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第6部 聖帝国ギウリークの終わりの始まり
第250話 新たなる仲間
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グルジエンの話を聞き終わると、クローディアはしばし考え込むような表情を浮かべた。
なるほど、鉄道公社保安部の判断は、銀灰皇国が『悪夢』を派遣したのは、オルガ姫を抹殺、または拉致する目的ではなく、彼女の対立する派閥から、彼女を守るためである、と。
ふむ。
わたしたちを、オールべでの災難から救出してくれた一行には確かに、黒い瞳と黒い髪の女性はおりました。
クローディアは真面目な顔で言った。
ああ、これは「外交用の仮面」というやつだ、とアウデリアは横で思った。
「ですが、わたしたちは彼女を異世界人のアキルとして知っています。
銀灰皇国のオルガ姫という人物は知りませんな。」
「ならそのアキルのことでかまいません。彼女がいま、ミトラに陛下とご一緒に滞在していることを、オールべにいる銀灰皇国の『悪夢』に教えても構わないでしょうか?」
アイザックが、とっているのは、あくまで平民が貴族に対するときの礼だ。
身を低く、視線は落としクローディアを直視することを避ける。
クローディアとしては、これはやりにくかった。
相手はそもそも一国の軍に匹敵する大部隊の指揮官だ。その権力の集中、動員速度の速さは国家をも凌ぐかもしれない。
「許可いたしましょう。
あくまでそのアキルなる少女が、オルガ姫だったら・・・ということですが。
一緒に必ずお伝えおただきたい件が三つあります。
ひとつは、我々、クローディア公国は、アキルを保護する立場にある、ということです。
もし、銀灰皇国がアキル嬢を害するようなら、クローディア公国を敵とする覚悟がいる、ということ。
もうひとつ、今、彼女はランゴバルト冒険者学校に在籍しています。ランゴバルトも彼女に対してはこれを保護する立場にあります。
最後のひとつは、彼女はいま、『踊る道化師』という冒険者パーティに所属しております。
アキルを害するものは、『踊る道化師』も敵に回すことになります。」
「失礼ながら」
このとき、アイザックははじめて顔を上げて、クローディアを見た。
「先のふたつは国家そのもの。三つ目は一冒険者パーティですがその三つは併記されるものなのでしょうか?」
「もちろんです。」
クローディアは頷いた。
「ことによると三つ目が一番危ないですな。」
「四つめとしては」
と、グルジエンが言い始めたので、
アイザックもクローディアも見かけだけは典雅なメイド服の美女を見やった。
「踊る道化師が敵にまわるならば、わたしも敵になることも、銀灰の悪夢には言っておかないと!」
「なんで、おまえが」
と、口には出さなかったが、アイザックもクローディアもアウデリアも思いは一緒だったろう。
「わたしは、フィオリナのメイドだからね!」
自分主をファーストネームで呼び捨てにする暴挙をなしとげながら、グルジエンは宣言した。
「わたしの刃は、灰冥宮まで届くし、槍は異なる世界でも貫く。」
「グルジエンにはしばらく暇を出しました。」
アイザックは、ため息をついて言った。
「先ほど、焼くなり煮るなりお好きにと言ったのはこういう意味です。
フィオリナ姫にお仕えすることをお許しいただきたいのですが、いかがでしょうか。」
「おーい、黒の傭兵!」
頭上から呼ばれてガレリアは、天井を見上げた。
ロウ=リンドとアキルやドロシーに呼ばれている吸血鬼は、天井から逆さにぶら下がっている。
「かなりの高位の吸血鬼だな。」
黒い瞳が輝いている。
「真祖、だよ。」
くるり、と一回転して、吸血鬼は、彼女の前に降り立った。
「アキルのパーティのメンバーだと聞いている。」
ガレリアは笑った。
「神獣ギムリウスに真祖吸血鬼がいるパーティっていったいなんだ?」
「『踊る道化師』という。ランゴバルトの銀級パーティだ。出来たばかりだからたいした実績はない。
あんたが、ジウルやアキルたちと旅をしていた冒険者のガレリアか?」
「まあ、闇姫とでもオルガとでも、お好きなように呼ぶがよいぞ。」
ガレリアことオルガはそう言って肩をすくめた。
「わらわの正体を知ってしまったことで、周りに迷惑がかかってはいけないから、偽名を名乗ってみただけのことよ。
真祖を名乗る吸血鬼には迷惑もなにもなかろ?」
オルガは。
デスサイズの刃を開いた。高位貴族の屋敷とはいえ、屋内で振り回すには大きすぎる得物だったが、そんなことは気にも止めていない。
「まあまあ」
と、宥めるようにロウは1歩後ろに下がった。
その空隙を、鎌の一撃が走り抜ける。
「怖いなあ。」
「闇姫、じゃからのう。」
油断なく、デスサイズを構えはしたものの、オルガは追撃を行わずに、美貌の吸血鬼の様子を伺った。
「きみの身の振り方についていくつか提案をしに来たんだよ。」
「行き先が天国か地獄かの選択かのう?」
「当然、今世での選択だ。
銀灰皇国がきみを後継者としてたてるには、まだまだ時間が必要だ。
その間、皇太子やら皇女からの刺客からたったひとりで逃げ続けるのは難しいし、あまり楽しくないだろう。」
「楽しくないか!」
闇姫はつぶやく。
「楽しいかどうかなど、考えたこともないのう。」
そう言って笑った。
「聞くだけは聞いてやろうか。」
「まず、わたしに噛まれて吸血鬼になる。」
「却下じゃ。」
闇姫は即座に断った。
「いまさら、誰ぞの手下になって生き延びようとは思わん。それにお主の配下になったところで、追手は来る。」
「そして、魔王宮の階層主を100年ばかりやってもらう。」
「・・・・」
「さすがに、魔力過多で、並の人間からみれば多少長寿だったとしても、100年を迷宮で過ごすのは、かわいそうなので、吸血鬼にしてしまおうか、と。一層と三層だったらどっちがいいかな?」
「ほかにはなにかないのだろうかの?」
「ある!」
柱の影から現れたのはアキルだった。
「わたしたち、“踊る道化師”のパーティメンバーになること!」
なるほど、鉄道公社保安部の判断は、銀灰皇国が『悪夢』を派遣したのは、オルガ姫を抹殺、または拉致する目的ではなく、彼女の対立する派閥から、彼女を守るためである、と。
ふむ。
わたしたちを、オールべでの災難から救出してくれた一行には確かに、黒い瞳と黒い髪の女性はおりました。
クローディアは真面目な顔で言った。
ああ、これは「外交用の仮面」というやつだ、とアウデリアは横で思った。
「ですが、わたしたちは彼女を異世界人のアキルとして知っています。
銀灰皇国のオルガ姫という人物は知りませんな。」
「ならそのアキルのことでかまいません。彼女がいま、ミトラに陛下とご一緒に滞在していることを、オールべにいる銀灰皇国の『悪夢』に教えても構わないでしょうか?」
アイザックが、とっているのは、あくまで平民が貴族に対するときの礼だ。
身を低く、視線は落としクローディアを直視することを避ける。
クローディアとしては、これはやりにくかった。
相手はそもそも一国の軍に匹敵する大部隊の指揮官だ。その権力の集中、動員速度の速さは国家をも凌ぐかもしれない。
「許可いたしましょう。
あくまでそのアキルなる少女が、オルガ姫だったら・・・ということですが。
一緒に必ずお伝えおただきたい件が三つあります。
ひとつは、我々、クローディア公国は、アキルを保護する立場にある、ということです。
もし、銀灰皇国がアキル嬢を害するようなら、クローディア公国を敵とする覚悟がいる、ということ。
もうひとつ、今、彼女はランゴバルト冒険者学校に在籍しています。ランゴバルトも彼女に対してはこれを保護する立場にあります。
最後のひとつは、彼女はいま、『踊る道化師』という冒険者パーティに所属しております。
アキルを害するものは、『踊る道化師』も敵に回すことになります。」
「失礼ながら」
このとき、アイザックははじめて顔を上げて、クローディアを見た。
「先のふたつは国家そのもの。三つ目は一冒険者パーティですがその三つは併記されるものなのでしょうか?」
「もちろんです。」
クローディアは頷いた。
「ことによると三つ目が一番危ないですな。」
「四つめとしては」
と、グルジエンが言い始めたので、
アイザックもクローディアも見かけだけは典雅なメイド服の美女を見やった。
「踊る道化師が敵にまわるならば、わたしも敵になることも、銀灰の悪夢には言っておかないと!」
「なんで、おまえが」
と、口には出さなかったが、アイザックもクローディアもアウデリアも思いは一緒だったろう。
「わたしは、フィオリナのメイドだからね!」
自分主をファーストネームで呼び捨てにする暴挙をなしとげながら、グルジエンは宣言した。
「わたしの刃は、灰冥宮まで届くし、槍は異なる世界でも貫く。」
「グルジエンにはしばらく暇を出しました。」
アイザックは、ため息をついて言った。
「先ほど、焼くなり煮るなりお好きにと言ったのはこういう意味です。
フィオリナ姫にお仕えすることをお許しいただきたいのですが、いかがでしょうか。」
「おーい、黒の傭兵!」
頭上から呼ばれてガレリアは、天井を見上げた。
ロウ=リンドとアキルやドロシーに呼ばれている吸血鬼は、天井から逆さにぶら下がっている。
「かなりの高位の吸血鬼だな。」
黒い瞳が輝いている。
「真祖、だよ。」
くるり、と一回転して、吸血鬼は、彼女の前に降り立った。
「アキルのパーティのメンバーだと聞いている。」
ガレリアは笑った。
「神獣ギムリウスに真祖吸血鬼がいるパーティっていったいなんだ?」
「『踊る道化師』という。ランゴバルトの銀級パーティだ。出来たばかりだからたいした実績はない。
あんたが、ジウルやアキルたちと旅をしていた冒険者のガレリアか?」
「まあ、闇姫とでもオルガとでも、お好きなように呼ぶがよいぞ。」
ガレリアことオルガはそう言って肩をすくめた。
「わらわの正体を知ってしまったことで、周りに迷惑がかかってはいけないから、偽名を名乗ってみただけのことよ。
真祖を名乗る吸血鬼には迷惑もなにもなかろ?」
オルガは。
デスサイズの刃を開いた。高位貴族の屋敷とはいえ、屋内で振り回すには大きすぎる得物だったが、そんなことは気にも止めていない。
「まあまあ」
と、宥めるようにロウは1歩後ろに下がった。
その空隙を、鎌の一撃が走り抜ける。
「怖いなあ。」
「闇姫、じゃからのう。」
油断なく、デスサイズを構えはしたものの、オルガは追撃を行わずに、美貌の吸血鬼の様子を伺った。
「きみの身の振り方についていくつか提案をしに来たんだよ。」
「行き先が天国か地獄かの選択かのう?」
「当然、今世での選択だ。
銀灰皇国がきみを後継者としてたてるには、まだまだ時間が必要だ。
その間、皇太子やら皇女からの刺客からたったひとりで逃げ続けるのは難しいし、あまり楽しくないだろう。」
「楽しくないか!」
闇姫はつぶやく。
「楽しいかどうかなど、考えたこともないのう。」
そう言って笑った。
「聞くだけは聞いてやろうか。」
「まず、わたしに噛まれて吸血鬼になる。」
「却下じゃ。」
闇姫は即座に断った。
「いまさら、誰ぞの手下になって生き延びようとは思わん。それにお主の配下になったところで、追手は来る。」
「そして、魔王宮の階層主を100年ばかりやってもらう。」
「・・・・」
「さすがに、魔力過多で、並の人間からみれば多少長寿だったとしても、100年を迷宮で過ごすのは、かわいそうなので、吸血鬼にしてしまおうか、と。一層と三層だったらどっちがいいかな?」
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「ある!」
柱の影から現れたのはアキルだった。
「わたしたち、“踊る道化師”のパーティメンバーになること!」
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