、列車の運行停止というアクシデントに慌てたようすはまったくない。
駅前は、宿屋の客引きで溢れてかえって活気づいいるくらいだった。
あとは、食事処や休憩所、果ては屋台を出しての物売り、これは食べ物から、酒や飲み物、さらには手荷物の一時預かりなど、まるでこのアクシデントを待ち望んでいたかのような看板も見受けられる。
「宿をとったほうがよいかな。」
クローディアが言った。
「線路を壊されたとなると、工事だけでも半日かそこいらはかかるだろう。まして、工事を邪魔する賊が出没するともなれば。」
アウデリアは、不満げに鼻をならした。
「こんな木賃宿にこの値段で泊まるつもりはないぞ、我が君。」
「たしかに、値段は釣り上げているだろうが。」
「よく見ろ。看板はいずれも前もって作ったものだ。つまり、町の連中は、この事故が起こることを前もって知っていたか、何回も繰り返される年中行事になっているのか。」
「ならば、我が妻の選択は?」
「野宿だ野宿。」
女冒険者は荒っぽく言った。
「まさか、大公になると野宿は嫌だとか、甘ったれたことは言わんよな?」
「甘ったれたことを言うつもりはないが、今少し真相を知りたくなってきた。」
クローディアは言った。
「西域諸国は、鉄道警備には専門の警備兵を組織している。人員、装備ともにかなりの予算をさいているはずだ。
それを、やすやすと鉄道を破壊され、しかも復旧も賊に脅されてままならないなど、あってよいことではない。何がどうなっているのか、事情を聞いてみたいところだ。」
「ふむ。賛成だな。ならばどうする?」
「聞き込みだな。まずは冒険者ギルドだ。お主は銀級の冒険者だろう?
我がパーティ『白狼狩り』はどうどうとギルドを訪れることが出来る。」
「パーティ名を除けば悪い提案ではないな。」
アウデリアは頷いた。
「飯と酒にもありつけそうだし、最悪眠る場所も確保できる。」
「まさか、冒険者ギルドまでぼったくり価格ってことは、ないよね?」
ウィルニアが不安そうに言った。
「このわたしを相手にどこのギルドの誰がぼったくるって?」
愉快そうに笑ってくるくると腰の戦斧を回して見せたアウデリアであった。
結論から言うと、三人が落ち着けるにはまだまだ時間が必要だった。
街の、ギルド「紫檀亭」でアウデリアが受付をしているまさに、その最中にギルドの扉が開き、守備兵と思われるボロボロになった制服の男が駆け込んできたのだ。
「誰か手を貸してくれっ!」
男は叫んだ。
「殴り込みだ。女連れのジジイだが、連れてる奴らがめっぽう腕がたちやがる。」
守備兵、というより、賭場でも荒らされた闇社会の連中の口調だな、とクローディアは呆れたが、アウデリアはにんまりと笑って、胸を叩いた。
「ようし、この『アウデリア姉さんと愉快な仲間たち』が、なんとかしよう。案内しろ。」
ふざけたパーティ名以外は、クローディアも賛成だった。
ギルドを通しての依頼ならは、一冒険者として少々暴れてもクレームはつかない。
頼むからおまえは手を出すなよ。
と、クローディアはウィルニアに目配せしたのだが果たして効果があるのやら。
列車の旅はそろそろ飽きた。復旧まで待つのも面倒になったので、深淵竜を呼びつけてミトラまで運ばせよう。
と、提案したのは、もちろんウィルニアである。他国に自分の国の息のかかった古竜を、竜の姿のままで送り込んだら、もう宣戦布告、が昔も今も常識なのだが、ウィルニアはわかってやっている節もある。典型的な愉快犯なのだ。
クローディアは笑って、アウデリアは怒って、その提案を即時却下した。
かわりにアウデリアは、その列車の運行を妨害する『白狼団』と名乗るならず者の首を駅舎の軒に並べようと提案したのだが、クローディアはこれも却下した。
とにかくここは、もはやギウリーク聖帝国の国内である。
あまり、他国で暴力沙汰を起こしてほしくはない。
かと言っていつまでも駅のホームで延々と待ち続けるわけにもいかなかった。
他の乗客も次々と、駅を後にして街中に移動している。
まずは、食事や休憩の場所を、そして宿の手配も。場合によっては何日も宿泊しなければならないかもしれない。
どこからどうみても、現役バリバリの冒険者にしか見えないクローディア大公とその奥方、そしていまでは誰も着なくなったトーガ姿の、
伝説の大賢者ウィルニアのコスプレにしか見えないウィルニアは、オールべの町に降り立った。
意外にもオールべの町は、列車の運行停止というアクシデントに慌てたようすはまったくない。
駅前は、宿屋の客引きで溢れてかえって活気づいいるくらいだった。
あとは、食事処や休憩所、果ては屋台を出しての物売り、これは食べ物から、酒や飲み物、さらには手荷物の一時預かりなど、まるでこのアクシデントを待ち望んでいたかのような看板も見受けられる。
「宿をとったほうがよいかな。」
クローディアが言った。
「線路を壊されたとなると、工事だけでも半日かそこいらはかかるだろう。まして、工事を邪魔する賊が出没するともなれば。」
アウデリアは、不満げに鼻をならした。
「こんな木賃宿にこの値段で泊まるつもりはないぞ、我が君。」
「たしかに、値段は釣り上げているだろうが。」
「よく見ろ。看板はいずれも前もって作ったものだ。つまり、町の連中は、この事故が起こることを前もって知っていたか、何回も繰り返される年中行事になっているのか。」
「ならば、我が妻の選択は?」
「野宿だ野宿。」
女冒険者は荒っぽく言った。
「まさか、大公になると野宿は嫌だとか、甘ったれたことは言わんよな?」
「甘ったれたことを言うつもりはないが、今少し真相を知りたくなってきた。」
クローディアは言った。
「西域諸国は、鉄道警備には専門の警備兵を組織している。人員、装備ともにかなりの予算をさいているはずだ。
それを、やすやすと鉄道を破壊され、しかも復旧も賊に脅されてままならないなど、あってよいことではない。何がどうなっているのか、事情を聞いてみたいところだ。」
「ふむ。賛成だな。ならばどうする?」
「聞き込みだな。まずは冒険者ギルドだ。お主は銀級の冒険者だろう?
我がパーティ『白狼狩り』はどうどうとギルドを訪れることが出来る。」
「パーティ名を除けば悪い提案ではないな。」
アウデリアは頷いた。
「飯と酒にもありつけそうだし、最悪眠る場所も確保できる。」
「まさか、冒険者ギルドまでぼったくり価格ってことは、ないよね?」
ウィルニアが不安そうに言った。
「このわたしを相手にどこのギルドの誰がぼったくるって?」
愉快そうに笑ってくるくると腰の戦斧を回して見せたアウデリアであった。
結論から言うと、三人が落ち着けるにはまだまだ時間が必要だった。
街の、ギルド「紫檀亭」でアウデリアが受付をしているまさに、その最中にギルドの扉が開き、守備兵と思われるボロボロになった制服の男が駆け込んできたのだ。
「誰か手を貸してくれっ!」
男は叫んだ。
「殴り込みだ。女連れのジジイだが、連れてる奴らがめっぽう腕がたちやがる。」
守備兵、というより、賭場でも荒らされた闇社会の連中の口調だな、とクローディアは呆れたが、アウデリアはにんまりと笑って、胸を叩いた。
「ようし、この『アウデリア姉さんと愉快な仲間たち』が、なんとかしよう。案内しろ。」
ふざけたパーティ名以外は、クローディアも賛成だった。
ギルドを通しての依頼ならは、一冒険者として少々暴れてもクレームはつかない。
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