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声にならない声を聞いて
帰国
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アリアさんがソファーに座り、少し落ち着いた頃、ドアを強く叩く音がした。
「おいっ! なにがあったんだよ! アリア姉っ!」
「アリアさんっ! あ、開けていいですか!? 開けますよ!? 開けます!」
「ポロン、フローラ……」
アリアさんがふらふらしながら立ち上がると同時に、扉が開け放たれ、二人が入ってきた。
フローラとポロンくんは部屋を見渡すと、エドさんを見てサッと身構えた。
「お前か……?! アリア姉傷つけたら許さないからな!」
「あ、いや……。違うんだ」
今にも飛びかかりそうなポロンくんを止め、無理矢理、アリアさんは笑って見せる。
「こいつは、エドって言って……私と父上の護衛をしてくれていた人なんだ。危険なやつじゃない」
それから、エドさんの方を見て、申し訳なさそうに笑いかける。
「……悪かったな、取り乱して」
「いや……仕方のないことですよ。落ち着けと言う方が、無理です」
「えっと……なにが、あったんですか?」
僕がちらりと辺りを見ると、サラさんが二人に歩みより、僕を見た。
「……話してくる。お前はここにいてくれ。
行こう、二人とも」
「…………」
二人は、後ろ髪を引かれつつも、サラさんに連れられて部屋を出て行った。それを確認したアリアさんはエドさんに向き合い、ゆっくりと告げる。
「……戻るよ、マルティネスに」
「アリア様……」
「身内で不幸があったんだ。帰らないわけにはいかない。それに、立場が立場だしな」
エドさんは体を起こすと、アリアさんを真っ直ぐと見た。
「ならば、今すぐにでも」
「それはダメだ。……お前の体が持たない」
「それなら明日です。明日にはここを出ましょう。いち早く国に戻るのです」
「……アリアさん、ドラくんなら、たぶん、馬車より速いです」
「ドラくん?」
「僕が使役しているドラゴンのことですよ」
すると、エドさんは首を横に振る。
「ドラゴンなら、確かに速くつくでしょう。しかし、国王を失ってただでさえ混乱しているのに、ドラゴンまで現れたら国内はパニックになります」
「ならどうやって……」
「……二人乗りの馬車で来ています。少し馬に無理をさせれば、一週間経たずに着くでしょう。
先ほどの二人も……?」
「あぁ、私の仲間だ」
「全員は乗ることができません。見知らぬ顔が現れたら怪しまれる可能性もあります。どうか、アリア様お一人で」
ほんの少し、アリアさんの表情が変化したのが分かった。どことなく不安げに、小さい声で言う。
「……一人、で?」
「そうですね。出来るなら、その方がよいかと」
アリアさんがそっと顔を伏せたのを見て、思わず、僕はいっていた。
「二人乗れるんですよね?」
「そうですね。私は御者をするので、後ろに二人乗れるかと」
「なら、僕ついて行っちゃダメですか?」
「ウタ……」
「僕なら、アリアさんと一緒に街を歩き回ったりもしてますし、顔を知ってる人もいると思います」
「しかし」
「それに……エヴァンさんにも、会ったことあります。たくさん助けてもらいました。……このまま会えずに終わってしまうのは、悲しいです」
あくまで引く気がないのに気がついたのか、エドさんはため息をつき、諦めたように笑う。
「仕方ないですね……。分かりました。ウタさんだけはお連れしましょう。ただし、他の皆さんは無理です。もしいらっしゃるのであれば」
「いや、いいよ」
ふと後ろで声がして振り替えると、開かれた扉の後ろに、ポロンくんとフローラ、そして、サラさんが立っていた。
おそらく、全部聞いてきたのだろう。フローラが、優しく微笑みながら言う。
「私たちは、あとからゆっくり追いかけます。コックスさんとか、知ってる大人を頼っていきますから、心配しないでください」
「アイリーンのところにお世話になろうって話になったんだ。お金はほら、稼いだのもあるし」
……二人をおいていくのに、負い目を感じないわけではない。でも、正直、今のアリアさんを一人にして行かせるのは不安だ。心配以外になにもない。
だから、二人の言葉に甘えようと思った。
「分かった……。ありがとう、二人とも」
「ふふーん、いいんだい。おいら強いから」
得意気に言うけど、本当は二人ともさみしがりなんだ。それを知ってるからこそ、僕には嬉しかった。
「……大丈夫なのか? 二人で。私は、平気だから」
「大丈夫ですよアリアさん。私たちも、同じパーティーのメンバーですから! もっと、頼ってくれても、いいんですよ」
はっとしたように二人を見比べて、アリアさんは、優しげな笑みを浮かべた。
「……ありがとう、ポロン、フローラ」
それからは早かった。この日一日はエドさんの体調を気遣って十分に休ませた。その間に、僕とアリアさんは帰国に向けての準備をする。
そして、あっという間に次の日になり、僕らはトンネルを通りミネドールを出た。
縮小化の魔法が解け、僕らは元の大きさに戻る。ポロンくんとフローラと一緒に、サラさん、国王陛下、女王陛下、そしてラトさんが見送りに来てくれた。
「気をつけて帰るんだよ。……エヴァンとは長い付き合いだ。一緒に行けたらよかったんだが」
「クラーミルとの会談があるものね……。アリアちゃん、また気楽に寄ってね」
「……はい、ありがとうございました」
「お世話になりました!」
エドさんが少し急かすように咳払いをした。
「……そろそろ」
「じゃあ……待ってるから、追いかけてきてね」
「おう!」
「待っててください!」
そして、馬車が走り出す寸前、
「ウタ」
サラさんが、僕を見て言った。
「……頼むぞ」
僕は静かにうなずいて、その直後、馬車はマルティネスを目指して走り出した。
「おいっ! なにがあったんだよ! アリア姉っ!」
「アリアさんっ! あ、開けていいですか!? 開けますよ!? 開けます!」
「ポロン、フローラ……」
アリアさんがふらふらしながら立ち上がると同時に、扉が開け放たれ、二人が入ってきた。
フローラとポロンくんは部屋を見渡すと、エドさんを見てサッと身構えた。
「お前か……?! アリア姉傷つけたら許さないからな!」
「あ、いや……。違うんだ」
今にも飛びかかりそうなポロンくんを止め、無理矢理、アリアさんは笑って見せる。
「こいつは、エドって言って……私と父上の護衛をしてくれていた人なんだ。危険なやつじゃない」
それから、エドさんの方を見て、申し訳なさそうに笑いかける。
「……悪かったな、取り乱して」
「いや……仕方のないことですよ。落ち着けと言う方が、無理です」
「えっと……なにが、あったんですか?」
僕がちらりと辺りを見ると、サラさんが二人に歩みより、僕を見た。
「……話してくる。お前はここにいてくれ。
行こう、二人とも」
「…………」
二人は、後ろ髪を引かれつつも、サラさんに連れられて部屋を出て行った。それを確認したアリアさんはエドさんに向き合い、ゆっくりと告げる。
「……戻るよ、マルティネスに」
「アリア様……」
「身内で不幸があったんだ。帰らないわけにはいかない。それに、立場が立場だしな」
エドさんは体を起こすと、アリアさんを真っ直ぐと見た。
「ならば、今すぐにでも」
「それはダメだ。……お前の体が持たない」
「それなら明日です。明日にはここを出ましょう。いち早く国に戻るのです」
「……アリアさん、ドラくんなら、たぶん、馬車より速いです」
「ドラくん?」
「僕が使役しているドラゴンのことですよ」
すると、エドさんは首を横に振る。
「ドラゴンなら、確かに速くつくでしょう。しかし、国王を失ってただでさえ混乱しているのに、ドラゴンまで現れたら国内はパニックになります」
「ならどうやって……」
「……二人乗りの馬車で来ています。少し馬に無理をさせれば、一週間経たずに着くでしょう。
先ほどの二人も……?」
「あぁ、私の仲間だ」
「全員は乗ることができません。見知らぬ顔が現れたら怪しまれる可能性もあります。どうか、アリア様お一人で」
ほんの少し、アリアさんの表情が変化したのが分かった。どことなく不安げに、小さい声で言う。
「……一人、で?」
「そうですね。出来るなら、その方がよいかと」
アリアさんがそっと顔を伏せたのを見て、思わず、僕はいっていた。
「二人乗れるんですよね?」
「そうですね。私は御者をするので、後ろに二人乗れるかと」
「なら、僕ついて行っちゃダメですか?」
「ウタ……」
「僕なら、アリアさんと一緒に街を歩き回ったりもしてますし、顔を知ってる人もいると思います」
「しかし」
「それに……エヴァンさんにも、会ったことあります。たくさん助けてもらいました。……このまま会えずに終わってしまうのは、悲しいです」
あくまで引く気がないのに気がついたのか、エドさんはため息をつき、諦めたように笑う。
「仕方ないですね……。分かりました。ウタさんだけはお連れしましょう。ただし、他の皆さんは無理です。もしいらっしゃるのであれば」
「いや、いいよ」
ふと後ろで声がして振り替えると、開かれた扉の後ろに、ポロンくんとフローラ、そして、サラさんが立っていた。
おそらく、全部聞いてきたのだろう。フローラが、優しく微笑みながら言う。
「私たちは、あとからゆっくり追いかけます。コックスさんとか、知ってる大人を頼っていきますから、心配しないでください」
「アイリーンのところにお世話になろうって話になったんだ。お金はほら、稼いだのもあるし」
……二人をおいていくのに、負い目を感じないわけではない。でも、正直、今のアリアさんを一人にして行かせるのは不安だ。心配以外になにもない。
だから、二人の言葉に甘えようと思った。
「分かった……。ありがとう、二人とも」
「ふふーん、いいんだい。おいら強いから」
得意気に言うけど、本当は二人ともさみしがりなんだ。それを知ってるからこそ、僕には嬉しかった。
「……大丈夫なのか? 二人で。私は、平気だから」
「大丈夫ですよアリアさん。私たちも、同じパーティーのメンバーですから! もっと、頼ってくれても、いいんですよ」
はっとしたように二人を見比べて、アリアさんは、優しげな笑みを浮かべた。
「……ありがとう、ポロン、フローラ」
それからは早かった。この日一日はエドさんの体調を気遣って十分に休ませた。その間に、僕とアリアさんは帰国に向けての準備をする。
そして、あっという間に次の日になり、僕らはトンネルを通りミネドールを出た。
縮小化の魔法が解け、僕らは元の大きさに戻る。ポロンくんとフローラと一緒に、サラさん、国王陛下、女王陛下、そしてラトさんが見送りに来てくれた。
「気をつけて帰るんだよ。……エヴァンとは長い付き合いだ。一緒に行けたらよかったんだが」
「クラーミルとの会談があるものね……。アリアちゃん、また気楽に寄ってね」
「……はい、ありがとうございました」
「お世話になりました!」
エドさんが少し急かすように咳払いをした。
「……そろそろ」
「じゃあ……待ってるから、追いかけてきてね」
「おう!」
「待っててください!」
そして、馬車が走り出す寸前、
「ウタ」
サラさんが、僕を見て言った。
「……頼むぞ」
僕は静かにうなずいて、その直後、馬車はマルティネスを目指して走り出した。
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