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三章 愛しい人との別れ
愛しい人との別れ 9
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ぼくは庭の半ばまで歩いて行き、脅えるようにこちらを見ている子供たちに声をかけた。
「わたしと遊ばないか?」
ちょっと照れる。
「なんか、怖い」
クロムと同じように、魔力に敏感な子は特に、ぼくに脅えているようだった。だけど、それが気にならない子供もいるようだ。
「ボクが遊んであげる」
思い切って、というように少年が声をかけてきた。肌のところどころに鱗がある、好奇心旺盛そうな子だ。
「じゃあ、オレも遊んでやるよ」
「あたしも!」
何人かがぼくの周りに集まってくれた。
「ねえねえ、なにして遊ぶの?」
小さい手に引っ張られると、ピッピを思い出して自然と頬が緩む。
「こういうのは、どうだろうか」
「うわっ」
子供たちがぼくの膝くらいの高さまで浮いた。
「なにこれ!」
「ポワンポワンする!」
ぼくは空気でゴムのような膜を作った。透明なトランポリンのようなものだ。
バランスが取れずにコロンコロンとしていた子供たちは、徐々に慣れてきて、高くジャンプできるようになった。
「わあっ、おもしろい!」
「スゲーッ!」
空中でピョンピョン跳ねている仲間を見て、ほかの子供たちも集まってきた。
「どうなってるのそれ?」
「怖くないの?」
「わたしもやりたい!」
掴みは上々だと微笑ましく眺めていると、ぼく自身に興味を持つ子供が近寄ってきた。
「お膝にのせて」
「髪が長くてキレイね。結んであげる」
「この角、引っ張ると痛い?」
角や尻尾はあまり触られたくないけれど、ぼくは堪える。しかも子供は力の加減をしてくれない。
慣れてくれたのは嬉しいけれど、だんだんとオモチャにされ始めている。
「ヴィンセント」
困って顔を向けると、子供を肩にのせているヴィンセントがニヤニヤしていた。
「人気者だな」
助けてくれる気はないようだ。
「ヴィンセントさん!」
そこに、背に茶色い翼を生やした有翼人が飛んできた。
「視察に来たとかいう人間が、商店街で揉めてるんです。来てくれませんか」
ぼくたちは顔を見合わせる。
街の発展を見守っているのは魔族ばかりで、人間領から人がやってくるのは珍しかった。
こういうトラブルは真っ先に街の代表であるレザードに連絡がいくはずだけど、タイミングの悪いことに、彼は魔族領に戻っているらしい。
「行こう、心当たりがある」
ヴィンセントは表情を引き締めた。
「心当たり?」
有翼人の案内で、ヴィンセントとぼくの二人は商店街に向かった。クロムは子供たちをみるために孤児院に残った。
「私が人間だからと嫌がらせをするとは。こんな卑劣な者たちの溜まり場となるなら、特区など即、解散せねばなるまい」
店の前でそう声を張り上げているのは、下腹が張り出したふくよかな体系の、六十代くらいの男性だった。金糸の刺繍で布地が見えないほど豪華なダブレットを身に着けていて、金持ちの貴族であることは間違いない。だけど、身分を主張しすぎているようで少々鼻につく。
「ああ、やっぱりだ。あいつ、特区の反対派代表の侯爵なんだよ」
ヴィンセントがウンザリというような口調でぼくに耳打ちした。
「わたしと遊ばないか?」
ちょっと照れる。
「なんか、怖い」
クロムと同じように、魔力に敏感な子は特に、ぼくに脅えているようだった。だけど、それが気にならない子供もいるようだ。
「ボクが遊んであげる」
思い切って、というように少年が声をかけてきた。肌のところどころに鱗がある、好奇心旺盛そうな子だ。
「じゃあ、オレも遊んでやるよ」
「あたしも!」
何人かがぼくの周りに集まってくれた。
「ねえねえ、なにして遊ぶの?」
小さい手に引っ張られると、ピッピを思い出して自然と頬が緩む。
「こういうのは、どうだろうか」
「うわっ」
子供たちがぼくの膝くらいの高さまで浮いた。
「なにこれ!」
「ポワンポワンする!」
ぼくは空気でゴムのような膜を作った。透明なトランポリンのようなものだ。
バランスが取れずにコロンコロンとしていた子供たちは、徐々に慣れてきて、高くジャンプできるようになった。
「わあっ、おもしろい!」
「スゲーッ!」
空中でピョンピョン跳ねている仲間を見て、ほかの子供たちも集まってきた。
「どうなってるのそれ?」
「怖くないの?」
「わたしもやりたい!」
掴みは上々だと微笑ましく眺めていると、ぼく自身に興味を持つ子供が近寄ってきた。
「お膝にのせて」
「髪が長くてキレイね。結んであげる」
「この角、引っ張ると痛い?」
角や尻尾はあまり触られたくないけれど、ぼくは堪える。しかも子供は力の加減をしてくれない。
慣れてくれたのは嬉しいけれど、だんだんとオモチャにされ始めている。
「ヴィンセント」
困って顔を向けると、子供を肩にのせているヴィンセントがニヤニヤしていた。
「人気者だな」
助けてくれる気はないようだ。
「ヴィンセントさん!」
そこに、背に茶色い翼を生やした有翼人が飛んできた。
「視察に来たとかいう人間が、商店街で揉めてるんです。来てくれませんか」
ぼくたちは顔を見合わせる。
街の発展を見守っているのは魔族ばかりで、人間領から人がやってくるのは珍しかった。
こういうトラブルは真っ先に街の代表であるレザードに連絡がいくはずだけど、タイミングの悪いことに、彼は魔族領に戻っているらしい。
「行こう、心当たりがある」
ヴィンセントは表情を引き締めた。
「心当たり?」
有翼人の案内で、ヴィンセントとぼくの二人は商店街に向かった。クロムは子供たちをみるために孤児院に残った。
「私が人間だからと嫌がらせをするとは。こんな卑劣な者たちの溜まり場となるなら、特区など即、解散せねばなるまい」
店の前でそう声を張り上げているのは、下腹が張り出したふくよかな体系の、六十代くらいの男性だった。金糸の刺繍で布地が見えないほど豪華なダブレットを身に着けていて、金持ちの貴族であることは間違いない。だけど、身分を主張しすぎているようで少々鼻につく。
「ああ、やっぱりだ。あいつ、特区の反対派代表の侯爵なんだよ」
ヴィンセントがウンザリというような口調でぼくに耳打ちした。
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