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第9部 道化師と世界の声
ぼくが隣にいる理由
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「さあ、ヘタレ蜥蜴どもは、ちゃんとお家に帰えれたかぁ!」
心機一転。ということなのだろうが、どこの邪教の信徒がするのか、ぼろぼろの衣装に、耳たぶから、唇にいたるまで、ピアスだらけ。
突き出した舌は、よくそれでちゃんとしゃべれるなと、感心するようなハート型の穴が空いていた。
首から下げるチェーンは、骨を加工したもの。ノコギリ状の刃をもつナイフで、自分の二の腕をぎりぎりと削りながら、賢者さまは叫んだ。
「こっからは、イカしたパーティを、イカれた俺さまちゃんに見せてくれ!
次なる試合は、破壊神フィオリナが率いる『真・栄光の盾』だ。こいつらの暴走からカザリームを守ってくれる勇者は!!!!」
喚き立てる賢者の後ろで、黒い骸骨が妙な踊りをしていた。
シャーリーだ。
たぶん、すごくイヤなんだろう。動作が相当にもっさりしていた。あとで、慰めてやろうと、ぼくは思った。
「西域では、いまこいつらがイチバンだ! 鉄道公社の絶士ランスよ。おまえたちの技を見せてくれ!」
わずか一呼吸の発言で、こいつはいくつ問題発言をすれば、気が済むのだろう。
誇り高い古竜たちを蜥蜴呼ばわりし、愛するフィオリナを破壊神扱いし、鉄道公社の絶士を勇者と呼んで、西域最強と持ち上げた。
ある意味すごいぞ。
問題発言「しか」していない。
一足早く闘技場に降り立ったアシットさんも、渋い顔だ。
そりゃそうだろう。
このカザリームを代表する立場のアシットさんまで、破壊神の手下呼ばわりだ。
会場のあちこちからもブーイングが飛んでいる。
「ここまでの演出が必要ですかね。」
呆れたような声は、ぼくのすぐ隣から聞こえた。
話したのは、円盤の手すりに止まる一羽の小鳥だった。
黄色い嘴に、黒い羽毛。可愛らしい小さな鳥だった。
「ひさしぶりだね、絶士ランス。」
グルジエンが、小鳥に挨拶した。
小鳥は、チュンチュンと鳴く代わりに、首を傾げて、グルジエンを見た。
「これは、絶魔法士グルジエン。」
声は若い男性のものに聞こえる。
「フィオリナ姫に惹かれて、絶士を休業中ときいたが、かわりはないか?」
「それがだな、ランス。」
満面の笑みで、グルジエンは答えた。両手に包丁を握っている。
「なんと、リンゴが剥けるようになったんだ。」
「凄いじゃないか!」
小鳥はびょんと、グルジエンの肩に飛び乗った。
「家は倒壊しなかったんだろな、グルシエン。」
「当たり前だ。壁に傷一つも着いていないぞ。」
メイドと小鳥はしばらく、互いの周りを飛び回って喜びあった。
どのくらい会っていないのかは、わからないが、少なくとも半年ぶりだろう。
最初の話題がそれかい。
と、ぼくはげんなりして二人を見つめた。
「いやあ、突然お邪魔してすまない。」
我に返ったように、小鳥はぼくら、一人一人に、ビョコビョコとお辞儀をしてみせた。
「一応、鉄道公社がこのイベントに、首を突っ込んだ理由を説明しておけないと、と思ってね。」
「宣伝、だろ?」
フィオリナが、そっけなく言った。
「オールべの経営もうまくいってるようた。同じような形式での領地運営も打診してるんだろうけど、問題は、人の数だ。絶士のレベルは確かに高いが、戦いを起こさせないほどの抑止力にはならない。いままで秘匿していた分、その力を知るものは極めた限られる。
その実力を世間に知らしめるための、宣伝に『栄光の盾トーナメント』を利用しようとした。」
フィオリナは、正解をすらすらと話した。
そうだ。
彼女は頭だっていいのだ。
おまけに、大局を見る目は、クローディア陛下譲りで、これは、はっきり言って、ぼくより上かもしれない。
そんな彼女にとって、ぼくは、本当に必要なのだろうか。
ぼくが、フィオリナを必要としているくらいには。
「残念ね。今日が、鉄道公社『絶士』最後の日になる。謎に満ちた特記戦力が、役に立たないクズだと天下にさらされる。五名の絶士を失ってな!」
天上の美女は、白い喉をみせて哄笑した。
ひいている。
ランスはもちろん、忠実なメイドのグルジエンも、もともとは同一人物のはずのベータもひいている。
ああ、なるほど。
ぼくは、やっぱりフィオリナの隣に必要なんだな。
「すいません。」
ぼくは、小鳥に頭をさげた。
「ほんとは、そんなこと思ってないと思うんですけど、あちこちバタバタしてるときに、しゃしゃり出てきて自分たちの名前を売るのに、トーナメントを利用しようとしてるのに、ブチ切れてるだけだと思います。」
「アシット・クロムウェル閣下は、たしか今の市長の兄上でしたね。」
小鳥のランスは、穏やかに言った。怒りを押し殺した穏やかさだ。小鳥の見た目を抜きにしても相当に怖い。
「絶義体士ナハムと戦わせましょう。相手を殺さずに行動するのは、特異なはずです。」
そういって、小鳥は嘴をあげて、この体からどうしたらこんな声がでるのか、という声で、囀った。
「絶士」たちの待機する円盤から、それもゆっくりと地表に落下中で、まだ、4メトルばかりの高さがあった。そこから、飛び降りたものがいる。
祭りのときの仮面をかぶった少女だった。彼女は、そのまま、闘技場の地面に叩きつけれ。
首と両足に致命的な傷をおって、そのまま倒れ込んだ。
心機一転。ということなのだろうが、どこの邪教の信徒がするのか、ぼろぼろの衣装に、耳たぶから、唇にいたるまで、ピアスだらけ。
突き出した舌は、よくそれでちゃんとしゃべれるなと、感心するようなハート型の穴が空いていた。
首から下げるチェーンは、骨を加工したもの。ノコギリ状の刃をもつナイフで、自分の二の腕をぎりぎりと削りながら、賢者さまは叫んだ。
「こっからは、イカしたパーティを、イカれた俺さまちゃんに見せてくれ!
次なる試合は、破壊神フィオリナが率いる『真・栄光の盾』だ。こいつらの暴走からカザリームを守ってくれる勇者は!!!!」
喚き立てる賢者の後ろで、黒い骸骨が妙な踊りをしていた。
シャーリーだ。
たぶん、すごくイヤなんだろう。動作が相当にもっさりしていた。あとで、慰めてやろうと、ぼくは思った。
「西域では、いまこいつらがイチバンだ! 鉄道公社の絶士ランスよ。おまえたちの技を見せてくれ!」
わずか一呼吸の発言で、こいつはいくつ問題発言をすれば、気が済むのだろう。
誇り高い古竜たちを蜥蜴呼ばわりし、愛するフィオリナを破壊神扱いし、鉄道公社の絶士を勇者と呼んで、西域最強と持ち上げた。
ある意味すごいぞ。
問題発言「しか」していない。
一足早く闘技場に降り立ったアシットさんも、渋い顔だ。
そりゃそうだろう。
このカザリームを代表する立場のアシットさんまで、破壊神の手下呼ばわりだ。
会場のあちこちからもブーイングが飛んでいる。
「ここまでの演出が必要ですかね。」
呆れたような声は、ぼくのすぐ隣から聞こえた。
話したのは、円盤の手すりに止まる一羽の小鳥だった。
黄色い嘴に、黒い羽毛。可愛らしい小さな鳥だった。
「ひさしぶりだね、絶士ランス。」
グルジエンが、小鳥に挨拶した。
小鳥は、チュンチュンと鳴く代わりに、首を傾げて、グルジエンを見た。
「これは、絶魔法士グルジエン。」
声は若い男性のものに聞こえる。
「フィオリナ姫に惹かれて、絶士を休業中ときいたが、かわりはないか?」
「それがだな、ランス。」
満面の笑みで、グルジエンは答えた。両手に包丁を握っている。
「なんと、リンゴが剥けるようになったんだ。」
「凄いじゃないか!」
小鳥はびょんと、グルジエンの肩に飛び乗った。
「家は倒壊しなかったんだろな、グルシエン。」
「当たり前だ。壁に傷一つも着いていないぞ。」
メイドと小鳥はしばらく、互いの周りを飛び回って喜びあった。
どのくらい会っていないのかは、わからないが、少なくとも半年ぶりだろう。
最初の話題がそれかい。
と、ぼくはげんなりして二人を見つめた。
「いやあ、突然お邪魔してすまない。」
我に返ったように、小鳥はぼくら、一人一人に、ビョコビョコとお辞儀をしてみせた。
「一応、鉄道公社がこのイベントに、首を突っ込んだ理由を説明しておけないと、と思ってね。」
「宣伝、だろ?」
フィオリナが、そっけなく言った。
「オールべの経営もうまくいってるようた。同じような形式での領地運営も打診してるんだろうけど、問題は、人の数だ。絶士のレベルは確かに高いが、戦いを起こさせないほどの抑止力にはならない。いままで秘匿していた分、その力を知るものは極めた限られる。
その実力を世間に知らしめるための、宣伝に『栄光の盾トーナメント』を利用しようとした。」
フィオリナは、正解をすらすらと話した。
そうだ。
彼女は頭だっていいのだ。
おまけに、大局を見る目は、クローディア陛下譲りで、これは、はっきり言って、ぼくより上かもしれない。
そんな彼女にとって、ぼくは、本当に必要なのだろうか。
ぼくが、フィオリナを必要としているくらいには。
「残念ね。今日が、鉄道公社『絶士』最後の日になる。謎に満ちた特記戦力が、役に立たないクズだと天下にさらされる。五名の絶士を失ってな!」
天上の美女は、白い喉をみせて哄笑した。
ひいている。
ランスはもちろん、忠実なメイドのグルジエンも、もともとは同一人物のはずのベータもひいている。
ああ、なるほど。
ぼくは、やっぱりフィオリナの隣に必要なんだな。
「すいません。」
ぼくは、小鳥に頭をさげた。
「ほんとは、そんなこと思ってないと思うんですけど、あちこちバタバタしてるときに、しゃしゃり出てきて自分たちの名前を売るのに、トーナメントを利用しようとしてるのに、ブチ切れてるだけだと思います。」
「アシット・クロムウェル閣下は、たしか今の市長の兄上でしたね。」
小鳥のランスは、穏やかに言った。怒りを押し殺した穏やかさだ。小鳥の見た目を抜きにしても相当に怖い。
「絶義体士ナハムと戦わせましょう。相手を殺さずに行動するのは、特異なはずです。」
そういって、小鳥は嘴をあげて、この体からどうしたらこんな声がでるのか、という声で、囀った。
「絶士」たちの待機する円盤から、それもゆっくりと地表に落下中で、まだ、4メトルばかりの高さがあった。そこから、飛び降りたものがいる。
祭りのときの仮面をかぶった少女だった。彼女は、そのまま、闘技場の地面に叩きつけれ。
首と両足に致命的な傷をおって、そのまま倒れ込んだ。
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