【完結】討伐される魔王に転生したので世界平和を目指したら、勇者に溺愛されました

じゅん

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二章 発情トラブル

発情トラブル 4

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「なぜ僕なのですか。ほかの者に頼んでください。僕は成し遂げなくてはいけない研究があって忙しいんです」
 レザードは面倒くさそうに溜息をついた。
 ぼくは正面から、「理由ならある」と真っすぐにレザードを見つめた。
「レザードが魔族と人、両方の血を継いでいるからだ」
 ぼくの言葉に、レザードは動きをとめた。
「へえ、レザードって人の血が混じってるんだ。知らなかったけど、すごい納得。レザードって弱っちいのに、ヘンテコなボムで戦うじゃん。手作りの武器を使うのって、人間ぽいよね」
 エルネストの指摘に、レザードの白い肌に朱が走った。ずっと浮かべていた薄笑いも消える。その唇が震えた。
「あなたたちに……、魔力の高い種族に生まれたあなたたちに、僕の苦労がわかってたまるか」
 レザードはテーブルの上で拳を握った。抑えてはいるものの、それは燃え滾るような激しい怒りだった。
 出自は彼にとって、隠したい、消せない瑕疵なのだろう。
「知っている」
 レザードは視線だけ上げてぼくを睨んだ。ぼくはもう一度、アッシュブルーのレザード瞳を見つめながら繰り返す。
「わたしはすべて知っている」
 魔族と人との間に生まれた子は、魔族に育てられても人間に育てられても迫害されがちだ。レザードも例外ではなかった。
 魔族である母親はレザードを産んでから早々にいなくなり、レザードは一人で生きてきた。子育ての習慣がない種族は珍しくない。
 問題は、魔族としてレザードは弱すぎたことだ。
 だからレザードは人の血があることを隠し、強くなるために、あらゆるジャンルの研究を始めた。
 レザードにとって一番しっくりと来たのが、火薬と状態異常の魔力を融合させた小型爆弾だった。この道具を使って四天王のナンバー四、魔族のトップ五にまで駆け上がった。
 いわばレザードは、努力と根性でこの地位まで昇りつめたんだ。
 ――ぼくがこのゲームで一番感情移入したのは、レザードかもしれない。
 レザードは過酷な境遇から、自分の力だけでのし上がっていった。
 ぼくもベッドに縛られた環境で、自分を不幸だと思っていたけれど、でも、なにかできるのではないかと勇気をもらえた。
 だからレザードはとても好きなキャラだったんだ。
 レザードに会えて嬉しいし、幸せになってもらいたい。
「たとえ魔力がわずかでも、そのたゆまぬ努力と技術はなにものにも勝る才能だ。四天王にふさわしい」
「やめてください、突然なんですか。僕のことなんて、ずっと無関心だったくせに」
 レザードは頬を染めてぼくから目をそらした。
「成し遂げなくてはいけない研究があると言ったな。どんな研究だ」
 知っているけど、ぼくはあえてレザードに尋ねた。
 秘密裏に動いていた研究だからだろう、レザードは少しためらってから口を開いた。
「僕のように、魔族と人の間に生まれた者の遺伝子を操作して、どちらかの種族になるための研究です」
 それが完成したら、救われる者もいるのかもしれない。だけどその研究は、まるでレザード自身への呪いのようにぼくには思える。
「その研究を続けることはかまわない。ただ、どちらの血も通っていることを隠さず、楽しめる世界が可能かどうかも、研究の一つに加えてもらいたいだけだ。得意だろう?」
 レザードは困ったような、はにかんだような、複雑な表情を浮かべてぼくを見た。
「魔王さまは、いつの間にか口が回るようになったのですね」
 それからレザードはフッと口元を緩めると、いつもの薄ら笑いが戻ってきた。
「魔王さまがそこまで言うのなら、やってみましょう。もちろん、期限と予算は決めさせていただきます。別途、僕への報酬も」
「レザードってさぁ、いつも金、金言ってるよね。そういうの、拝金主義っていうんでしょ」
 両手で頬杖をついたエルネストがにこやかに言う。嫌味なのか素朴な疑問なのか、表情からは読み取れない。
「なんと言われようと結構ですよ、研究には資金が必要なんです。それと魔王さま、断れないだろうこの状況に、もう一つ付け込ませていただきますよ」
 すっかり本調子に戻ったレザードが身を乗り出した。
「あなたの血をください」
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