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Ⅳ 嫌われ作戦は成功? 失敗?
⑤
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「ん?」
薄っすらと目を開ければ窓から洩れる光。しまった、寝過ごした。そう思って身体を起こすとリンの全身に走る痛み。
「いったぁ」
小さく声に出せば、ベッドでモゾリと何かが動く。驚いてリンが振り返るとカロール殿下が居た。
「あ、リン。おはよう。もう少し休もうか」
起きようとしていたリンを逞しい腕が布団の中に引き戻す。密着する素肌に驚いてリンは身体を固くする。『夢じゃないよな?』と何度も考える。自分を見て、リンも裸であることに悲鳴をあげたくなる。現実を理解できずに上掛け布団で身体を隠す。
情交のあとが色濃く見えるリンの肌。リンの動きにカロール殿下が目を覚まし、起き上がる。リンは呆けたようにカロール殿下を見た。困ったように微笑む殿下。
「リン。起きるのなら避妊薬を飲もう。発情期途中から俺もラットに入ってしまった。負担ばかりかけてゴメン」
カロール殿下の言葉をリンは青ざめて聞いた。裸の自分。裸の殿下。身体の痛み。それらが意味するところ。身体の震えが隠せなかった。
用意された避妊薬を内服しようとしたが、リンは手が震えて上手く飲めなかった。するとカロール殿下が薬を口移しでリンに飲ませた。水も口移しで与えられた。
発情期後だからか、アルファフェロモンが身体に染みこむ感覚が気持ち良かった。カロール殿下のフェロモンに包まれると幸福感以外は全て吹き飛んでしまう。リンは抗えないオメガの本能が幸せであり、怖くも感じた。
ベッドの上で柔らかいゼリーや飲み物をカロール殿下から与えられた。食べ物が胃に入ると頭が少しクリアになった。そのまま抱き上げられてお風呂に向かった。
「リン、また噛んでしまった。保護帯があるから番にはなっていない。でも、痛むよね。ごめん。」
リンの身体を柔らかい泡で洗いながらカロール殿下が問いかける。リンは全てを任せて首をフルフルと横に振る。
「そうか。今はまだ痛い感覚が鈍いのかも、な。頭がクリアになったら辛いかもしれない。リン、これまで発情期は来たことある?」
ゆっくり話す殿下を見つめながらリンは首を横に振る。
「初めての発情期だったのか。こんなつもりじゃなかったのに。リン、ごめん。本当は優しく大切に抱きたかった。ラットに入って獣のように襲ってしまった。ごめん。俺はこれまで全てを上手くこなせるアルファだった。世の中でコントロールできないモノはないと思って生きてきた。アルファの中のアルファだと自負していた。でも、リン相手だと上手く行かない。毎日後悔と反省ばかりで、情けない。リンを幸福で包み込んであげたいのに。こんなに大切なのに。どうして俺はうまくできないのだろう。本当に、ごめん」
リンの身体を洗いながらカロール殿下がボロボロと涙を流す。落ちてくる涙がリンの顔を伝う。
自信に満ちているはずのカロール殿下の泣き顔。眉を下げて悲しそうに嗚咽を溢す姿。リンはそっと手を伸ばしてカロール殿下の涙を拭った。泣かないで。そう伝えたいのに喉から声が出ない。
そっと殿下の頬を手で包む。堪えきれないように殿下が声を上げる。逞しい殿下がリンの目には小さな子供の様に映った。カロール殿下の膝から降りて、自信無げに背中を丸める殿下をリンの両腕で包み込む。腕が回らないほどの殿下の大きな身体。
「泣かないでください。カロール殿下は、優しいアルファです。泣き顔もラットの殿下も、全部含めて僕が抱きしめます。カロール殿下の全ては、僕が許します」
リンは心のままに言葉を発していた。リンの心には小さな灯がともっていた。セレスを裏切るわけではない。だけど、この逞しく脆いカロール殿下を支えていきたい。心の中でセレスに謝りながら、殿下を包み込むようにリンは腕に力をこめた。
「リン、愛している」
腕の中のカロール殿下の言葉。心が込められた言葉だと分かる。
「はい」
カロール殿下を抱き締めながらリンは涙をこぼした。少しの間、セレスのことを考えずに目の前のカロール殿下に向き合いたいとリンは思った。
その日からリンはカロール殿下の居室に移った。
カロール殿下が一緒に過ごして分かり合おうと提案してくれた。カロール殿下の居室は、リンの居室の隣だった。リンはデスクの鍵付き引き出しにセレスの書いてくれた『王子殿下に嫌われるための十の作戦』の紙をしまった。鍵を閉めて、心でセレスに声を掛けた。
ーー少しの間だけ、ごめんね。
薄っすらと目を開ければ窓から洩れる光。しまった、寝過ごした。そう思って身体を起こすとリンの全身に走る痛み。
「いったぁ」
小さく声に出せば、ベッドでモゾリと何かが動く。驚いてリンが振り返るとカロール殿下が居た。
「あ、リン。おはよう。もう少し休もうか」
起きようとしていたリンを逞しい腕が布団の中に引き戻す。密着する素肌に驚いてリンは身体を固くする。『夢じゃないよな?』と何度も考える。自分を見て、リンも裸であることに悲鳴をあげたくなる。現実を理解できずに上掛け布団で身体を隠す。
情交のあとが色濃く見えるリンの肌。リンの動きにカロール殿下が目を覚まし、起き上がる。リンは呆けたようにカロール殿下を見た。困ったように微笑む殿下。
「リン。起きるのなら避妊薬を飲もう。発情期途中から俺もラットに入ってしまった。負担ばかりかけてゴメン」
カロール殿下の言葉をリンは青ざめて聞いた。裸の自分。裸の殿下。身体の痛み。それらが意味するところ。身体の震えが隠せなかった。
用意された避妊薬を内服しようとしたが、リンは手が震えて上手く飲めなかった。するとカロール殿下が薬を口移しでリンに飲ませた。水も口移しで与えられた。
発情期後だからか、アルファフェロモンが身体に染みこむ感覚が気持ち良かった。カロール殿下のフェロモンに包まれると幸福感以外は全て吹き飛んでしまう。リンは抗えないオメガの本能が幸せであり、怖くも感じた。
ベッドの上で柔らかいゼリーや飲み物をカロール殿下から与えられた。食べ物が胃に入ると頭が少しクリアになった。そのまま抱き上げられてお風呂に向かった。
「リン、また噛んでしまった。保護帯があるから番にはなっていない。でも、痛むよね。ごめん。」
リンの身体を柔らかい泡で洗いながらカロール殿下が問いかける。リンは全てを任せて首をフルフルと横に振る。
「そうか。今はまだ痛い感覚が鈍いのかも、な。頭がクリアになったら辛いかもしれない。リン、これまで発情期は来たことある?」
ゆっくり話す殿下を見つめながらリンは首を横に振る。
「初めての発情期だったのか。こんなつもりじゃなかったのに。リン、ごめん。本当は優しく大切に抱きたかった。ラットに入って獣のように襲ってしまった。ごめん。俺はこれまで全てを上手くこなせるアルファだった。世の中でコントロールできないモノはないと思って生きてきた。アルファの中のアルファだと自負していた。でも、リン相手だと上手く行かない。毎日後悔と反省ばかりで、情けない。リンを幸福で包み込んであげたいのに。こんなに大切なのに。どうして俺はうまくできないのだろう。本当に、ごめん」
リンの身体を洗いながらカロール殿下がボロボロと涙を流す。落ちてくる涙がリンの顔を伝う。
自信に満ちているはずのカロール殿下の泣き顔。眉を下げて悲しそうに嗚咽を溢す姿。リンはそっと手を伸ばしてカロール殿下の涙を拭った。泣かないで。そう伝えたいのに喉から声が出ない。
そっと殿下の頬を手で包む。堪えきれないように殿下が声を上げる。逞しい殿下がリンの目には小さな子供の様に映った。カロール殿下の膝から降りて、自信無げに背中を丸める殿下をリンの両腕で包み込む。腕が回らないほどの殿下の大きな身体。
「泣かないでください。カロール殿下は、優しいアルファです。泣き顔もラットの殿下も、全部含めて僕が抱きしめます。カロール殿下の全ては、僕が許します」
リンは心のままに言葉を発していた。リンの心には小さな灯がともっていた。セレスを裏切るわけではない。だけど、この逞しく脆いカロール殿下を支えていきたい。心の中でセレスに謝りながら、殿下を包み込むようにリンは腕に力をこめた。
「リン、愛している」
腕の中のカロール殿下の言葉。心が込められた言葉だと分かる。
「はい」
カロール殿下を抱き締めながらリンは涙をこぼした。少しの間、セレスのことを考えずに目の前のカロール殿下に向き合いたいとリンは思った。
その日からリンはカロール殿下の居室に移った。
カロール殿下が一緒に過ごして分かり合おうと提案してくれた。カロール殿下の居室は、リンの居室の隣だった。リンはデスクの鍵付き引き出しにセレスの書いてくれた『王子殿下に嫌われるための十の作戦』の紙をしまった。鍵を閉めて、心でセレスに声を掛けた。
ーー少しの間だけ、ごめんね。
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