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第6部 聖帝国ギウリークの終わりの始まり
第293話 大公姫と駆け出し冒険者の結婚
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一度寝ついたら、殺気以外ではめったに起きぬアウデリアも、クローディア大公陛下とフィオリナのただならぬ様子に、起き出してきた。
「なにがなんだか、よくわからん。」
なにがあったのか、きいたアウデリアに対するクローディアの答えがそれだった。
気持ちよく寝ていたところを叩き起こされた形になったアウデリアの機嫌はよくは、ない。
とりあえず、あったことを順番に話してみろ、とアウデリアが言ったので、フィオリナは、パーティがはけてからあったことをできるだけ、時系列で話した。
まずは、ホテルのギムリウスの部屋で開かれたお泊まり会の話しになったので、これはアウデリアにとってはかなり苦痛だった。
フィオリナの記憶力は、たいしたもので、細かい会話もかなり正確に覚えていて、逐一報告したので、アウデリアは酒を取りに行くかどうか迷ったが、フィオリナの様子があまりにも尋常ではないため、我慢してきいた。
その会話のなにかに、その後におこった急展開のヒントになるものがあるかもしれないから。
(見た目は)同年代の少女たちの話は、それなりに盛り上がり、楽しく、有意義ではあったが、そのうちにカテリアが緊張の反動からか、うとうとし始めた。
ふざけた話だが、ロウ=リンドが「そろそろ寝よっか?」と言い出したのをきっかけに、彼女たちも休むことにしたのだ。
(あらためて言うほどのことでもないが、ロウは睡眠を必要としない吸血鬼である。)
ベッドルームの数の問題もあったし、フィオリナはもう少し話もしたかったので、アキルとオルガを隣の自分の部屋に誘ったのだ。
そこへ、ルトが帰ってきたのだという。
「アキルは、反対だっていう。」
フィオリナは涙ぐんでいるようにさえ見えた。
「もし、そんなことになるなら、呪ってやるって言われた。」
「そこもよくわからんのだ。」
クローディアが口をはさんだ。
「アキル嬢は、異世界人で勇者だろう? なぜ、その彼女が呪いをかける?
いや、なにかで恨みをかっているにせよ、それほど問題になるまい。」
「アキルは、邪神ヴァルゴールの現身なのだよ、我が君。」
アウデリアが難しい顔をして言った。
「必ずしも世界に害をおよぼす意思はないので、放置しておいたが・・・もともと、この世にあらざるもの、消滅されるべきなのだろうか。」
いろいろ、言いたいことが山ほどあったが、クローディアはすべて飲みこんで頷いた。
ここらが、彼の大物たる所以である。そうでなければ、「この世にあらざるもの」アウデリアを妻とし、「この世をぶちこわすもの」フィオリナを娘にもてない。
「で、アキル殿はなんと。」
「自分でないと危険だっていうの。」
邪神の現身でないと危険?
クローディアはまったくわからなかった。
アウデリアもいつもとは違って、即断はしなかった。
うむむ、とかぐるる、とかとにかく唸っているさまは、人間というより大型の肉食獣を思わせた。
「いや、一度、基本にたちかえろう。」
話がさっぱりすすまないので、クローディアはそう切り出した。
「問題点はどこにあるのだ?」
「だって!」
フィオリナは叫んだ。
「ルトが、ルトが!
ルトが、わたしに結婚しようって言ったのよ!?」
「おまえたちは婚約者同士で」
クローディアは事実を確認するように、ゆっくりと言った。
「婚約してからもう5年になるな。お互いのこともよくわかっている。
確かに結婚するには、早い年齢ではある。だが、ふたりとも成人しているし、銀級冒険者にもなった。
経済的にもなにも問題はない。反対する家族もいない。いったい何が問題なのだ?」
「だって、ルトがそんなまともなことを言うなんてっ!」
クローディアはため息をついた。
確かに問題はそこなのだ。
「確かに、あの婿殿がそんなあたりまえのことを言うなどと、信じられん。」
「だめだだめだだめだだめだだめだだめだ・・・・」
アキルのつぶやきは、もはや呪いの言葉にも似ている。
新しく出来たばかりの初めての親友は、妹のようでもあり、姉のようでもあり。言う事ヤること、いちいち新鮮なのにどこかで会ったような懐かしさを感じる。
オルガは、呆れたようにアキルに話しかけた。
「なぜ、だめなのか、わらわに話してみよ。定命の人間にもわかる言葉でな。」
「わたしも定命の人間なんだけど。」
「本気で言ってるのか?」
オルガは、アキルの頭をポンポンと叩いた。オルガと同じつややかな黒髪が揺れる。
「あの二人は、婚約者同士なのだろう? あの異常性も含めてお似合いのカップルじゃろう?
いずれは結婚するだろう。それが、予想より何年か早まった。なにが問題だ。
正直に言うと、わらわもあの坊やには興味がある。あの精はほしいぞ。きっと優秀な跡継ぎが生まれるじゃろう。」
「危ないのよ。ルトくんとフィオリナの子は。」
アキルは、叫んだ。
「わたしにもなにが産まれてくるか見えないのよ!」
そのまましばらく、下をむいて荒い息を整えてからアキルは、顔をあげた。
「本当をいえば、フィオリナ以外の女とだって、危険きわまりないの。
ただ、もし、ルトくんが望むならわたしだったらね。わたしなら。」
「お主ならば」
「わたしなら『運命』も操れるから。」
浮かべた笑みは年相応の少女のものだった。わずかに顔を赤らめて。
だが、こんなときに浮かべる表情ではない。
オルガは背筋に冷たいものが走るのを感じた。
「なにがなんだか、よくわからん。」
なにがあったのか、きいたアウデリアに対するクローディアの答えがそれだった。
気持ちよく寝ていたところを叩き起こされた形になったアウデリアの機嫌はよくは、ない。
とりあえず、あったことを順番に話してみろ、とアウデリアが言ったので、フィオリナは、パーティがはけてからあったことをできるだけ、時系列で話した。
まずは、ホテルのギムリウスの部屋で開かれたお泊まり会の話しになったので、これはアウデリアにとってはかなり苦痛だった。
フィオリナの記憶力は、たいしたもので、細かい会話もかなり正確に覚えていて、逐一報告したので、アウデリアは酒を取りに行くかどうか迷ったが、フィオリナの様子があまりにも尋常ではないため、我慢してきいた。
その会話のなにかに、その後におこった急展開のヒントになるものがあるかもしれないから。
(見た目は)同年代の少女たちの話は、それなりに盛り上がり、楽しく、有意義ではあったが、そのうちにカテリアが緊張の反動からか、うとうとし始めた。
ふざけた話だが、ロウ=リンドが「そろそろ寝よっか?」と言い出したのをきっかけに、彼女たちも休むことにしたのだ。
(あらためて言うほどのことでもないが、ロウは睡眠を必要としない吸血鬼である。)
ベッドルームの数の問題もあったし、フィオリナはもう少し話もしたかったので、アキルとオルガを隣の自分の部屋に誘ったのだ。
そこへ、ルトが帰ってきたのだという。
「アキルは、反対だっていう。」
フィオリナは涙ぐんでいるようにさえ見えた。
「もし、そんなことになるなら、呪ってやるって言われた。」
「そこもよくわからんのだ。」
クローディアが口をはさんだ。
「アキル嬢は、異世界人で勇者だろう? なぜ、その彼女が呪いをかける?
いや、なにかで恨みをかっているにせよ、それほど問題になるまい。」
「アキルは、邪神ヴァルゴールの現身なのだよ、我が君。」
アウデリアが難しい顔をして言った。
「必ずしも世界に害をおよぼす意思はないので、放置しておいたが・・・もともと、この世にあらざるもの、消滅されるべきなのだろうか。」
いろいろ、言いたいことが山ほどあったが、クローディアはすべて飲みこんで頷いた。
ここらが、彼の大物たる所以である。そうでなければ、「この世にあらざるもの」アウデリアを妻とし、「この世をぶちこわすもの」フィオリナを娘にもてない。
「で、アキル殿はなんと。」
「自分でないと危険だっていうの。」
邪神の現身でないと危険?
クローディアはまったくわからなかった。
アウデリアもいつもとは違って、即断はしなかった。
うむむ、とかぐるる、とかとにかく唸っているさまは、人間というより大型の肉食獣を思わせた。
「いや、一度、基本にたちかえろう。」
話がさっぱりすすまないので、クローディアはそう切り出した。
「問題点はどこにあるのだ?」
「だって!」
フィオリナは叫んだ。
「ルトが、ルトが!
ルトが、わたしに結婚しようって言ったのよ!?」
「おまえたちは婚約者同士で」
クローディアは事実を確認するように、ゆっくりと言った。
「婚約してからもう5年になるな。お互いのこともよくわかっている。
確かに結婚するには、早い年齢ではある。だが、ふたりとも成人しているし、銀級冒険者にもなった。
経済的にもなにも問題はない。反対する家族もいない。いったい何が問題なのだ?」
「だって、ルトがそんなまともなことを言うなんてっ!」
クローディアはため息をついた。
確かに問題はそこなのだ。
「確かに、あの婿殿がそんなあたりまえのことを言うなどと、信じられん。」
「だめだだめだだめだだめだだめだだめだ・・・・」
アキルのつぶやきは、もはや呪いの言葉にも似ている。
新しく出来たばかりの初めての親友は、妹のようでもあり、姉のようでもあり。言う事ヤること、いちいち新鮮なのにどこかで会ったような懐かしさを感じる。
オルガは、呆れたようにアキルに話しかけた。
「なぜ、だめなのか、わらわに話してみよ。定命の人間にもわかる言葉でな。」
「わたしも定命の人間なんだけど。」
「本気で言ってるのか?」
オルガは、アキルの頭をポンポンと叩いた。オルガと同じつややかな黒髪が揺れる。
「あの二人は、婚約者同士なのだろう? あの異常性も含めてお似合いのカップルじゃろう?
いずれは結婚するだろう。それが、予想より何年か早まった。なにが問題だ。
正直に言うと、わらわもあの坊やには興味がある。あの精はほしいぞ。きっと優秀な跡継ぎが生まれるじゃろう。」
「危ないのよ。ルトくんとフィオリナの子は。」
アキルは、叫んだ。
「わたしにもなにが産まれてくるか見えないのよ!」
そのまましばらく、下をむいて荒い息を整えてからアキルは、顔をあげた。
「本当をいえば、フィオリナ以外の女とだって、危険きわまりないの。
ただ、もし、ルトくんが望むならわたしだったらね。わたしなら。」
「お主ならば」
「わたしなら『運命』も操れるから。」
浮かべた笑みは年相応の少女のものだった。わずかに顔を赤らめて。
だが、こんなときに浮かべる表情ではない。
オルガは背筋に冷たいものが走るのを感じた。
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