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第5部 ギウリーク動乱篇~ミトラへの道
第228話 新生!踊る道化師
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「もう少し具体的にいいかな。」
とんでもないことを言われたにもかかわらず、彼はもの静かで、視線はまるで穏やかな春の日差しを思わせる。
「今でさえ、“踊る道化師”はまとまった動きがとれてない。」
「そうかな?」
「違う? 実際に『魔王』と『神竜』は、ほとんど学校にこもったままじゃない?」
「あのふたりは力が大きすぎるから・・・」
言いながら、ルトくんは考え込んだ。
「・・・そうだ。たしかに、思ったように動けてないな。」
「少なくとも、ルトくんが愛する婚約者と自由に世界を冒険したまわるためのパーティというコンセプトからは著しく逸脱してしまっているのだよっ!
ギムリウスにしてもどうだろう。」
自分の名前がでたためか、ギムリウスは、巣から顔を出して、逆しまにわたしを覗き込んだ。中性的だが、かわいらしい顔。それだけに、ぞっとするような眺めだったが、わたしはびくともしない。邪神なので。
「もともと、ギムリウスは、その『本体』の巨躯と、無数の蜘蛛型兵器を製造、召喚して戦う地域制圧用の兵器としてうまれたんだと思う。」
「そうだよ。」
ギムリウスが肯定した。
「冒険者パーティの任務で、一国、または一部の地方をまるごと制圧しろなんて依頼があると思います?」
ルトは、首をひねった。
「きいたことがない。」
「でしょう? ギムリウスがその力を発揮できる場所は極めて限られるのだ。くわえて、好奇心旺盛で、行動力があり、常識はずれときてる。」
「たしかに、ヒトガタのままでは、ギムリウスの戦闘力は万分の1も発揮できていない。かといって、本体や蜘蛛軍団は通常の冒険者としての依頼には使いにくい。」
「正直、それでも充分だと思っていたんでしょ? ルトくんは。」
ルトくんは嫌そうに頷いた。
「でも世界は広い。各国が抱えている精鋭戦力ならば、全力を出しきれない状態では不覚をとることだってありうる。
現に、ギムリウスとあなたの婚約者は、『絶士』と引き分けている。」
「現状の分析としては正しいと思う。」
ルトくんは言った。
「で。
どうすればいい?」
「“踊る道化師”を単独のパーティではなくて、もう少し大きなクランのような塊と、捉えたらどうだろう。」
私欲むき出しの提案だった。
「ならば、6人目を誰にするかなんて悩む必要はない。
相手の規模、依頼の難度に、あるいは向き不向きでいくらでもパーティを組んでやれる。
具体例としては、クリュークが率いた“燭乱天使”が参考になるんじゃないかな。」
「よく、知ってるな。ぼくらが、クリュークとやりあったときには、まだこの世界にはいなかったのに!」
「クリュークはアキルさまの12使徒のひとりだから。」
ミランが口を挟んだ。
「しかも祭司長を飛ばして、アキルさまと直接交信ができたから。」
ルトくんは、困ったように頭を抱えた。
心配そうにギムリウスが手を伸ばしてその頭を撫でた。
ギムリウスは入院してたときに着せられていた白い貫頭衣が気に入ったらしく、そのまま着ていた。
施術がしやすいように、まえとうしろはかんたんなボタンで留まっているだけで、前がはだけて白い肌だ胸元まで見えていた。
「ドロシーっ!
アキルの提案をどう思う?」
「じ、じゃしんのていあんをわたしにはんだんしろと・・・」
「ぼくは、自分がこうしたいって欲が入りすぎてる。まともに判断が出来そうもないんだ。」
「確かに、まともは判断ができる以外には特に取り柄もないのがルトでしたからねえ・・・」
かなり、ひどいことを言いながら、ドロシーさんは、のろのろと顔を上げた。
「アキルの判断で正しいと思います。踊る道化師、はメンバーを六名に固定せずに依頼ごとにパーティを組み替えるべき、です。
このことで、他の精鋭メンバーを味方として取り込むことが出来ます。」
「例えば?」
「例えばアキル。例えばミラン。例えばジウル。例えば、ネイア先生。例えばたとえば絶士グルジエン。」
「例えばドロシー?」
ドロシーさんは胸を抑えた。
「鼓動が早くなってます。」
ルトを見つめる瞳は力強い。
「わたしも“道化師”に加えてくれますか? ルト。」
「わたしもそのほうがいいと思う。」
後ろのシートからフィオリナが声をかけてきた。さすがは残念姫。聞いてないふりして聞いてたか。
「面白そうじゃのう。」
オルガっちは、シートの背もたれから手だけ出してこちらに振って見せた。
「わらわも参加したいのじゃが?」
「銀灰皇国の刺客つきで?」
「そっちはなんとかするわっ!」
「なら、ラウレスはどうする?」
通路をはさんだ隣のシートでは、酔っ払ったラウレスが「黒竜望郷歌」を口ずさんでいた。
自分のことを揶揄して作られた歌なのがわかってるのかな。
「ランゴバルトに帰ったら、アモンに相談してみよう。」
と、ルトは意外にも即座に否定はせずにそう言った。
「たぶん、五十年くらい魔王宮で鍛え直してから、ということになると思うけど。」
「その間、ラウレスのお料理が食べられなくなるの?
じゃあ絶対だめ!」
とんでもないことを言われたにもかかわらず、彼はもの静かで、視線はまるで穏やかな春の日差しを思わせる。
「今でさえ、“踊る道化師”はまとまった動きがとれてない。」
「そうかな?」
「違う? 実際に『魔王』と『神竜』は、ほとんど学校にこもったままじゃない?」
「あのふたりは力が大きすぎるから・・・」
言いながら、ルトくんは考え込んだ。
「・・・そうだ。たしかに、思ったように動けてないな。」
「少なくとも、ルトくんが愛する婚約者と自由に世界を冒険したまわるためのパーティというコンセプトからは著しく逸脱してしまっているのだよっ!
ギムリウスにしてもどうだろう。」
自分の名前がでたためか、ギムリウスは、巣から顔を出して、逆しまにわたしを覗き込んだ。中性的だが、かわいらしい顔。それだけに、ぞっとするような眺めだったが、わたしはびくともしない。邪神なので。
「もともと、ギムリウスは、その『本体』の巨躯と、無数の蜘蛛型兵器を製造、召喚して戦う地域制圧用の兵器としてうまれたんだと思う。」
「そうだよ。」
ギムリウスが肯定した。
「冒険者パーティの任務で、一国、または一部の地方をまるごと制圧しろなんて依頼があると思います?」
ルトは、首をひねった。
「きいたことがない。」
「でしょう? ギムリウスがその力を発揮できる場所は極めて限られるのだ。くわえて、好奇心旺盛で、行動力があり、常識はずれときてる。」
「たしかに、ヒトガタのままでは、ギムリウスの戦闘力は万分の1も発揮できていない。かといって、本体や蜘蛛軍団は通常の冒険者としての依頼には使いにくい。」
「正直、それでも充分だと思っていたんでしょ? ルトくんは。」
ルトくんは嫌そうに頷いた。
「でも世界は広い。各国が抱えている精鋭戦力ならば、全力を出しきれない状態では不覚をとることだってありうる。
現に、ギムリウスとあなたの婚約者は、『絶士』と引き分けている。」
「現状の分析としては正しいと思う。」
ルトくんは言った。
「で。
どうすればいい?」
「“踊る道化師”を単独のパーティではなくて、もう少し大きなクランのような塊と、捉えたらどうだろう。」
私欲むき出しの提案だった。
「ならば、6人目を誰にするかなんて悩む必要はない。
相手の規模、依頼の難度に、あるいは向き不向きでいくらでもパーティを組んでやれる。
具体例としては、クリュークが率いた“燭乱天使”が参考になるんじゃないかな。」
「よく、知ってるな。ぼくらが、クリュークとやりあったときには、まだこの世界にはいなかったのに!」
「クリュークはアキルさまの12使徒のひとりだから。」
ミランが口を挟んだ。
「しかも祭司長を飛ばして、アキルさまと直接交信ができたから。」
ルトくんは、困ったように頭を抱えた。
心配そうにギムリウスが手を伸ばしてその頭を撫でた。
ギムリウスは入院してたときに着せられていた白い貫頭衣が気に入ったらしく、そのまま着ていた。
施術がしやすいように、まえとうしろはかんたんなボタンで留まっているだけで、前がはだけて白い肌だ胸元まで見えていた。
「ドロシーっ!
アキルの提案をどう思う?」
「じ、じゃしんのていあんをわたしにはんだんしろと・・・」
「ぼくは、自分がこうしたいって欲が入りすぎてる。まともに判断が出来そうもないんだ。」
「確かに、まともは判断ができる以外には特に取り柄もないのがルトでしたからねえ・・・」
かなり、ひどいことを言いながら、ドロシーさんは、のろのろと顔を上げた。
「アキルの判断で正しいと思います。踊る道化師、はメンバーを六名に固定せずに依頼ごとにパーティを組み替えるべき、です。
このことで、他の精鋭メンバーを味方として取り込むことが出来ます。」
「例えば?」
「例えばアキル。例えばミラン。例えばジウル。例えば、ネイア先生。例えばたとえば絶士グルジエン。」
「例えばドロシー?」
ドロシーさんは胸を抑えた。
「鼓動が早くなってます。」
ルトを見つめる瞳は力強い。
「わたしも“道化師”に加えてくれますか? ルト。」
「わたしもそのほうがいいと思う。」
後ろのシートからフィオリナが声をかけてきた。さすがは残念姫。聞いてないふりして聞いてたか。
「面白そうじゃのう。」
オルガっちは、シートの背もたれから手だけ出してこちらに振って見せた。
「わらわも参加したいのじゃが?」
「銀灰皇国の刺客つきで?」
「そっちはなんとかするわっ!」
「なら、ラウレスはどうする?」
通路をはさんだ隣のシートでは、酔っ払ったラウレスが「黒竜望郷歌」を口ずさんでいた。
自分のことを揶揄して作られた歌なのがわかってるのかな。
「ランゴバルトに帰ったら、アモンに相談してみよう。」
と、ルトは意外にも即座に否定はせずにそう言った。
「たぶん、五十年くらい魔王宮で鍛え直してから、ということになると思うけど。」
「その間、ラウレスのお料理が食べられなくなるの?
じゃあ絶対だめ!」
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