あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己

文字の大きさ
314 / 574
第6部 聖帝国ギウリークの終わりの始まり

第294話 駆け出し冒険者はマリッジブルー

しおりを挟む
単純に喜んだのは、魔王宮組の面々だった。

リウは、ほうっと目を丸くしていたが、納得したように頷いて、おまえがそう決めたのなら、それが正しい、と言った。

アモンは、竜らしく、結婚を子を作り育てるためのつがいの契約を取り交わす(もちろんそのあとは普通に別々の人生を歩む)物だと解釈し、このタイミングでなくてもいいのになあ、と思ったが、これはパートナー(性別も自由に変える古竜にはこれ以外に適切な言葉はなかった!)どうしの個人的な事情もあるはずなので、そこまでは踏み込まず、おめでとう、とだけ言った。

ロウ=リンドは、どっちがドレスを着るんだ、と真面目に尋ねた。
ルトが答えに窮していると、お前らならどっちも似合うぞ、どうだお色直しのときに服をチャンじしてみたら、と揶揄った。

ギムリウスは、人間の結婚自体に興味があるらしく、目を輝かせていた。これは比喩的な表現ではなく、実際にギムリウスの瞳は七つに分かれて、例の怪光線を発するときのように怪しい光を蓄え始めていた。

「やはり、最小限、身内には参加させるべきだろう。」
リウは、腕組みをして考えた。
「オレとアモンは、ギムリウスと一度、ランゴバルドに戻る。魔王宮の階層主たちにも声をかけるぞ。かまわんな?
あと、ウイルニアには当日の朝まで内緒にしていい。」

リウは相変わらず、野生味のある美女の姿のままだったが、口調は男性のそれになっている。

「クローディア公とアウデリアはミトラにいるからちょうどいいとして・・・お主の父親はどうする? まあ、それを呼ぶと自動的に我が母もついてきてしまうのだが。」

我が母、はいうまでもなく、王太后メアこと闇森のザザリのことであった。

「ルールス先生は、どうする? 呼ばないと後あと僻みそうだ。そうするとネイア先生もついてくるな、いやあ、内輪で済まそうとしてもそれなりの人数にはなるぞ。
フィオリナは、ミュラも呼びたがるかな?
ミュラ自身は来たがるだろが、そうするとウエディングを着て、フィオリナの隣りに立つのが誰かでまた、ひと悶着あるな。」
いろいろと起こりそうなトラブルこみでリウは楽しそうだった。

そこまで話して、リウはさすがに、愛するルトの顔色が冴えないのに気がついた。
「どうした?
花婿がもうマリッジブルーか?」
「まだ、フィオリナにOKを貰ってないんだ。」
ルトは、泣きだきしそうな顔で、下を向いていた。
「結婚しようって、言ったら正気を疑われた。ぼくが本気だとわかると、血相をかえて飛び出していってしまった。
そのあと、アキルから散々罵られて。」

邪神ヴァルゴールから、直接罵られるという人類史上初の体験をした少年は、魂まで削られたようにしょげきっていた。
まあ、本当に神の叱責というものは、魂を削るのだか。

「アキルが言うには、ぼくとフィオリナの子供が産まれたら、どんな存在になるか見当もつかないって言うんだ。
そんな危険はしでかすべきではないから、もう何年か、アキルの」
と言いかけて
「いやヴァルゴールの運命の解析がすすむまで待てないのかって。
どうしても子作りがしてみたいのなら、自分とすればいいと言い出して」

「シュールな漫才でも見てる感じだな。」
ロウは楽しそうに口をはさんだ。
まあ、口調は楽しそうなのだが、婚約者に結婚式を挙げようと、言っただけで。正気を疑われた少年に若干同情はしている。

「まあ、さすがは邪神どのだ。この世界に存亡にそこまで気を使っていただけているとは。もう『邪神』も返上でいいんじゃないのか?」

「状況をあらためて説明するとこうだな。」
リウが真面目くさって、言った。
「結婚式はするがまだ花嫁が決まっていないと。」
うんうん、と勝手に納得しながら、リウは身体の曲線を見せつけるように、つま先立ちして、くるりと身体を回転させた。
「それなら、オレが花嫁として参列してもいいぞ。」
「なんでそうなる!?」

ルトは、叫んだが、ロウがにやにや笑いながら参加した。
「いや、わたしも別にルトの花嫁なら立候補したいな。人間と吸血鬼ならかなり種が離れているから、望まなければ子供がは出来んだろうし。」
あっ、そうだ、とロウはわざとらしく手をうった。
「アキルだって、花嫁の席に座りたいだろう。いやあ、羨ましい。邪神と魔王、真祖吸血鬼の花嫁候補か。
誰を選ぶ?」
「いや、だってフィオリナが」
「あれは、『壊すモノ』だよ、ルト。」
ロウはウインクしてみせた。
「ひとりスタンピード、クローディア大公国姫フィオリナ。考えようによっては、一番タチが悪いのだ。わからないで婚約者をやっていたとは言わないよね?」










しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...