真面目学級委員がファッティ男子を徹底管理した結果⁉

小池 月

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Ⅳ 停滞期

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「酒井!」
 すぐに傍に駆け寄って上半身を抱き留めると、顔色が青白くなっていた。

「おい! 大丈夫か?」
 凛太朗の声に酒井が眉をひそめて目を開けた。

「あ、凛太朗……」
 抱き留めている酒井の身体が熱い。

 酒井は走って汗をかいている。その上、戻ってすぐに人に囲まれて水分を取れていない。凛太朗はすぐに酒井のバックに入っていたペットボトルを酒井に見せた。

「これ、酒井のだな。直ぐ飲んで」
 酒井はペットボトルを受け取り、緩慢に口に運んだ。ごくごくと飲む音が聞こえ、一息つくと顔色が少し良くなった。

「凛太朗、ありがとう。ちょっとクラっとした」
「いや、走ってから水分取ってなかっただろ?」

 酒井を抱き留めていると、その大きさがリアルの伝わってくる。酒井が寄りかかるように凛太朗に身体を預けている。これまで酒井が凛太朗を抱き締める事はあっても逆は無かったなぁと思い返す。

「ねぇ、救護所いかなくて大丈夫?」
 周囲の声に凛太朗はコクリと頷いた。

「うん。僕が連れて行くよ。ただ、酒井は大きいから、少し落ち着いて歩けるまで待つよ」
「うん、わかった。酒井君、ちょっと休んでね」

 周囲の人たちが自分の席に戻った。

「あの、風見君。これ」
 顔を上げれば大縄跳びで引っかかっていた女子がスポーツドリンクと水を差しだしていた。

「冷えてるほうがいいから、酒井君に」
「ありがとう」

 きっと自販機で買ってきてくれたのだ。心遣いが嬉しくて受け取ろうとしたが、急に酒井が凛太朗に抱き着いてきた。寄りかかっているだけだったのに。

 ふわりと酒井の匂いが鼻腔を突く。酒井の肌の熱さと匂いに酩酊しそうだと思った。心臓が芽吹いたかのようにドクドクと存在を主張する。凛太朗は受け取ろうとした腕が出せなくなる。

「酒井。大丈夫か?」
 調子が悪くなったのかと心配したが、酒井はしっかりとした瞳で凛太朗を見ていた。至近距離での強い瞳に凛太朗はドキッとした。

 凛太朗の身体を抱き締めたまま、酒井が片手を伸ばして女子からドリンクを受け取った。

「ありがとう」
 凛太朗を挟んで行われるやりとりに(なんだこりゃ)と凛太朗は首を傾げた。

 ふと周囲に群がる女子を思い返して、凛太朗に『嫌われ学級委員』と言い放った理香子たちが居ない事に気が付いた。理香子たちは酒井のもとに一番に駆け付けそうなのに。

「凛太朗、俺もう歩けそう。連れてってくれるんだろ? 救護所」
 ハッとして酒井を見た。確かに救護所に早めに行った方が良い。それに学級委員として体調不良者の報告をしなくてはいけない。

「うん。酒井はデカいからもう一人手伝ってもらおうかな」
「いや、凛太朗だけで良いから。大丈夫」

 急にふらついたら凛太朗だけでは支えられないと思うが、酒井に押し切られて凛太朗だけが付き添いになった。

 すでにリレーが終わり体育祭は閉会式だけになっているため、解散に間に合わないこと、救護所からそのまま帰宅する事を担任の先生に報告した。
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