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本編
10月 ③
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「少しの間ですか、今日からまたよろしくお願いします」
「ああ」
担任に授業の相談に行ったところ、また隣り3-Aの担任から皇貴先輩の指名が入り、今日から2週間、社会科準備室で皇貴先輩に勉強を見てもらうことになった。
2週間限定なのは、学園祭の準備があるためだ。
「えっと、今日はここからここまでの範囲の授業出れなくて…」
「ああ、わかった」
今回は要点を説明してもらった。
自分でも一応勉強してるので、オレの理解に誤りがないかの擦り合わせがメインだ。
皇貴先輩の説明はすごく分かりやすくてサクサク捗った。
「なあ」
「はい?」
帰る支度をしていると、皇貴先輩がその辺の雑誌をパラパラさせながら声をかけてきた。
「お前のクラスの出し物って何?」
「ぶっっっ、ゲホッ、ゲホッ」
「大丈夫か?」
「あ、はい」
唐突な質問に咽せるオレの背中を、皇貴先輩は優しくさすってくれた。
「で?」
落ち着いたところで質問は再開した。
「き、喫茶店です」
「ふーん、ただの?」
3年生にもなると学園祭の出し物の喫茶店が普通のものではないことはわかっているようだ。
オレは観念して口を開いた。
「こ…、こ、すぷれ喫茶」
「は?」
「コスプレ喫茶です」
「コスプレぇ?」
プハッと笑われた。
皇貴先輩の1年の時の出し物もコスプレ喫茶だったのか「懐かしいな」と笑った。
「結季は何着るんだ」
「うぐっ」
やっぱり聞くよな。
言うのも恥ずかしくて、顔が熱くなるのを感じた。
「ほら、言ってみ」
「っ…、メイド服ですよ!フリフリのミニで、ケモ耳付き!」
「メっ…ふりっ?…ケモっ…」
開き直って言い放つと皇貴先輩は口をパクパクさせ、まともに声を発せずに固まった。
「もう一回言いましょうか?」
「いや、いい」
ヤケクソになって訊くとアッサリ引き下がった。
なんか先輩の様子がおかしい。
「先輩?」
「帰るぞ」
そう言うと、足早に社会科準備室を出て行くので慌てて追いかけた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
side Keito
父からの返信は思いの外早かった。
こちらから連絡して1週間。
仕事の合間にやったとしても早いと思ったが、メールの出だしは「遅くなって申し訳ない」だった。
メールの本文は「家に帰ってきた時に説明する」だったため、最終週の金曜の夜に帰ることにした。
「おかえり、佳都」
「ただいま帰りました」
親子だか少し堅苦しい挨拶がうちの家族の形だ。
「早速だが、本題に移っていいか?」
「お願いします」
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
父の話を聞いた翌日、寮に帰った。
父の報告は1週間で調べたとは思えないほど詳細な内容だった。
確かにメールや電話で話せる内容ではない。
これが事実であれば、今後結季の身になんらかの危険が及ぶ可能性が高い。
父が引き続き調べて新しい情報があれば連絡をくれること、何かあれば手を貸すと申し出てくれたのは心強かった。
だが、もし学園内で何か起きてしまったら対処できるのは皇貴と自分だけだろう。
直近で可能性があるとすれば、来月の学園祭だ。
土日の2日間で開催されるこのイベントは、外部の人間も来場する。
ここで昔の結季を知る人間に見つかってしまうのは、なんとしても避けなければならない。
それでなんとか今年乗り切ったとしても、来年、再来年はどうする?
皇貴も自分も居ないこの2年間をどう守る?
考えても考えても何も良い案が出てこないことなんて初めてだ。
その前に…
「皇貴にどう説明すべきか…」
長い長いため息を吐いた。
「ああ」
担任に授業の相談に行ったところ、また隣り3-Aの担任から皇貴先輩の指名が入り、今日から2週間、社会科準備室で皇貴先輩に勉強を見てもらうことになった。
2週間限定なのは、学園祭の準備があるためだ。
「えっと、今日はここからここまでの範囲の授業出れなくて…」
「ああ、わかった」
今回は要点を説明してもらった。
自分でも一応勉強してるので、オレの理解に誤りがないかの擦り合わせがメインだ。
皇貴先輩の説明はすごく分かりやすくてサクサク捗った。
「なあ」
「はい?」
帰る支度をしていると、皇貴先輩がその辺の雑誌をパラパラさせながら声をかけてきた。
「お前のクラスの出し物って何?」
「ぶっっっ、ゲホッ、ゲホッ」
「大丈夫か?」
「あ、はい」
唐突な質問に咽せるオレの背中を、皇貴先輩は優しくさすってくれた。
「で?」
落ち着いたところで質問は再開した。
「き、喫茶店です」
「ふーん、ただの?」
3年生にもなると学園祭の出し物の喫茶店が普通のものではないことはわかっているようだ。
オレは観念して口を開いた。
「こ…、こ、すぷれ喫茶」
「は?」
「コスプレ喫茶です」
「コスプレぇ?」
プハッと笑われた。
皇貴先輩の1年の時の出し物もコスプレ喫茶だったのか「懐かしいな」と笑った。
「結季は何着るんだ」
「うぐっ」
やっぱり聞くよな。
言うのも恥ずかしくて、顔が熱くなるのを感じた。
「ほら、言ってみ」
「っ…、メイド服ですよ!フリフリのミニで、ケモ耳付き!」
「メっ…ふりっ?…ケモっ…」
開き直って言い放つと皇貴先輩は口をパクパクさせ、まともに声を発せずに固まった。
「もう一回言いましょうか?」
「いや、いい」
ヤケクソになって訊くとアッサリ引き下がった。
なんか先輩の様子がおかしい。
「先輩?」
「帰るぞ」
そう言うと、足早に社会科準備室を出て行くので慌てて追いかけた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
side Keito
父からの返信は思いの外早かった。
こちらから連絡して1週間。
仕事の合間にやったとしても早いと思ったが、メールの出だしは「遅くなって申し訳ない」だった。
メールの本文は「家に帰ってきた時に説明する」だったため、最終週の金曜の夜に帰ることにした。
「おかえり、佳都」
「ただいま帰りました」
親子だか少し堅苦しい挨拶がうちの家族の形だ。
「早速だが、本題に移っていいか?」
「お願いします」
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
父の話を聞いた翌日、寮に帰った。
父の報告は1週間で調べたとは思えないほど詳細な内容だった。
確かにメールや電話で話せる内容ではない。
これが事実であれば、今後結季の身になんらかの危険が及ぶ可能性が高い。
父が引き続き調べて新しい情報があれば連絡をくれること、何かあれば手を貸すと申し出てくれたのは心強かった。
だが、もし学園内で何か起きてしまったら対処できるのは皇貴と自分だけだろう。
直近で可能性があるとすれば、来月の学園祭だ。
土日の2日間で開催されるこのイベントは、外部の人間も来場する。
ここで昔の結季を知る人間に見つかってしまうのは、なんとしても避けなければならない。
それでなんとか今年乗り切ったとしても、来年、再来年はどうする?
皇貴も自分も居ないこの2年間をどう守る?
考えても考えても何も良い案が出てこないことなんて初めてだ。
その前に…
「皇貴にどう説明すべきか…」
長い長いため息を吐いた。
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