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第7部 駆け出し冒険者と姫君
第321話 邪神の陰謀
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「吊り橋効果って知ってる?」
と、わたしは言った。
グランダへ出張中の、ギムリウスとミランの部屋は、リビングに寝室が三つ。バスルームがついた豪華な者だった。
アライアス侯爵の用意してくれた部屋も悪くは、決してなかったが、もともとの暮らしの基準が
異世界なわたしには、トイレは水洗であってほしいし、スイッチ一つで明かりが灯ってほしいのだ。
「なんじゃ、それ?」
オルガっちがつまらなそうに聞いた。
「つまりだね、スリルのある吊り橋の上とかで愛を告白すると、スリルによるドキドキと告白によるドキドキを心がごっちゃに錯覚してしまって、仲良くなりやすいという法則だ。」
だいぶ、いい加減な説明に、しかしオルガは頷いてくれた。
「戦場で背中合わせに戦った後に、愛が芽生えるとかそういうやつじゃな。」
違うぞ、オルガっち!
「はい主上!」役に立たないわたしの使徒が、手を上げた。「それだと、敵に対しても恋心が芽生えてしまうのではないでしょうか?」
敵と味方が戦場で愛し合う世界、さすがは主上のいた世界はステキに狂っております。
うっとりと語るミランは、はっきり言って気持ち悪い。
わたしのいた世界が狂っていたとは、思いたくないが、数年後、怨霊と化したわたしに滅ぼされる世界だ。
まともな世界とも言いきれないなにかがあるのかもしれない。
「まあ、それはそれとして、」
とりあえず、わたしのあんまり良くない例え話は、横に置いた。
「塔から飛び降りざまの告白は、うまく行ったみたいだねえ。」
「それもアキルのいう“吊り橋効果”だといいたいのかや?」
オルガっちは、やれやれと首を振った。
「あやつらは高いとこから飛び降りたくらい危険なうちにはいらないと思うぞ。そもそも好んで尖塔の屋根で密会するようなカップルじゃ。」
先日みんなで宴会をしたときは、狭く感じたのだが、わたしとオルガっちとミランだけだと流石に広い。
遠慮なしに、頼んだルームサービスは、魚介類のオードブルに、かなり値の張るワインだった。
実際にいくらかはきいてない。
でも、恐れ多くも西域八強の一角、銀灰皇国の姫君オルガっちが、うひゃあ、たっかいのお、などと言っていたからそうなのだろう。
気がつかないうちにかなり、贅沢になってるなあ、とわたしは思う。
この世界で、元の世界並みの快適さを求めようと思ったら、魔法が使えるようになるしかない。
そっちの素養もゼロではない、はずだ。
だって、わたしの体なんだから。
贅沢なのは、まあ、まわりが王侯貴族どもなので、しょうがないか。
「ルトたちの結婚を妨害する気にかわりはないか?」
もちろん!
と、わたしは答えてガッツポーズをとった。
「そもそも、手放しで賛成してるのは、リウさんとアモンさん、ギムリウスくらいのもので、大公陛下は、様子見、あとはぜんぶ反対もしくは、危惧を抱いている。」
「賛成の頭数だけみれば、竜王の牙の連中はなにも考えずに大賛成じゃろ?
アイツらの脳内にアモン殿に反抗する気などカケラもあるまい。」
オルガっちは冷静に指摘した。
「ううっ・・・だからこれは『踊る道化師』内でのハナシで・・・」
「ドロシーは賛成だろうし、レクス殿は様子見、グルジエンはフィオリナの言うことならなんでも賛成じゃろ?
ちなみに、わらわも別に反対ではない。
たしかに、あの二人の子どもがどうなるのかは、ちょっと怖いが、そこはそれ。」
オルガっちはウインクした。
「吉とでるか凶とでるか。それも一興じゃろ?」
正しいのだ。もし、それが、とんでもない呪いでも、どんな神の祝福でもあの二人は受け入れるだろう。
でも、違うのだな。
いまのあの二人には、いま二人が結婚してしまうとその未来にはなんにもないのだ。
わたしの浮かない顔を見て、オルガっちはわたしを元気づけるように明るい顔で言った。
「それともなにか?
おぬしの力で無理やり解決してみるか?
なにしろ、ヴァルゴールの12使徒がまるで神に仕えるように、おぬしに仕えておるからのう?」
「決めた!」
わたしはつぶやいた。
「フィオリナさんの靴のヒールに切れ込みをいれる!」
「あのなあ。」
オルガっちは、うんざりしたように言う。
「かの邪神どののお力とはそんなものだったか?
恐れ多くも契約と隷属の神じゃろうが。」
「あいつらが相手でなければそれもありかなあ。」
わたしの笑顔は引きつっていたかもしれない、
「せっかくの世界をろくに生きもしないうちに、滅ぼされたくは無いんだ。
ひとりひとりならともかく、全員まとめて相手をしたら、間違いなく負ける。」
「それほどなのか?」
オルガっちはさすがに驚いたようだった。
旅で、知り合って仲良くなった女の子が、異世界人だけでもぶっとんでるのに、勇者で、邪神の現見だったという、急展開によくついてきていてくれる。
「アモンとレクスが、上位の古竜なのはわかった。
ロウは、真祖の吸血鬼で、ギムリウスは太古の神獣の生まれ変わりかなにかだろう。
リウはなんだ?」
「魔王。」
わたしの答えに、驚かす、むしろ納得したようにオルガっちはにんまりと笑った。
「グランダの王位継承のために最強のパーティを用意せよ、って言われてルトが作ったパーティが『踊る道化師』。」
と、わたしは言った。
グランダへ出張中の、ギムリウスとミランの部屋は、リビングに寝室が三つ。バスルームがついた豪華な者だった。
アライアス侯爵の用意してくれた部屋も悪くは、決してなかったが、もともとの暮らしの基準が
異世界なわたしには、トイレは水洗であってほしいし、スイッチ一つで明かりが灯ってほしいのだ。
「なんじゃ、それ?」
オルガっちがつまらなそうに聞いた。
「つまりだね、スリルのある吊り橋の上とかで愛を告白すると、スリルによるドキドキと告白によるドキドキを心がごっちゃに錯覚してしまって、仲良くなりやすいという法則だ。」
だいぶ、いい加減な説明に、しかしオルガは頷いてくれた。
「戦場で背中合わせに戦った後に、愛が芽生えるとかそういうやつじゃな。」
違うぞ、オルガっち!
「はい主上!」役に立たないわたしの使徒が、手を上げた。「それだと、敵に対しても恋心が芽生えてしまうのではないでしょうか?」
敵と味方が戦場で愛し合う世界、さすがは主上のいた世界はステキに狂っております。
うっとりと語るミランは、はっきり言って気持ち悪い。
わたしのいた世界が狂っていたとは、思いたくないが、数年後、怨霊と化したわたしに滅ぼされる世界だ。
まともな世界とも言いきれないなにかがあるのかもしれない。
「まあ、それはそれとして、」
とりあえず、わたしのあんまり良くない例え話は、横に置いた。
「塔から飛び降りざまの告白は、うまく行ったみたいだねえ。」
「それもアキルのいう“吊り橋効果”だといいたいのかや?」
オルガっちは、やれやれと首を振った。
「あやつらは高いとこから飛び降りたくらい危険なうちにはいらないと思うぞ。そもそも好んで尖塔の屋根で密会するようなカップルじゃ。」
先日みんなで宴会をしたときは、狭く感じたのだが、わたしとオルガっちとミランだけだと流石に広い。
遠慮なしに、頼んだルームサービスは、魚介類のオードブルに、かなり値の張るワインだった。
実際にいくらかはきいてない。
でも、恐れ多くも西域八強の一角、銀灰皇国の姫君オルガっちが、うひゃあ、たっかいのお、などと言っていたからそうなのだろう。
気がつかないうちにかなり、贅沢になってるなあ、とわたしは思う。
この世界で、元の世界並みの快適さを求めようと思ったら、魔法が使えるようになるしかない。
そっちの素養もゼロではない、はずだ。
だって、わたしの体なんだから。
贅沢なのは、まあ、まわりが王侯貴族どもなので、しょうがないか。
「ルトたちの結婚を妨害する気にかわりはないか?」
もちろん!
と、わたしは答えてガッツポーズをとった。
「そもそも、手放しで賛成してるのは、リウさんとアモンさん、ギムリウスくらいのもので、大公陛下は、様子見、あとはぜんぶ反対もしくは、危惧を抱いている。」
「賛成の頭数だけみれば、竜王の牙の連中はなにも考えずに大賛成じゃろ?
アイツらの脳内にアモン殿に反抗する気などカケラもあるまい。」
オルガっちは冷静に指摘した。
「ううっ・・・だからこれは『踊る道化師』内でのハナシで・・・」
「ドロシーは賛成だろうし、レクス殿は様子見、グルジエンはフィオリナの言うことならなんでも賛成じゃろ?
ちなみに、わらわも別に反対ではない。
たしかに、あの二人の子どもがどうなるのかは、ちょっと怖いが、そこはそれ。」
オルガっちはウインクした。
「吉とでるか凶とでるか。それも一興じゃろ?」
正しいのだ。もし、それが、とんでもない呪いでも、どんな神の祝福でもあの二人は受け入れるだろう。
でも、違うのだな。
いまのあの二人には、いま二人が結婚してしまうとその未来にはなんにもないのだ。
わたしの浮かない顔を見て、オルガっちはわたしを元気づけるように明るい顔で言った。
「それともなにか?
おぬしの力で無理やり解決してみるか?
なにしろ、ヴァルゴールの12使徒がまるで神に仕えるように、おぬしに仕えておるからのう?」
「決めた!」
わたしはつぶやいた。
「フィオリナさんの靴のヒールに切れ込みをいれる!」
「あのなあ。」
オルガっちは、うんざりしたように言う。
「かの邪神どののお力とはそんなものだったか?
恐れ多くも契約と隷属の神じゃろうが。」
「あいつらが相手でなければそれもありかなあ。」
わたしの笑顔は引きつっていたかもしれない、
「せっかくの世界をろくに生きもしないうちに、滅ぼされたくは無いんだ。
ひとりひとりならともかく、全員まとめて相手をしたら、間違いなく負ける。」
「それほどなのか?」
オルガっちはさすがに驚いたようだった。
旅で、知り合って仲良くなった女の子が、異世界人だけでもぶっとんでるのに、勇者で、邪神の現見だったという、急展開によくついてきていてくれる。
「アモンとレクスが、上位の古竜なのはわかった。
ロウは、真祖の吸血鬼で、ギムリウスは太古の神獣の生まれ変わりかなにかだろう。
リウはなんだ?」
「魔王。」
わたしの答えに、驚かす、むしろ納得したようにオルガっちはにんまりと笑った。
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