あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己

文字の大きさ
342 / 574
第7部 駆け出し冒険者と姫君

第321話 邪神の陰謀

しおりを挟む
「吊り橋効果って知ってる?」
と、わたしは言った。

グランダへ出張中の、ギムリウスとミランの部屋は、リビングに寝室が三つ。バスルームがついた豪華な者だった。
アライアス侯爵の用意してくれた部屋も悪くは、決してなかったが、もともとの暮らしの基準が
異世界なわたしには、トイレは水洗であってほしいし、スイッチ一つで明かりが灯ってほしいのだ。

「なんじゃ、それ?」

オルガっちがつまらなそうに聞いた。

「つまりだね、スリルのある吊り橋の上とかで愛を告白すると、スリルによるドキドキと告白によるドキドキを心がごっちゃに錯覚してしまって、仲良くなりやすいという法則だ。」

だいぶ、いい加減な説明に、しかしオルガは頷いてくれた。

「戦場で背中合わせに戦った後に、愛が芽生えるとかそういうやつじゃな。」

違うぞ、オルガっち!

「はい主上!」役に立たないわたしの使徒が、手を上げた。「それだと、敵に対しても恋心が芽生えてしまうのではないでしょうか?」

敵と味方が戦場で愛し合う世界、さすがは主上のいた世界はステキに狂っております。
うっとりと語るミランは、はっきり言って気持ち悪い。
わたしのいた世界が狂っていたとは、思いたくないが、数年後、怨霊と化したわたしに滅ぼされる世界だ。
まともな世界とも言いきれないなにかがあるのかもしれない。

「まあ、それはそれとして、」
とりあえず、わたしのあんまり良くない例え話は、横に置いた。
「塔から飛び降りざまの告白は、うまく行ったみたいだねえ。」
「それもアキルのいう“吊り橋効果”だといいたいのかや?」
オルガっちは、やれやれと首を振った。
「あやつらは高いとこから飛び降りたくらい危険なうちにはいらないと思うぞ。そもそも好んで尖塔の屋根で密会するようなカップルじゃ。」

先日みんなで宴会をしたときは、狭く感じたのだが、わたしとオルガっちとミランだけだと流石に広い。
遠慮なしに、頼んだルームサービスは、魚介類のオードブルに、かなり値の張るワインだった。

実際にいくらかはきいてない。
でも、恐れ多くも西域八強の一角、銀灰皇国の姫君オルガっちが、うひゃあ、たっかいのお、などと言っていたからそうなのだろう。

気がつかないうちにかなり、贅沢になってるなあ、とわたしは思う。
この世界で、元の世界並みの快適さを求めようと思ったら、魔法が使えるようになるしかない。
そっちの素養もゼロではない、はずだ。
だって、わたしの体なんだから。

贅沢なのは、まあ、まわりが王侯貴族どもなので、しょうがないか。

「ルトたちの結婚を妨害する気にかわりはないか?」

もちろん!
と、わたしは答えてガッツポーズをとった。
「そもそも、手放しで賛成してるのは、リウさんとアモンさん、ギムリウスくらいのもので、大公陛下は、様子見、あとはぜんぶ反対もしくは、危惧を抱いている。」

「賛成の頭数だけみれば、竜王の牙の連中はなにも考えずに大賛成じゃろ?
アイツらの脳内にアモン殿に反抗する気などカケラもあるまい。」
オルガっちは冷静に指摘した。

「ううっ・・・だからこれは『踊る道化師』内でのハナシで・・・」
「ドロシーは賛成だろうし、レクス殿は様子見、グルジエンはフィオリナの言うことならなんでも賛成じゃろ?
ちなみに、わらわも別に反対ではない。
たしかに、あの二人の子どもがどうなるのかは、ちょっと怖いが、そこはそれ。」

オルガっちはウインクした。
「吉とでるか凶とでるか。それも一興じゃろ?」

正しいのだ。もし、それが、とんでもない呪いでも、どんな神の祝福でもあの二人は受け入れるだろう。
でも、違うのだな。
いまのあの二人には、いま二人が結婚してしまうとその未来にはなんにもないのだ。

わたしの浮かない顔を見て、オルガっちはわたしを元気づけるように明るい顔で言った。
「それともなにか?
おぬしの力で無理やり解決してみるか?
なにしろ、ヴァルゴールの12使徒がまるで神に仕えるように、おぬしに仕えておるからのう?」

「決めた!」
わたしはつぶやいた。
「フィオリナさんの靴のヒールに切れ込みをいれる!」

「あのなあ。」
オルガっちは、うんざりしたように言う。
「かの邪神どののお力とはそんなものだったか?
恐れ多くも契約と隷属の神じゃろうが。」
「あいつらが相手でなければそれもありかなあ。」
わたしの笑顔は引きつっていたかもしれない、
「せっかくの世界をろくに生きもしないうちに、滅ぼされたくは無いんだ。
ひとりひとりならともかく、全員まとめて相手をしたら、間違いなく負ける。」

「それほどなのか?」
オルガっちはさすがに驚いたようだった。
旅で、知り合って仲良くなった女の子が、異世界人だけでもぶっとんでるのに、勇者で、邪神の現見だったという、急展開によくついてきていてくれる。
「アモンとレクスが、上位の古竜なのはわかった。
ロウは、真祖の吸血鬼で、ギムリウスは太古の神獣の生まれ変わりかなにかだろう。
リウはなんだ?」

「魔王。」
わたしの答えに、驚かす、むしろ納得したようにオルガっちはにんまりと笑った。

「グランダの王位継承のために最強のパーティを用意せよ、って言われてルトが作ったパーティが『踊る道化師』。」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...