208 / 387
魔王だよ! 全員集合!
魔王戦
しおりを挟む
「ふっ……。せいぜい後悔しないようにするんだな。
ちなみに……こっちのやつらは、どうだ? 俺の仲間になる気はないか?」
「いや……塊'sの敵になる方がよっぽど怖いな」
「瞬殺されるもんね」
「五人いるしね」
魔王はそれを怪訝そうに眺めたあと、僕に視線を合わせる。
「……なるほど、お前は転生者か。ならばお前がもし仲間になると言えば、もとの世界に帰してやろうか」
…………一瞬。
息を吸うことも、まばたきをすることすら出来ないような一瞬。
本当に、一瞬だけ。
その場の空気が凍りついたように感じた。
その魔王の言葉は、何よりも誰よりも、僕のことを怯えさせた。
「――僕は、もう向こうの世界では死んでいるんです。今さら戻る気はありません」
「お前と関わりのある人間の記憶を書き換えるくらい容易いことだが?」
「結構です。僕は帰りません」
……むしろ、帰りたくなんて、ない。
その言葉をグッと飲み込んで、代わりに魔王を睨んだ。僕の、精一杯の強がりだった。
「出来ないくせに、よく言うよね」
少し刺すような口調でアイリーンさんが言う。『こっち』で会った人の声を聞いて、安心している僕がいる。
戻らなくてもいい。
戻ることはできない。
なんとなく視線を定めることができないでいると、僕の肩に、優しい誰かの手が触れた。
「……大丈夫か、ウタ」
「…………アリア、さん」
「心配しなくても、ここには私たちだけじゃない。塊'sがいるんだぞ? 何を心配する必要があるんだ?」
そう言うアリアさんは……そう思っているようで、思っていないような、不思議な表情で僕をみていた。
その表情は、まるで、僕の中にある『本当の不安』を見抜いていて、その上で言わないでいるような……。
「……いつか、ちゃんと」
「ウタ?」
「ちゃんと……言います、から。それまで、待っていてくれますか?」
アリアさんは、ふぅ、と一息ついて、そして、柔らかく微笑んだ。
「……お前がヘタレなのは知ってる。言えるようになるまで、いくらでも待つさ」
そんな僕らを横目で見ていたのか、ジュノンさんがわずかに微笑んだ気がした。そして、それとは全く違う笑みを、魔王に向けた。
「じゃあ、やろうか?
……ドロウ! ラーメン準備!」
「ラーメンってなんだよ! ラーメンって!」
「今回はねー、九州風のとんこつ細麺のインスタントを用意したよ。熱湯を注いで二分。記録更新目指そうか」
カップ麺を用意するドロウさん。それをみながら、魔王が笑う。
「……四年前、貴様らは同じようなラーメン? を用意し、それが出来上がるのとほぼ同時に、しかもそれを守りながら戦い、俺を倒した」
「どんな戦い方してるの、個性の塊'sって」
「スラちゃん、それ聞いちゃダメだと思う」
「はーい」
「しかし、今回の俺は違う。前はレベル500で貴様らに敗れた。だから今回俺は――」
「ワクテカ」
「ワクテカ」
「レベル10000にしてきたぞ!」
れ、レベル10000!? それすごくない!?
……と思う僕とは対照的に、
「……ちぇっ」
「つまんねーの」
「ええええええっ?!」
「れ、レベル10000だぞ!? おいらたちだったら瞬殺だぞ!?」
「ウタさんの『勇気』が発動してもレベル2300なんですよ?!」
「いやー……私ら、レベル2300ならもう瞬殺できるくらいには強いんやで?」
「ひえっ」
「貴様ら、また俺を忘れているな!? もういい。俺だって世界征服と命がかかっている。もう待っていられない」
むしろ今までこんな茶番のようなそれを待っていてくれたのが優しいぞ魔王。
「あー、お好きにどうぞ? レベル5000の魔王さん?」
不意に、バカにしたようにジュノンさんが言う。……え、レベル5000?
「何をバカなことを……れ、レベル、5000?! そんな、そんなわけない!」
「ど、どういうことなんですか!?」
「ウタくーん! ジュノンのステータス、ちゃんと見てみなよー」
アイリーンさんに言われて、そうしてみることにした。……よし、それっぽいのは……『魔王の微笑み』と『侵略す』と『鉄壁の要塞』と……『化学』じゃないな。じゃあこの三つを鑑定してみよう!
魔王の微笑み……対象(無限に選択可)の全ステータスを2分の1にする。発動時間は30分。
侵略す……対象一体に対し、4連続特大ダメージ。暗闇状態にする。暗闇の発動時間は解除しない限り無限。解除には熟練度9以上の回復魔法。
鉄壁の要塞……自身のレベル未満の相手からの攻撃を完全に無効化する。発動時間は1時間。
どうやら、さっきジュノンさんが微笑んだとき……その時に、『魔王の微笑み』を発動させていたみたいだ。だからステータスが半分になったんだな。魔王の、微笑みなのに勇者が使ってる……うーん。
で、ここに入るとき使っていた『鉄壁の要塞』は、自分よりもレベルが低い相手の攻撃を無効化……すごいな。
『侵略す』が……と、思っていると、ジュノンさんが、まだ戸惑っているような魔王に手のひらを向けた。
「時間制限もあるし、さっさと終わらせるね」
「ジュノン一発で仕留めちゃってよ」
「おっけー……。
――侵略す」
そのとたん、目を焼き尽くすような光が目の前に溢れた。耳を潰すかのような声。目を開けたときには、魔王は消えていた。今の一撃で、倒したのだろうか?
……本当、に?
本当に倒したのか?
その答えは、目の前にあった。
「…………え」
目の前には、魔王の姿も――個性の塊'sの姿もなかった。
ちなみに……こっちのやつらは、どうだ? 俺の仲間になる気はないか?」
「いや……塊'sの敵になる方がよっぽど怖いな」
「瞬殺されるもんね」
「五人いるしね」
魔王はそれを怪訝そうに眺めたあと、僕に視線を合わせる。
「……なるほど、お前は転生者か。ならばお前がもし仲間になると言えば、もとの世界に帰してやろうか」
…………一瞬。
息を吸うことも、まばたきをすることすら出来ないような一瞬。
本当に、一瞬だけ。
その場の空気が凍りついたように感じた。
その魔王の言葉は、何よりも誰よりも、僕のことを怯えさせた。
「――僕は、もう向こうの世界では死んでいるんです。今さら戻る気はありません」
「お前と関わりのある人間の記憶を書き換えるくらい容易いことだが?」
「結構です。僕は帰りません」
……むしろ、帰りたくなんて、ない。
その言葉をグッと飲み込んで、代わりに魔王を睨んだ。僕の、精一杯の強がりだった。
「出来ないくせに、よく言うよね」
少し刺すような口調でアイリーンさんが言う。『こっち』で会った人の声を聞いて、安心している僕がいる。
戻らなくてもいい。
戻ることはできない。
なんとなく視線を定めることができないでいると、僕の肩に、優しい誰かの手が触れた。
「……大丈夫か、ウタ」
「…………アリア、さん」
「心配しなくても、ここには私たちだけじゃない。塊'sがいるんだぞ? 何を心配する必要があるんだ?」
そう言うアリアさんは……そう思っているようで、思っていないような、不思議な表情で僕をみていた。
その表情は、まるで、僕の中にある『本当の不安』を見抜いていて、その上で言わないでいるような……。
「……いつか、ちゃんと」
「ウタ?」
「ちゃんと……言います、から。それまで、待っていてくれますか?」
アリアさんは、ふぅ、と一息ついて、そして、柔らかく微笑んだ。
「……お前がヘタレなのは知ってる。言えるようになるまで、いくらでも待つさ」
そんな僕らを横目で見ていたのか、ジュノンさんがわずかに微笑んだ気がした。そして、それとは全く違う笑みを、魔王に向けた。
「じゃあ、やろうか?
……ドロウ! ラーメン準備!」
「ラーメンってなんだよ! ラーメンって!」
「今回はねー、九州風のとんこつ細麺のインスタントを用意したよ。熱湯を注いで二分。記録更新目指そうか」
カップ麺を用意するドロウさん。それをみながら、魔王が笑う。
「……四年前、貴様らは同じようなラーメン? を用意し、それが出来上がるのとほぼ同時に、しかもそれを守りながら戦い、俺を倒した」
「どんな戦い方してるの、個性の塊'sって」
「スラちゃん、それ聞いちゃダメだと思う」
「はーい」
「しかし、今回の俺は違う。前はレベル500で貴様らに敗れた。だから今回俺は――」
「ワクテカ」
「ワクテカ」
「レベル10000にしてきたぞ!」
れ、レベル10000!? それすごくない!?
……と思う僕とは対照的に、
「……ちぇっ」
「つまんねーの」
「ええええええっ?!」
「れ、レベル10000だぞ!? おいらたちだったら瞬殺だぞ!?」
「ウタさんの『勇気』が発動してもレベル2300なんですよ?!」
「いやー……私ら、レベル2300ならもう瞬殺できるくらいには強いんやで?」
「ひえっ」
「貴様ら、また俺を忘れているな!? もういい。俺だって世界征服と命がかかっている。もう待っていられない」
むしろ今までこんな茶番のようなそれを待っていてくれたのが優しいぞ魔王。
「あー、お好きにどうぞ? レベル5000の魔王さん?」
不意に、バカにしたようにジュノンさんが言う。……え、レベル5000?
「何をバカなことを……れ、レベル、5000?! そんな、そんなわけない!」
「ど、どういうことなんですか!?」
「ウタくーん! ジュノンのステータス、ちゃんと見てみなよー」
アイリーンさんに言われて、そうしてみることにした。……よし、それっぽいのは……『魔王の微笑み』と『侵略す』と『鉄壁の要塞』と……『化学』じゃないな。じゃあこの三つを鑑定してみよう!
魔王の微笑み……対象(無限に選択可)の全ステータスを2分の1にする。発動時間は30分。
侵略す……対象一体に対し、4連続特大ダメージ。暗闇状態にする。暗闇の発動時間は解除しない限り無限。解除には熟練度9以上の回復魔法。
鉄壁の要塞……自身のレベル未満の相手からの攻撃を完全に無効化する。発動時間は1時間。
どうやら、さっきジュノンさんが微笑んだとき……その時に、『魔王の微笑み』を発動させていたみたいだ。だからステータスが半分になったんだな。魔王の、微笑みなのに勇者が使ってる……うーん。
で、ここに入るとき使っていた『鉄壁の要塞』は、自分よりもレベルが低い相手の攻撃を無効化……すごいな。
『侵略す』が……と、思っていると、ジュノンさんが、まだ戸惑っているような魔王に手のひらを向けた。
「時間制限もあるし、さっさと終わらせるね」
「ジュノン一発で仕留めちゃってよ」
「おっけー……。
――侵略す」
そのとたん、目を焼き尽くすような光が目の前に溢れた。耳を潰すかのような声。目を開けたときには、魔王は消えていた。今の一撃で、倒したのだろうか?
……本当、に?
本当に倒したのか?
その答えは、目の前にあった。
「…………え」
目の前には、魔王の姿も――個性の塊'sの姿もなかった。
0
あなたにおすすめの小説
俺たちの共同学園生活
雪風 セツナ
青春
初めて執筆した作品ですので至らない点が多々あると思いますがよろしくお願いします。
2XXX年、日本では婚姻率の低下による出生率の低下が問題視されていた。そこで政府は、大人による婚姻をしなくなっていく風潮から若者の意識を改革しようとした。そこて、日本本島から離れたところに東京都所有の人工島を作り上げ高校生たちに対して特別な制度を用いた高校生活をおくらせることにした。
しかしその高校は一般的な高校のルールに当てはまることなく数々の難題を生徒たちに仕向けてくる。時には友人と協力し、時には敵対して競い合う。
そんな高校に入学することにした新庄 蒼雪。
蒼雪、相棒・友人は待ち受ける多くの試験を乗り越え、無事に学園生活を送ることができるのか!?
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~
中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」
唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。
人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。
目的は一つ。充実した人生を送ること。
異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる