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四章 闇落ち ~破滅の刻~
闇落ち ~破滅の刻~ 4
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侯爵は足でヴィンセント蹴って反応を確かめ、「よし、死んでるな」とニヤリと笑う。ぼくはヴィンセントを守るように抱きかかえた。
その一連が嘘のように悲壮な表情を浮かべたタルボット侯爵は振り返り、バルコニーから聴衆に呼びかけた。
「恐ろしいことが起きた、我々の希望の星が死んでしまった! 憎き殺人者はあそこにいる!」
庭からまた悲鳴があがった。
タルボット侯爵は、すぐ近くの離宮を指さしている。そこには黒づくめの服を着て、黒いマント、黒い角を二本生やした人物がいた。
「あれは魔族の魔王だ! 魔王が勇者を殺したのだ! やはり魔族となれ合うことなど不可能だ。特区など解体だ!」
タルボット侯爵の声に拍手や賛同の声があがった。
だけど、ぼくにはわかる。
離宮にいるのは、魔道具を持っていた青年が変装した姿だ。
「……そういうことか」
ぼくは怒りのあまり、全身が震えた。こんなことは初めてだ。
侯爵たち反対派がヴィンセントを暗殺したんだ。
青年が銃などではなく魔道具を使ったのは、ヴィンセントの死因が魔法である証拠を残すため。
たかだか金、地位、権力、そんな些細な欲のために、ヴィンセントの命を奪った。
ぼくの身体から、黒い瘴気が吹きあがった。
「なんだ、貴様は」
ぼくの変化に、タルボット侯爵が怯んでいる。
「知らぬのも道理。似ても似つかぬ偽物をこさえるようではな」
ヴィンセントをそっと横たえ、ぼくは立ち上がった。
「我が名はアーシェン、人はわたしを、魔王と呼ぶ」
人化を解除して真実の姿に戻る。
角と尻尾が生える。
それだけではとどまらず、ぼくの身体は更に変化していった。
――闇に落ちた龍神の姿へと。
「な……っ!」
タルボット侯爵はぼくに圧倒されて身体が動かないようだ。
骨格が音を立てて人ならざるものに変化し、筋肉は血を迸らせながらうごめいて、切断と再生を繰り返して肥大化する。皮膚の表面には硬質な黒い鱗が覆っていく。
「愚かなり。この世にわたしを止められる者はいない」
本来ならば、世界で唯一、ヴィンセントだけがぼくを止められた。
だけどもう、ヴィンセントはいないのだ。
この世界は、魔族に支配される。
「闇の彼方に葬ってくれるわ」
「ひっ、たすけ……っ」
黒い爪の伸びた鱗のある指を向けただけで、タルボット侯爵は消えた。
それからヴィンセントを魔道具で殺した者を含め、特区反対派の貴族たちを次々に消していく。
城の庭では逃げ惑う人々で阿鼻叫喚となっていた。
今は、まだ人を選んで消せている。
だけどきっと、徐々に理性や判断力がなくなり、ぼくは無差別に人を襲う恐怖の存在となるのだろう。
……やっぱり、ぼくは暴走してしまった。
きっかけが弟からヴィンセントに変わっただけだ。
運命は変えられなかった。
違うのは、ぼくが死ねないことだ。
ヴィンセントのいない世界で、ずっと――。
ぼくは咆哮をあげた。
その一連が嘘のように悲壮な表情を浮かべたタルボット侯爵は振り返り、バルコニーから聴衆に呼びかけた。
「恐ろしいことが起きた、我々の希望の星が死んでしまった! 憎き殺人者はあそこにいる!」
庭からまた悲鳴があがった。
タルボット侯爵は、すぐ近くの離宮を指さしている。そこには黒づくめの服を着て、黒いマント、黒い角を二本生やした人物がいた。
「あれは魔族の魔王だ! 魔王が勇者を殺したのだ! やはり魔族となれ合うことなど不可能だ。特区など解体だ!」
タルボット侯爵の声に拍手や賛同の声があがった。
だけど、ぼくにはわかる。
離宮にいるのは、魔道具を持っていた青年が変装した姿だ。
「……そういうことか」
ぼくは怒りのあまり、全身が震えた。こんなことは初めてだ。
侯爵たち反対派がヴィンセントを暗殺したんだ。
青年が銃などではなく魔道具を使ったのは、ヴィンセントの死因が魔法である証拠を残すため。
たかだか金、地位、権力、そんな些細な欲のために、ヴィンセントの命を奪った。
ぼくの身体から、黒い瘴気が吹きあがった。
「なんだ、貴様は」
ぼくの変化に、タルボット侯爵が怯んでいる。
「知らぬのも道理。似ても似つかぬ偽物をこさえるようではな」
ヴィンセントをそっと横たえ、ぼくは立ち上がった。
「我が名はアーシェン、人はわたしを、魔王と呼ぶ」
人化を解除して真実の姿に戻る。
角と尻尾が生える。
それだけではとどまらず、ぼくの身体は更に変化していった。
――闇に落ちた龍神の姿へと。
「な……っ!」
タルボット侯爵はぼくに圧倒されて身体が動かないようだ。
骨格が音を立てて人ならざるものに変化し、筋肉は血を迸らせながらうごめいて、切断と再生を繰り返して肥大化する。皮膚の表面には硬質な黒い鱗が覆っていく。
「愚かなり。この世にわたしを止められる者はいない」
本来ならば、世界で唯一、ヴィンセントだけがぼくを止められた。
だけどもう、ヴィンセントはいないのだ。
この世界は、魔族に支配される。
「闇の彼方に葬ってくれるわ」
「ひっ、たすけ……っ」
黒い爪の伸びた鱗のある指を向けただけで、タルボット侯爵は消えた。
それからヴィンセントを魔道具で殺した者を含め、特区反対派の貴族たちを次々に消していく。
城の庭では逃げ惑う人々で阿鼻叫喚となっていた。
今は、まだ人を選んで消せている。
だけどきっと、徐々に理性や判断力がなくなり、ぼくは無差別に人を襲う恐怖の存在となるのだろう。
……やっぱり、ぼくは暴走してしまった。
きっかけが弟からヴィンセントに変わっただけだ。
運命は変えられなかった。
違うのは、ぼくが死ねないことだ。
ヴィンセントのいない世界で、ずっと――。
ぼくは咆哮をあげた。
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