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第8部 残念姫の顛末
第372話 参上!踊る道化師
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ガルフィート伯爵がよんでくれた精鋭部隊が次の蜘蛛にアタックしていくが、こちらも手が足りていない。
1匹を、しとめきれない間にも次の蜘蛛が出現してくる。
今度は、ああっ!まずいっ!
正面の蜘蛛にたいして陣形をとったガルフィート隊のちょうど真後ろだっ。
うっおりゃぁああっ!
どがあっっぁ!
蜘蛛がどこから召喚されたのかはしらないけど、空から降ってきた半裸の女の子に殴り飛ばされるは、さぞかし無念だったろう。
蜘蛛を殴り飛ばした。少女はくるっと回転して飛び降りた。服は。あるのかないのか。いや、その、肌を隠してもいない布切れを服とよぶべきなのか?
ほぼ、露出されているその肌は、顔に至るまでまで、さまざまな意匠の刺青で埋め尽くされている。
意外に可愛らしい顔立ちで、ニヤッと笑った。
「『踊る道化師』臨時メンバー、カンバスのリヨン参上!
いやあ、リア。思い出すねえ、魔王宮さ。」
空から降ってきた光の剣が、リヨンに殴り飛ばされて、地面に転がった蜘蛛の頭部を刺し貫いた。
空から降ってきた美女を、リヨンが受け止める。
「な、ないすきゃっち。」
涙目だった。
そのまま、空に向かって叫ぶ。
「ロウ!
もうちょっと下ろし方を考えてください!」
それに答えたのは、フワっと傍らに降り立った派手な美女だ。背中に『不死鳥と冠』の刺繍だされた、ジャケットを羽織っている。
「リア、あなたもクローディア家の一員なら、光以外の魔法も覚えなさい。浮遊や飛行はともかく、落下速度をコントロールするなんて、初歩の部類よ。」
たしか、この人は、ルトくんたちがいたギルド「不死鳥の冠」のミュラさんだ。
そうですか。ミュラさん、わたしどれも使えないんですが。わたしはクローディア家の一員ではないからいいですね?
あぶないっ!
緋色の蜘蛛がのしかかるように、ミュラさんに襲いかかった。だがミュラさんの姿がすうっと、横滑りに動いてそれをあっさりとかわす。
「豪雷槍」
つぶやいたミュラさんの手のひらから、雷の槍が開いた蜘蛛の顎に突き刺さった。
蜘蛛の頭が粉砕される。
ミュラさんが戦うのを見たのは始めてだったけど、これはつよい。
蜘蛛の攻撃を避けたのは、風の魔法の応用だろうし、あの雷撃はたぶん出力的にはドロシーさんをはるかに凌ぐ。
「へえ、たいしたものじゃのう。」
オルガっちがそういったのは、だが、ミュラさんに対するものでは無い。
大聖堂に取り付いた蜘蛛は、外にいるわたしたちから、姿が見えるものだけで、十匹以上はいたのだ。
それが全て動きを止めていた。
死んだり気絶したのではない。何かに絡め取られて、その場から動くことができずに必死でもがいている。
まるで蜘蛛の巣に絡まったように。
その巣の主は頭上にいた。
おそらくは周りの木々や、建物を使って巨大な巣を作り上げたのは。
ギルド「不死鳥の冠」所属の“隠者”ヨウィス。かつての対抗戦で、ネイア先生と戦った猛者だ。
自らの糸を使って空中に静止したまま、
「・・・・・」
「いや何か言わんかいっ!」
リアさんが、光の剣を作り出すと、正確無比に動けなくなった蜘蛛を仕留めていく。
建物にはできるだけ損傷を与えないように気を使っているのはわかるが、当たった部分は炸裂し、頭だったら砕け、胴体だったら真っ二つになった。
それをろくに詠唱もなしに、続けて行っているのだ。いや、このリアさんっていうのもけっこうなバケモノだった。
「こっちの蜘蛛は、わたしたちで掃討する。」
ロウさまはふうわりと、わたしの隣に降りてきた。着地と同時に、黒い翼を畳んで、そう言った。
「こいつらは自動的に次々と転移されてくるようだ。転移のための陣か、術者が近くにいる。そちらを叩いてくれ。」
そう言って、ニヤリとした口元に牙が見えた。
「背後関係も聞き出さないといけないから、術者がいればできれば殺さずに。」
「む?」
と、ギムリウスが、顔を上げた。
巨大なカップというかバケツに似た容器に、並々と注がれた緑色のソーダは、まだ三分の一も減っていない。
昼下がりのミトラミュゼは、平和なものである。大聖堂から被害が拡大していないせいもあるのだろう。
「誰かが、転移操作の陣に侵入しようとしてる。」
「ぼくがいこうか?」
ミランが勢いこんだ。正直いうと、山盛りのシフォンケーキと、串焼き、バケツほどもあるクリームソーダに、ギブアップしかかっていたのである。何か別の用事でもあれば、席を外したかった。
「大丈夫。」
ミランの気を知らぬ、ギムリウスは追加のオーダーのために、店員を呼んだ。
「本当にこのセットをカップル二人が平らげたのか?」
ミランは、やってきた店員を睨んだが、店員は平気な顔で答えた。
「ええ、とっても凛々しい姫騎士さまと、ドレスがお似合いの素敵なお嬢様のカップルでしたよ。」
「この季節のアイス盛り合わせオールシーズンというのを頼む。」
「だ、大丈夫なんですか? ギムリウスさま」
「ん?・・・・転移陣の守りに、魔王宮のユニークを呼んであるから、大丈夫。」
ギムリウスは、舌を伸ばして、ソーダに浮かぶアイスをすくいとった。
「あれは強い。わたしの作った中では近年では、最高傑作だ。斬撃に特化した個体で、自己進化出来るように知性ももたせた。
たしか、名前もついている。ヤイバと名乗ってる。」
1匹を、しとめきれない間にも次の蜘蛛が出現してくる。
今度は、ああっ!まずいっ!
正面の蜘蛛にたいして陣形をとったガルフィート隊のちょうど真後ろだっ。
うっおりゃぁああっ!
どがあっっぁ!
蜘蛛がどこから召喚されたのかはしらないけど、空から降ってきた半裸の女の子に殴り飛ばされるは、さぞかし無念だったろう。
蜘蛛を殴り飛ばした。少女はくるっと回転して飛び降りた。服は。あるのかないのか。いや、その、肌を隠してもいない布切れを服とよぶべきなのか?
ほぼ、露出されているその肌は、顔に至るまでまで、さまざまな意匠の刺青で埋め尽くされている。
意外に可愛らしい顔立ちで、ニヤッと笑った。
「『踊る道化師』臨時メンバー、カンバスのリヨン参上!
いやあ、リア。思い出すねえ、魔王宮さ。」
空から降ってきた光の剣が、リヨンに殴り飛ばされて、地面に転がった蜘蛛の頭部を刺し貫いた。
空から降ってきた美女を、リヨンが受け止める。
「な、ないすきゃっち。」
涙目だった。
そのまま、空に向かって叫ぶ。
「ロウ!
もうちょっと下ろし方を考えてください!」
それに答えたのは、フワっと傍らに降り立った派手な美女だ。背中に『不死鳥と冠』の刺繍だされた、ジャケットを羽織っている。
「リア、あなたもクローディア家の一員なら、光以外の魔法も覚えなさい。浮遊や飛行はともかく、落下速度をコントロールするなんて、初歩の部類よ。」
たしか、この人は、ルトくんたちがいたギルド「不死鳥の冠」のミュラさんだ。
そうですか。ミュラさん、わたしどれも使えないんですが。わたしはクローディア家の一員ではないからいいですね?
あぶないっ!
緋色の蜘蛛がのしかかるように、ミュラさんに襲いかかった。だがミュラさんの姿がすうっと、横滑りに動いてそれをあっさりとかわす。
「豪雷槍」
つぶやいたミュラさんの手のひらから、雷の槍が開いた蜘蛛の顎に突き刺さった。
蜘蛛の頭が粉砕される。
ミュラさんが戦うのを見たのは始めてだったけど、これはつよい。
蜘蛛の攻撃を避けたのは、風の魔法の応用だろうし、あの雷撃はたぶん出力的にはドロシーさんをはるかに凌ぐ。
「へえ、たいしたものじゃのう。」
オルガっちがそういったのは、だが、ミュラさんに対するものでは無い。
大聖堂に取り付いた蜘蛛は、外にいるわたしたちから、姿が見えるものだけで、十匹以上はいたのだ。
それが全て動きを止めていた。
死んだり気絶したのではない。何かに絡め取られて、その場から動くことができずに必死でもがいている。
まるで蜘蛛の巣に絡まったように。
その巣の主は頭上にいた。
おそらくは周りの木々や、建物を使って巨大な巣を作り上げたのは。
ギルド「不死鳥の冠」所属の“隠者”ヨウィス。かつての対抗戦で、ネイア先生と戦った猛者だ。
自らの糸を使って空中に静止したまま、
「・・・・・」
「いや何か言わんかいっ!」
リアさんが、光の剣を作り出すと、正確無比に動けなくなった蜘蛛を仕留めていく。
建物にはできるだけ損傷を与えないように気を使っているのはわかるが、当たった部分は炸裂し、頭だったら砕け、胴体だったら真っ二つになった。
それをろくに詠唱もなしに、続けて行っているのだ。いや、このリアさんっていうのもけっこうなバケモノだった。
「こっちの蜘蛛は、わたしたちで掃討する。」
ロウさまはふうわりと、わたしの隣に降りてきた。着地と同時に、黒い翼を畳んで、そう言った。
「こいつらは自動的に次々と転移されてくるようだ。転移のための陣か、術者が近くにいる。そちらを叩いてくれ。」
そう言って、ニヤリとした口元に牙が見えた。
「背後関係も聞き出さないといけないから、術者がいればできれば殺さずに。」
「む?」
と、ギムリウスが、顔を上げた。
巨大なカップというかバケツに似た容器に、並々と注がれた緑色のソーダは、まだ三分の一も減っていない。
昼下がりのミトラミュゼは、平和なものである。大聖堂から被害が拡大していないせいもあるのだろう。
「誰かが、転移操作の陣に侵入しようとしてる。」
「ぼくがいこうか?」
ミランが勢いこんだ。正直いうと、山盛りのシフォンケーキと、串焼き、バケツほどもあるクリームソーダに、ギブアップしかかっていたのである。何か別の用事でもあれば、席を外したかった。
「大丈夫。」
ミランの気を知らぬ、ギムリウスは追加のオーダーのために、店員を呼んだ。
「本当にこのセットをカップル二人が平らげたのか?」
ミランは、やってきた店員を睨んだが、店員は平気な顔で答えた。
「ええ、とっても凛々しい姫騎士さまと、ドレスがお似合いの素敵なお嬢様のカップルでしたよ。」
「この季節のアイス盛り合わせオールシーズンというのを頼む。」
「だ、大丈夫なんですか? ギムリウスさま」
「ん?・・・・転移陣の守りに、魔王宮のユニークを呼んであるから、大丈夫。」
ギムリウスは、舌を伸ばして、ソーダに浮かぶアイスをすくいとった。
「あれは強い。わたしの作った中では近年では、最高傑作だ。斬撃に特化した個体で、自己進化出来るように知性ももたせた。
たしか、名前もついている。ヤイバと名乗ってる。」
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