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一章 信頼できるパートナー
信頼できるパートナー 9
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「そんなにオレが欲しいのか?」
「欲しい」
ぼくのストレートな回答に、ヴィンセントは何度かまばたきをして、微かに頬を染めた。
「ふん。せいぜい誠意を試してやるぜ」
そう言うと、ヴィンセントは上着をばさりと脱ぎ去った。厚い胸板や割れた腹筋があらわになる。
「なにをしている」
「なにって、聖剣を取りに行くんだろ? 着替えるんだよ」
「たいして寝ていないだろう。明日でいいぞ」
「こんな状態で眠れるか。石窟内は暗いだろうし、昼も夜もないだろう」
ヴィンセントは「それに」と言って口角を上げる。
「魔王さまがじきじきにナビゲートしてくれるんだから、こんなに安全なことはないぜ」
ぼくは苦笑した。
目的の石窟周辺には深い森があり、獰猛な高位の魔族が住んでいる。それが周知されているから、ヴィンセントも「手練れを集めて行かないと危険」だと言っていたのだ。
そんな所に、今すぐぼくと二人で行こうと言うのだから――。
もう結構、ヴィンセントに信用してもらえているのかもしれない。
そんな都合のいいことを考えてしまった。
同性同士でも着替えを見られるのは気まずいだろうと背を向けていると、「準備完了だ」と声をかけられた。
「まだ仲間になったわけでもないのに、ずっとオレに背を向けているなんて、度胸があるのか考えなしなのか。それとも背中に目がついているのか?」
そんなヴィンセントの揶揄は耳に入らなかった。
ヴィンセントが着ている膝まであるグレーのジュストコールは、襟や模様が赤い差し色になっている。黒い細身のパンツで、腰から剣帯でロングソードを下げていた。
うわあ、ゲームと同じ服装だ!
当たり前なのだけど、なんだか感動してしまった。
「なんだ、オレに見とれているのか」
そんなからかうような口調に、ぼくは「うん」と生返事をした。
「……そうか。ならこれも、あいこだな」
「うん?」
よく聞こえなくてヴィンセントの顔を見上げると、なぜか照れたような表情をしていた。
「剣聖の石窟に行こう。どうするんだ?」
気を取り直したようにヴィンセントが言う。
「すぐに着く」
ぼくはヴィンセントの肩に手をのせて、瞬間移動をした。わずかな時間だけ、ふわりと浮かぶ浮遊感と、空間を超える圧迫感がある。
「なっ……!」
次の瞬間、ぼくたちは暗い森の中にいた。ぼくには周囲が見えるけれど、ヴィンセントが困るだろうと魔法で照らす。
正面には、高くそびえる荒々しい岩肌が広がっていた。
「どこだ、ここは」
「石窟の近くのはずだ」
はずだ、というのは、ぼくもはっきりと場所がわからないからだ。
実は、聖剣を始末できないかなあ、とも考えたんだ。
聖剣がなくなれば、勇者すら魔王の脅威ではなくなる。
だけど、石窟の入り口は勇者がいないと反応せず、ほかの岩肌と違いがわからない。
それに、そもそも論だけど、天敵である勇者を排除したとしても、魔族と人が争って弟のピッピが死んでしまったら、ぼくは暴走して理性を失ってしまう。
それでは、生きていても意味がない。
「この壁のどこかに、洞窟への入り口があるのか」
黒い手袋をした指で、ヴィンセントは岩肌をなぞりながらゆっくりと歩く。ぼくもその後ろに続いた。
しばらくすると、壁の一角が赤く光った。
同じく、ヴィンセントの胸元も光を放つ。
「これは……」
「欲しい」
ぼくのストレートな回答に、ヴィンセントは何度かまばたきをして、微かに頬を染めた。
「ふん。せいぜい誠意を試してやるぜ」
そう言うと、ヴィンセントは上着をばさりと脱ぎ去った。厚い胸板や割れた腹筋があらわになる。
「なにをしている」
「なにって、聖剣を取りに行くんだろ? 着替えるんだよ」
「たいして寝ていないだろう。明日でいいぞ」
「こんな状態で眠れるか。石窟内は暗いだろうし、昼も夜もないだろう」
ヴィンセントは「それに」と言って口角を上げる。
「魔王さまがじきじきにナビゲートしてくれるんだから、こんなに安全なことはないぜ」
ぼくは苦笑した。
目的の石窟周辺には深い森があり、獰猛な高位の魔族が住んでいる。それが周知されているから、ヴィンセントも「手練れを集めて行かないと危険」だと言っていたのだ。
そんな所に、今すぐぼくと二人で行こうと言うのだから――。
もう結構、ヴィンセントに信用してもらえているのかもしれない。
そんな都合のいいことを考えてしまった。
同性同士でも着替えを見られるのは気まずいだろうと背を向けていると、「準備完了だ」と声をかけられた。
「まだ仲間になったわけでもないのに、ずっとオレに背を向けているなんて、度胸があるのか考えなしなのか。それとも背中に目がついているのか?」
そんなヴィンセントの揶揄は耳に入らなかった。
ヴィンセントが着ている膝まであるグレーのジュストコールは、襟や模様が赤い差し色になっている。黒い細身のパンツで、腰から剣帯でロングソードを下げていた。
うわあ、ゲームと同じ服装だ!
当たり前なのだけど、なんだか感動してしまった。
「なんだ、オレに見とれているのか」
そんなからかうような口調に、ぼくは「うん」と生返事をした。
「……そうか。ならこれも、あいこだな」
「うん?」
よく聞こえなくてヴィンセントの顔を見上げると、なぜか照れたような表情をしていた。
「剣聖の石窟に行こう。どうするんだ?」
気を取り直したようにヴィンセントが言う。
「すぐに着く」
ぼくはヴィンセントの肩に手をのせて、瞬間移動をした。わずかな時間だけ、ふわりと浮かぶ浮遊感と、空間を超える圧迫感がある。
「なっ……!」
次の瞬間、ぼくたちは暗い森の中にいた。ぼくには周囲が見えるけれど、ヴィンセントが困るだろうと魔法で照らす。
正面には、高くそびえる荒々しい岩肌が広がっていた。
「どこだ、ここは」
「石窟の近くのはずだ」
はずだ、というのは、ぼくもはっきりと場所がわからないからだ。
実は、聖剣を始末できないかなあ、とも考えたんだ。
聖剣がなくなれば、勇者すら魔王の脅威ではなくなる。
だけど、石窟の入り口は勇者がいないと反応せず、ほかの岩肌と違いがわからない。
それに、そもそも論だけど、天敵である勇者を排除したとしても、魔族と人が争って弟のピッピが死んでしまったら、ぼくは暴走して理性を失ってしまう。
それでは、生きていても意味がない。
「この壁のどこかに、洞窟への入り口があるのか」
黒い手袋をした指で、ヴィンセントは岩肌をなぞりながらゆっくりと歩く。ぼくもその後ろに続いた。
しばらくすると、壁の一角が赤く光った。
同じく、ヴィンセントの胸元も光を放つ。
「これは……」
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