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四章 闇落ち ~破滅の刻~
闇落ち ~破滅の刻~ 2
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コツコツ。
「……ん?」
窓を叩く音が聞こえた気がして、ぼくは上半身を起こした。
またコツコツと音がする。聞き違いではないようだ。ベッドから降りると、窓の外にカラスが見えた。
あれって、前にも見た使い魔だろうか。
窓を開けると、ひょいと部屋に入ってきたカラスが桟に掴まった。その足には、予想どおり手紙が結ばれている。
既得権益にしがみついたタヌキたちの考えを変えることは不可能だ。
特区について、国民に是非を問う。
オレの主張が受け入れられるか、見に来てほしい。
ヴィンセントの筆跡で、手紙にはそう書いてあった。
ブルーシア城の庭で、今日の昼過ぎにヴィンセントが演説を打つようだ。
ぼくは空を見上げた。厚い雲がかかっていて太陽の位置は見えないけれど、そろそろ演説の時間なのではないか。
「返事をしても、カラスよりぼくが到着するほうが早いな」
ぼくは「運んでくれてありがとう」とカラスの頭を指先でひとなですると、人に変身して、ブルーシア城の庭の端に瞬間移動した。
既に庭には人が溢れていた。ほとんどが人間だけど、魔族の血を継いでいる者も少なくはない。ただ、魔力で判断する限り純粋な魔族はいなさそうだ。ぼくもできる限り、魔力が外に漏れないように努める。
城の庭は普段から一般公開されているものの、これだけ人が集まることは珍しい。警備も厳重だ。
ぼくみたいに瞬間移動ができちゃうと、警備なんて関係ないけどね。
ふふっ、と内心意地悪く笑う。
そうして周辺を見ていると、見たことのある顔に気づいた。
あれは謁見の間にいた、特区反対派の貴族だ。
一人なら気づかなかったかもしれないけど、特区反対派の貴族が三人もいて、初めて見る青年一人を囲んでいる。
その青年は全体的に黒っぽい服を着ているのだけど、気になるのは、手持ちの袋に入っているのが魔道具であることだ。
どんな魔道具なのかはわからないけれど、魔力の気配がする。
魔道具があれば、魔力がない者でも魔法を使うことができる。
ただし、武器にするのであれば、人にとっては銃や大砲のほうが扱いやすく威力が高いので、人間領で魔道具はそれほど普及していない。
少し気になったけれど、また知っている顔を見つけたので、そちらに意識が向いた。
城の三階の窓から、タルボット侯爵が見えた。数人の特区反対派の貴族たちと一緒だ。
彼らもヴィンセントの演説が気になって聞きに来たのだろうか。
そんなことを考えていると、城の三階中央にあるバルコニーからヴィンセントが現れた。膝まであるジュストコールという、見慣れた服装だ。離れていてもスッとした長身で端正な顔立ちであることはよくわかった。
集まった聴衆がワッとわく。特に女性からは黄色い声があがっていた。
人が多くて近づけないな。
ぼくは遠目から話を聞くことにした。
「今日は集まってくれてありがとう。魔族領との境に特区ができたことを知らない者はいないだろうが、どんな街なのか、実情はわからない者がほとんどだろう。その説明と、存続の是非を問いたい。先にオレについてだが――」
ヴィンセントは簡単な自己紹介と生い立ちを語り始めた。
これだけ広い庭なのに、ヴィンセントの朗々たる声が響いている。よく見ると、風属性の魔道具を胸につけていた。それが拡声器のような役割をしているようだ。
魔道具といえば、さっきの青年は……?
ふと思い出して周囲を見回したけど、青年は見つからなかった。魔力の位置を確認したものの、ここには魔力を持つ者も多いので、そちらからも探すことはできない。
これだけ人が多ければ仕方がないか。
タルボット侯爵はというと、仲間たちとワインを飲みながら笑い合っている。
ぼくは不審に思って、眉を寄せた。
ヴィンセントの話は聞いていないのだろうか? あんなに反対していた特区が認められるかもしれないのに、そんなに呑気でいられるものだろうか。
……なんだか、胸騒ぎがする。
「……ん?」
窓を叩く音が聞こえた気がして、ぼくは上半身を起こした。
またコツコツと音がする。聞き違いではないようだ。ベッドから降りると、窓の外にカラスが見えた。
あれって、前にも見た使い魔だろうか。
窓を開けると、ひょいと部屋に入ってきたカラスが桟に掴まった。その足には、予想どおり手紙が結ばれている。
既得権益にしがみついたタヌキたちの考えを変えることは不可能だ。
特区について、国民に是非を問う。
オレの主張が受け入れられるか、見に来てほしい。
ヴィンセントの筆跡で、手紙にはそう書いてあった。
ブルーシア城の庭で、今日の昼過ぎにヴィンセントが演説を打つようだ。
ぼくは空を見上げた。厚い雲がかかっていて太陽の位置は見えないけれど、そろそろ演説の時間なのではないか。
「返事をしても、カラスよりぼくが到着するほうが早いな」
ぼくは「運んでくれてありがとう」とカラスの頭を指先でひとなですると、人に変身して、ブルーシア城の庭の端に瞬間移動した。
既に庭には人が溢れていた。ほとんどが人間だけど、魔族の血を継いでいる者も少なくはない。ただ、魔力で判断する限り純粋な魔族はいなさそうだ。ぼくもできる限り、魔力が外に漏れないように努める。
城の庭は普段から一般公開されているものの、これだけ人が集まることは珍しい。警備も厳重だ。
ぼくみたいに瞬間移動ができちゃうと、警備なんて関係ないけどね。
ふふっ、と内心意地悪く笑う。
そうして周辺を見ていると、見たことのある顔に気づいた。
あれは謁見の間にいた、特区反対派の貴族だ。
一人なら気づかなかったかもしれないけど、特区反対派の貴族が三人もいて、初めて見る青年一人を囲んでいる。
その青年は全体的に黒っぽい服を着ているのだけど、気になるのは、手持ちの袋に入っているのが魔道具であることだ。
どんな魔道具なのかはわからないけれど、魔力の気配がする。
魔道具があれば、魔力がない者でも魔法を使うことができる。
ただし、武器にするのであれば、人にとっては銃や大砲のほうが扱いやすく威力が高いので、人間領で魔道具はそれほど普及していない。
少し気になったけれど、また知っている顔を見つけたので、そちらに意識が向いた。
城の三階の窓から、タルボット侯爵が見えた。数人の特区反対派の貴族たちと一緒だ。
彼らもヴィンセントの演説が気になって聞きに来たのだろうか。
そんなことを考えていると、城の三階中央にあるバルコニーからヴィンセントが現れた。膝まであるジュストコールという、見慣れた服装だ。離れていてもスッとした長身で端正な顔立ちであることはよくわかった。
集まった聴衆がワッとわく。特に女性からは黄色い声があがっていた。
人が多くて近づけないな。
ぼくは遠目から話を聞くことにした。
「今日は集まってくれてありがとう。魔族領との境に特区ができたことを知らない者はいないだろうが、どんな街なのか、実情はわからない者がほとんどだろう。その説明と、存続の是非を問いたい。先にオレについてだが――」
ヴィンセントは簡単な自己紹介と生い立ちを語り始めた。
これだけ広い庭なのに、ヴィンセントの朗々たる声が響いている。よく見ると、風属性の魔道具を胸につけていた。それが拡声器のような役割をしているようだ。
魔道具といえば、さっきの青年は……?
ふと思い出して周囲を見回したけど、青年は見つからなかった。魔力の位置を確認したものの、ここには魔力を持つ者も多いので、そちらからも探すことはできない。
これだけ人が多ければ仕方がないか。
タルボット侯爵はというと、仲間たちとワインを飲みながら笑い合っている。
ぼくは不審に思って、眉を寄せた。
ヴィンセントの話は聞いていないのだろうか? あんなに反対していた特区が認められるかもしれないのに、そんなに呑気でいられるものだろうか。
……なんだか、胸騒ぎがする。
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