あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己

文字の大きさ
456 / 574
第9部 道化師と世界の声

メンバー選抜2

しおりを挟む
あまりな申し出に、ぼくは一瞬、ぽかんとしてしまった。
確かに、ルールス先生は、ランゴバルドの秘宝「真実の眼」の後継者であって、優秀な魔導師ではあるのだが。

周りからは、バカカップルが2人きりになれる時間をまてなくて、イチャイチャし始めたように写っただろう。

「校長! 相手は神さまですよ!?」
「おおっ! だからどうした。別に戦いになると決まったわけでもあるまい。」

たしかに、彼女は頭もいい。
戦わずにことをおさめるのは、ぼくの得意技だ。
特に今回は・・・・・・
神を屠ることは、その神が司る自然現象が狂ったり、あるいは消滅することになる。
向こうがやる気でも、戦いそのものはおこしてはいけないのだ。

「でも、魔道列車の通ってない銀灰皇国は遠いですよ、」
彼女は、先生で、王族の一人で、しかも、教皇庁から何度も命を狙われた身の上だ。
びょこびょこ、旅行を楽しめる身の上ではない。

美女は(メガネを外すとけっこうかわいい、というよく舞台でやる法則はここでも当てはまっていた)ニンマリと笑った。
「もともと、わたしは、冒険者学校という迷宮のコアを管理するためにあそこにいる。これは、アモンが代行してくれる。
分校のほうは、ネイアがいれば大丈夫だろ?」
「ネイア先生をおいてくんですか!」
「置いていくしかあるまい?
いまのうちのクラスにほいほいと、代理の教師を頼めるものか。」

うちのクラスには、正確にはもう、普通の生徒はいない。
当初のメンバーは、リウかアモンかロウの薫陶をうけ、たぶん冒険者としてもう一人前にやっていける腕がある。
事実、校外実習の名のもとに、単発で依頼をこなしてくるものも少なくない。

それがなぜ、まだ卒業せずにいるのかと言うと、さすがに3年を目安に組まれた冒険者学校のカリキュラムがまだ終わらないのと、ここにいれば、ここで修行すれば、自分がさらなる高みに登れると信じているからだ。

あとから、入ってきたのは、ヴァルゴールの使徒、つまり実際に邪神ヴァルゴールに贄を捧げたことのある狂信者の群れ、さらに、そのあとは、試験会場てスカウトした問題児ばかりを集めているので、また、戦力的な充実はともかく、うかつに目を離していい状態では無いのだ。

「ギウリークは、オヌシらの大活躍で担当部門のトップが更迭されたからは、大人しい。そして、さらにはさきほど、ほかならぬ『神子』ハロルド閣下から、身の安全を、約束してもらった様出しの!」
「ハロルド閣下って、偉いことは偉いんですけど、実際の権限はほとんどないはずですよ?」
「神子、ならな! ほかならぬ“名のない唯一神”が宣言したのだ。これは確かじゃろう?」
「神さまの約束は、いや人間だってそうですが、同程度の力を持つものの間にしか存在しません。約束を破ることでなにがしかのデメリットがあるから、守られるんです。」
「17歳で、身も蓋もないことを言う!」

ルールス先生は、笑った。

「だから、あの場にアキルを同席されたんじゃろ? 大邪神のまえで約束したことはさすがに、真名を知られていないとはいえ、守らざるを得まい。」

ルールス先生は、少し身をかがめて、胸元を開いて見せた。胸の谷間はけっこう深い。
「それに護衛はお主がいる。」

覚めたと思ったのだが、まだ酔ってやがるのか!

たしかに、ルールス先生を連れていくことは、メリットもある。ほかならぬランゴバルドの王族だ。外交的に、銀灰皇国の上層部に話を持って行ける。
なにより、あの真実の目、がある。

でも、2人っきりは極めて不味そうだ。
ランゴバルドは、頑固なほどの一夫一妻制であり、正妻以外は、著しく権利が下がる。そして、正妻というのは、かなりの場合、早い者勝ちな面もあり、例えば複数の異性と交際していたばあいなど、とっとと式を上げて、役所に届けをしてしまったものが優先されるのだ。

ぼくは、本人もときどき忘れているが、、グランダの王子で身分的には、彼女と釣り合わなくもない。例えばこれで、ルールス先生がぼくと、既成事実があるなどと主張しだしたら・・・・・・。

「もう一つ、言うなら」
ルールス先生は、ぼくの顎先に頭を擦り付けるようにしながら
「明らかに、『世界の声』は、お主らが戦力を分散されるように動いておる。
リウたちが、魔王宮をでた段階で、脅威はわかっていたはずなのに、動き始めたのは、リウが、カザリームに去った後じゃ。」

やっぱり、酔いは覚めているのか?

「いま、ロウとギムリウスは、向こうの応援に出てしまっているのだろう?
これ以上こちらの本体の戦力をさかない方がいい。お主は純粋な破壊力からみれば、フィオリナやアモンに一歩劣るし、わたしはもともと部外者だ。万一、わたしの見に何かあっても『踊る道化師』はなんの痛痒も感じない。」

あまりの言い草に、ぼくは、ルールス先生の顎先をつかんで、無理やり顔を上げさせた。
「『踊る道化師』は、先生を守るように依頼を受けました。受けた依頼はきちんと果たします。」
「おお! そうか。」
ルールス先生は、満開の花のような笑顔を見せた。見慣れた顔なのだが、恐ろしく眩しかった。
「なら、一生頼むぞ?」
「それは嫌です。」

危ない。
会話のなかに、「結婚の承諾」ともとれふ文言を、まぜてくるその技法にぼくは、舌を巻いた。

体をもぎ離して、会場に戻るように、先生を促す。
「銀灰には、先生もお連れしますよ。」
ぼくは言った。 
「フィオリナ、アモン、アキルはランゴバルドに、残す。これもその通りにします。先生は、ランゴバルドへの根回しをしといてください。」

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...