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第7部 駆け出し冒険者と姫君
第297話 竜を統率するもの
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「まあ、フィオリナのことはおまえに任せる。」
リウは、魔王の笑いを浮かべて、そう言った。
「オレたちは、ギムリウスと一緒に、グランダに戻る。
冒険者学校のコアの様子も確認したいし、魔王党の様子も見てやらねばならんからな。」
「わたしも一緒に行くよ。」
アモンが愛想良く言った。
「グランダから連れてくるのは、まずは階層主たちだな。
後は、古竜どもも連れてこよう。あいつらを転移させるのは面倒だから、最寄り駅までは自分で飛ばせる。あとは人化して魔導列車を使えばいい。
ああ、しかし、それだと引率が必要になるか。
人間のほうで、出席させるのは、おまえの父親とエルマート、それにザザリか。
ルト、エルマートとザザリは自分で、切符を買ったことがあるのか?」
「どうかな。ザザリはもともと市場にお忍びで買い物に行くくらいが、唯一の趣味でほとんど外出しなかったし、エルマートは、」
すこし考えてから
「いや、なにしろグランダには、魔道列車が通ってないんだから。」
「誰か、常識のある文明人で、列車を使ってミトラまで竜どもを案内できる知り合いはいないのか、ルトよ。」
「常識人という意味では、例えば、ミュラとかヨウィスは十分常識人です。」
魔王宮に引き篭もりの古竜なんかに、に比べれば、とルトは言い添えた。
「でも竜を引率する時点で、常識人ではなくなるし、ミュラを招待する時点でもっと非常識になる。
それに、実際、知識としてはともかく、ラスティたちを引率するとなるとどうだろう。
なにしろ、鉄道を使うのが生まれてはじめてなんだから。」
「なるほど。では人間社会の常識にも精通した、わたし、このアモンが自ら竜どもを引率するとしようか。」
アモンは嬉しそうだが、ルトは嫌な顔をした。
「ここに来るときは切符は、ぼくが買ってるし、そもそも古竜さんたちの人化した姿を見たのは、ラスティしかいないんだけど。」
「あれは、人間の範疇では十分『愛らしい』で通るだろう? 何か問題があるか?」
「もう少し布の多いものを着ないと、捕まる。または連れていた大人が捕まる恐れがあります。」
ルトは、がっくりと項垂れた。
「正直、ぼくはフィオリナを探して、説得するだけで手一杯だ。そもそもなんで古竜さんたちまで全員集合しないといけないのかというと・・・」
「これは、人間の昔ながらの習わしなのだ。」
アモンは真面目に言った。
「結婚式のときに、上空を古竜が舞うのは最大の吉兆と、言われてきたのだ。
古竜と繋がりの深い、王家は必ずと言っていいほどその日、その時刻に上空を飛んだもらうために大枚の贈り物を用意したものだ。」
「聞いたことはありますけど、多分、500年くらい前までの習わしじゃありませんか?」
ルトは機嫌が悪い。
「そうだな。竜が舞ったくらいで何が変わるものでもない。なら竜が自ら式に、出席して祝福を与えたらどうだろう?」
「それはなんだか・・・・」
顔を顰めてルトは考え込んだ。
「確かにおめでたい気はしますね。料理もとんでもない量が必要でしょうが。」
「なあに、飯を食うだんになれば、人化させてしまえばいい。竜王のところの奴らにも話をつけけよう・・」
「それはいいんですが、ぼくは金欠ですよ?
その・・・・謝礼は?」
「奴らは、結婚式に出席させていただけるなんて、と歓喜に咽び泣くだろうぞ?」
いわゆるパワハラになっていなければいいが。
と、ルトは心配した。
古竜に祝福されるどころか、密かに恨みなどかいたくはなかったのだ。
「では、魔王宮の古竜さんたちを、引率する方法を考えましょう。」
この話題に早く蹴りをつけたいルトは、考え込んだ。
西域の文化、風習に詳しく、古竜を引率できる・・・・・
うん、あれだ。あれしかない。
「冒険者を雇いましょう!
グランダには、いま、西域の冒険者が山ほど押し掛けています。」
アモンとリウは、怪訝そうにルトを見た。
「いや、確かに、西域出身の冒険者なら駅の乗り降りもよくわかっているだろうが・・・
古竜は人のいうことなんか聞かんぞ?
試しの終わっているヨウィスや、ザザリならまだ知らず。」
「ザックさんですよ。」
ルトは言った。
「ぼくがお世話になったパーティ『フェンリルの咆哮』っていうパーティのリーダーです。」
「そいつらだと、普通のパーティとなにが違う」
言いかけてリウは、気がついた。
「そうか、“フェンリル”の咆哮だったな。」
「ぼくは、前にザックさんに掛けられたヴァルゴールの呪いを解いてあげたことがあるんです。
きっと、このくらい任務なら格安で引き受けてくれるでしょう?」
“それはそうだ。なんだったら、今度はルトに隷属させられてもしょうがないほどの恩だがな。”
と、魔王と神竜は思ったが、よいことに気がついた、と、やっと気分をよくしたこの少年に、誤りを指摘するのはやめにしておいた。
まったく、こいつは人がいいと言うか、なんというか。
「もし、断るようなら、アキルに頼んでもう一度、呪いをかけてやります。」
単純にひとがいい、わけでもないんだなあ、と2人は嘆息した。
「では、ぼくはフィオリナを探しに出かけます・。」
そう言ったところに、くにゃりと空間が歪んで、ギムリウスとロウが転移してきた。
「ルト!
ナーバスになった花嫁を探すのは、わたしも手伝おう!」
ロウ=リンドはそう言って、ルトに抱きついた。
ルドには見えない角度で、リウとアモンにウィンクした。
「オレとアモンは、もろもろの手配のために、グランダに、戻る。」
ロウに軽く頷きながら、リウは言った。
「ギムリウスは借りるぞ。」
リウは、魔王の笑いを浮かべて、そう言った。
「オレたちは、ギムリウスと一緒に、グランダに戻る。
冒険者学校のコアの様子も確認したいし、魔王党の様子も見てやらねばならんからな。」
「わたしも一緒に行くよ。」
アモンが愛想良く言った。
「グランダから連れてくるのは、まずは階層主たちだな。
後は、古竜どもも連れてこよう。あいつらを転移させるのは面倒だから、最寄り駅までは自分で飛ばせる。あとは人化して魔導列車を使えばいい。
ああ、しかし、それだと引率が必要になるか。
人間のほうで、出席させるのは、おまえの父親とエルマート、それにザザリか。
ルト、エルマートとザザリは自分で、切符を買ったことがあるのか?」
「どうかな。ザザリはもともと市場にお忍びで買い物に行くくらいが、唯一の趣味でほとんど外出しなかったし、エルマートは、」
すこし考えてから
「いや、なにしろグランダには、魔道列車が通ってないんだから。」
「誰か、常識のある文明人で、列車を使ってミトラまで竜どもを案内できる知り合いはいないのか、ルトよ。」
「常識人という意味では、例えば、ミュラとかヨウィスは十分常識人です。」
魔王宮に引き篭もりの古竜なんかに、に比べれば、とルトは言い添えた。
「でも竜を引率する時点で、常識人ではなくなるし、ミュラを招待する時点でもっと非常識になる。
それに、実際、知識としてはともかく、ラスティたちを引率するとなるとどうだろう。
なにしろ、鉄道を使うのが生まれてはじめてなんだから。」
「なるほど。では人間社会の常識にも精通した、わたし、このアモンが自ら竜どもを引率するとしようか。」
アモンは嬉しそうだが、ルトは嫌な顔をした。
「ここに来るときは切符は、ぼくが買ってるし、そもそも古竜さんたちの人化した姿を見たのは、ラスティしかいないんだけど。」
「あれは、人間の範疇では十分『愛らしい』で通るだろう? 何か問題があるか?」
「もう少し布の多いものを着ないと、捕まる。または連れていた大人が捕まる恐れがあります。」
ルトは、がっくりと項垂れた。
「正直、ぼくはフィオリナを探して、説得するだけで手一杯だ。そもそもなんで古竜さんたちまで全員集合しないといけないのかというと・・・」
「これは、人間の昔ながらの習わしなのだ。」
アモンは真面目に言った。
「結婚式のときに、上空を古竜が舞うのは最大の吉兆と、言われてきたのだ。
古竜と繋がりの深い、王家は必ずと言っていいほどその日、その時刻に上空を飛んだもらうために大枚の贈り物を用意したものだ。」
「聞いたことはありますけど、多分、500年くらい前までの習わしじゃありませんか?」
ルトは機嫌が悪い。
「そうだな。竜が舞ったくらいで何が変わるものでもない。なら竜が自ら式に、出席して祝福を与えたらどうだろう?」
「それはなんだか・・・・」
顔を顰めてルトは考え込んだ。
「確かにおめでたい気はしますね。料理もとんでもない量が必要でしょうが。」
「なあに、飯を食うだんになれば、人化させてしまえばいい。竜王のところの奴らにも話をつけけよう・・」
「それはいいんですが、ぼくは金欠ですよ?
その・・・・謝礼は?」
「奴らは、結婚式に出席させていただけるなんて、と歓喜に咽び泣くだろうぞ?」
いわゆるパワハラになっていなければいいが。
と、ルトは心配した。
古竜に祝福されるどころか、密かに恨みなどかいたくはなかったのだ。
「では、魔王宮の古竜さんたちを、引率する方法を考えましょう。」
この話題に早く蹴りをつけたいルトは、考え込んだ。
西域の文化、風習に詳しく、古竜を引率できる・・・・・
うん、あれだ。あれしかない。
「冒険者を雇いましょう!
グランダには、いま、西域の冒険者が山ほど押し掛けています。」
アモンとリウは、怪訝そうにルトを見た。
「いや、確かに、西域出身の冒険者なら駅の乗り降りもよくわかっているだろうが・・・
古竜は人のいうことなんか聞かんぞ?
試しの終わっているヨウィスや、ザザリならまだ知らず。」
「ザックさんですよ。」
ルトは言った。
「ぼくがお世話になったパーティ『フェンリルの咆哮』っていうパーティのリーダーです。」
「そいつらだと、普通のパーティとなにが違う」
言いかけてリウは、気がついた。
「そうか、“フェンリル”の咆哮だったな。」
「ぼくは、前にザックさんに掛けられたヴァルゴールの呪いを解いてあげたことがあるんです。
きっと、このくらい任務なら格安で引き受けてくれるでしょう?」
“それはそうだ。なんだったら、今度はルトに隷属させられてもしょうがないほどの恩だがな。”
と、魔王と神竜は思ったが、よいことに気がついた、と、やっと気分をよくしたこの少年に、誤りを指摘するのはやめにしておいた。
まったく、こいつは人がいいと言うか、なんというか。
「もし、断るようなら、アキルに頼んでもう一度、呪いをかけてやります。」
単純にひとがいい、わけでもないんだなあ、と2人は嘆息した。
「では、ぼくはフィオリナを探しに出かけます・。」
そう言ったところに、くにゃりと空間が歪んで、ギムリウスとロウが転移してきた。
「ルト!
ナーバスになった花嫁を探すのは、わたしも手伝おう!」
ロウ=リンドはそう言って、ルトに抱きついた。
ルドには見えない角度で、リウとアモンにウィンクした。
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ロウに軽く頷きながら、リウは言った。
「ギムリウスは借りるぞ。」
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