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第7部 駆け出し冒険者と姫君
第343話 魔王対魔王の再来
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凍った刻。その中で、ルトは、ふっと短く息をつく。
ガキっ!
飛び込むように、接近したルトの抜き打ちの一撃を、少女の姿をしたリウが、受け止めた。
その身に寸鉄も帯びていないようにみえたリウが、ルトの剣戟をうけとめたのは、指に光るリングである。
青みを帯びた銀色の金属の細い輪に、瑠璃色の貴石が埋め込まれていた。
「いい腕だ、愛しき伴侶よ。」
リウはほめた。
「場所をうつそうか。ふたりきりで話したいことも多いのでな。」
ぐる。とルトの目の前の光景が回転した。
平衡感覚を失った彼の前に、ランゴバルドの街並みが現れた。
空は真っ暗だが、どこからか差し込む光で、視界は開けていた。
リウたちが作り上げた『大迷宮ランゴバルド』である。場所は、『王の戴冠広場』だった。
「さあ、我が君よ。」
ふわっと浮かんだその動作に、魔力は全く使われていない。足の指先と関節だけで行った純粋なジャンプだった。
「対話を行うか、それとも命のやりとりをするか。」
ルトは、鈍い光をたたえた目で、リウを睨んだ。
「両方」
と言って、彼もまた後ろにジャンプした。前に差し出した両手の指の形は、竜の顎を思わせた。
「竜の咆哮」
収束したエネルギーは、まるで竜のブレス・・・・
リウは、自身の魔力を制御していた枷を開放した。作り出したのは単なる障壁ではない。
まるで。
ではない。
竜のブレスは自らの、牙のかたちを魔法陣と見立てての、魔術攻撃にほかならない。
つまり、ルトは自らの手指を、牙に見立て、竜のブレスをその身で再現してみせたのだ。当然それに見合う魔力をもっていなければなせぬ技である。
リウの背後の建物が崩壊した。単なる破壊ではない。五階建ての建物が光の放流にのまれ、分解するように消えていく。
だが、白いウェディングドレスのリウは、婉然と笑った。
リウが展開したのは、障壁ではなく、次元断層。自らを別の位相に移したのだ。
「無駄だよ。」
「いや。」
ルトがくすくすと笑う。
『無駄ではない。』
それは念話だった。
リウのかわいらしく笑みの形につりあがった唇から、つう・・・・っと血がしたたった。
「位相を移してなお、ダメージが通る。」
今度は声でしゃべった。
『それが』「竜のブレス」
念話と声を交互に使うことがすでに撹乱となっていた。
それに気がついたときに、リウは、ルトの姿を一瞬見失っていた。
ルトは。
再び、リウのふところに潜り込んでいた。
今度は、剣の柄だった。柄がふれた腹部から、波紋がひろがりリウの体が内側からかき回され、細い体がコントロールできない衝撃にバウンドして、繰り返し、地面に叩きつけられた。
「燃えろ、燃えつきろ、魔王。」
空中に浮かんだルトの周りに、炎の矢が無数に浮かび上がる。
倒れたリウは、避けようとはしなかった。
両手をひろげた。
まるで、炎の矢が降り注ぐのを待ち受けるかのように。
広場の石畳がまくれ上がり、凄まじい爆発が連続する。
その威力は、炎の矢が生み出すものではない。一本一本の威力でも通常の魔導師が作り出すものの、十倍。そして数はざっとみても百を超える。
爆炎が巻き上げた煙が、収まる。
白いドレスは、ぼろぼろの布切れと化し、しなやかな肢体がほとんどむき出しになっている。
「これで終わりかな? 我が君。」
からかうように。
リウは、ルトを見上げた。
「これは、わたしとおまえが一対一で対峙できる最後の機会だぞ。」
「ふうん?」
「これからは、フィオリナが必ず一緒にいるからな。いまの炎の矢も彼女が受け止めてくれるだろう。」
リウは、きっぱりと言った。
「相手が誰であれ、フィオリナはわたしを守る。わたしが傷つけられるのを絶対に許さない。」
ガキっ!
飛び込むように、接近したルトの抜き打ちの一撃を、少女の姿をしたリウが、受け止めた。
その身に寸鉄も帯びていないようにみえたリウが、ルトの剣戟をうけとめたのは、指に光るリングである。
青みを帯びた銀色の金属の細い輪に、瑠璃色の貴石が埋め込まれていた。
「いい腕だ、愛しき伴侶よ。」
リウはほめた。
「場所をうつそうか。ふたりきりで話したいことも多いのでな。」
ぐる。とルトの目の前の光景が回転した。
平衡感覚を失った彼の前に、ランゴバルドの街並みが現れた。
空は真っ暗だが、どこからか差し込む光で、視界は開けていた。
リウたちが作り上げた『大迷宮ランゴバルド』である。場所は、『王の戴冠広場』だった。
「さあ、我が君よ。」
ふわっと浮かんだその動作に、魔力は全く使われていない。足の指先と関節だけで行った純粋なジャンプだった。
「対話を行うか、それとも命のやりとりをするか。」
ルトは、鈍い光をたたえた目で、リウを睨んだ。
「両方」
と言って、彼もまた後ろにジャンプした。前に差し出した両手の指の形は、竜の顎を思わせた。
「竜の咆哮」
収束したエネルギーは、まるで竜のブレス・・・・
リウは、自身の魔力を制御していた枷を開放した。作り出したのは単なる障壁ではない。
まるで。
ではない。
竜のブレスは自らの、牙のかたちを魔法陣と見立てての、魔術攻撃にほかならない。
つまり、ルトは自らの手指を、牙に見立て、竜のブレスをその身で再現してみせたのだ。当然それに見合う魔力をもっていなければなせぬ技である。
リウの背後の建物が崩壊した。単なる破壊ではない。五階建ての建物が光の放流にのまれ、分解するように消えていく。
だが、白いウェディングドレスのリウは、婉然と笑った。
リウが展開したのは、障壁ではなく、次元断層。自らを別の位相に移したのだ。
「無駄だよ。」
「いや。」
ルトがくすくすと笑う。
『無駄ではない。』
それは念話だった。
リウのかわいらしく笑みの形につりあがった唇から、つう・・・・っと血がしたたった。
「位相を移してなお、ダメージが通る。」
今度は声でしゃべった。
『それが』「竜のブレス」
念話と声を交互に使うことがすでに撹乱となっていた。
それに気がついたときに、リウは、ルトの姿を一瞬見失っていた。
ルトは。
再び、リウのふところに潜り込んでいた。
今度は、剣の柄だった。柄がふれた腹部から、波紋がひろがりリウの体が内側からかき回され、細い体がコントロールできない衝撃にバウンドして、繰り返し、地面に叩きつけられた。
「燃えろ、燃えつきろ、魔王。」
空中に浮かんだルトの周りに、炎の矢が無数に浮かび上がる。
倒れたリウは、避けようとはしなかった。
両手をひろげた。
まるで、炎の矢が降り注ぐのを待ち受けるかのように。
広場の石畳がまくれ上がり、凄まじい爆発が連続する。
その威力は、炎の矢が生み出すものではない。一本一本の威力でも通常の魔導師が作り出すものの、十倍。そして数はざっとみても百を超える。
爆炎が巻き上げた煙が、収まる。
白いドレスは、ぼろぼろの布切れと化し、しなやかな肢体がほとんどむき出しになっている。
「これで終わりかな? 我が君。」
からかうように。
リウは、ルトを見上げた。
「これは、わたしとおまえが一対一で対峙できる最後の機会だぞ。」
「ふうん?」
「これからは、フィオリナが必ず一緒にいるからな。いまの炎の矢も彼女が受け止めてくれるだろう。」
リウは、きっぱりと言った。
「相手が誰であれ、フィオリナはわたしを守る。わたしが傷つけられるのを絶対に許さない。」
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