金の野獣と薔薇の番

むー

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本編

おまじない

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発情期6日目。
発情期が終わりかけだから、身体の疼きは抑制剤を飲まなくても我慢できる程度だ。

4日前、家族の前で番宣言したのだが、その日の夜にくしゃみと鼻水が出て、風邪と診断された。
熱もあったけど、風邪のせいなのか発情期のせいなのか朦朧としていたオレには判別できなかった。
とりあえず、風邪薬が効いて昨日には鼻水も止まった。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

「さて、どうしたものか…」

今朝、お母さんと叔母さんが部屋に持ってきた箱の中身を直視できずに蓋をした。
ベッドの上で正座して箱と向き合うことかれこれ30分。

いや、わかるんだけど…。
わかりたくない自分がいる!

コンコン

「ひゃいっ」

ノック音に声がうわずった。

「くくっ…なんだ、ひゃいって」

ガチャリとドアを開けて、皇貴先輩は笑いながら入ってきた。
とっさに箱を背後に隠した。

「せ、先輩、どうしたんですか?」
「あー、お前のお母さんたちに行けって言われて…って、今なんか隠しただろ?」
「隠してなんかっ」

ベッドの上で動揺するオレの背後で、箱の中身がカタリと音を立てる。

「わっ、先輩」
「なんだこの箱?」

オレに覆い被さるように頭を抱いて、後ろの箱を見つける。

「あ…それは…その…」
「開けていいか?」
「いやっ、それはちょっと…」

訊いたクセにオレの返答を待たずに蓋を開けた先輩は、その状態で固まった。

「これっ……て…」
「……は、母たちからの、げ、激励品…かなぁ?」

恥ずかしすぎて先輩の顔が見れなくて明後日の方を見る。

「この薬は?」
「ぴ、ピル…です。は、発情期の時は、その、出来やすい、か、ら…あのっ、す、する前にも、の、飲んだ方がいいって、お、叔母さんが…」

吃りながら、消え入りそうな声で説明した。
恥ずかしすぎて、本当に消えたい…。

「ふーん…」

先輩は包装シートに入ったピルを目の前にかざして少しの間眺めた後、オレに視線を向けた。

「なあ、これ、俺が飲ませていい?」
「は?」

言ってる意味がわかりません。
首を傾げていると、先輩はドアに行くとカチャリと鍵をかけ戻ってきた。

「さっきな、お前のお母さんたちに今日は誰もこの部屋に近づけないって言われたんだ」
「………」
「それって、そういうことで合ってる?」

頭の後ろに伸ばされた手がオレの項を撫でる。
嗚呼、どこまで用意周到なんだウチの母たちは…。
オレは観念した。
目の前に立つ先輩を見上げて、コクンと頷いた。

顔が熱い。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

先輩は予告通り、オレに薬を飲ませた。
口移しで。
最初のキスで舌に乗せた錠剤を押し込まれ、次のキスで水を流し込まれ、そのまま訳がわからないうちに嚥下した。
それだけでオレの心臓はバクバクして息が上がった。

「結季」

耳元で囁かれるとブルリと身体が震えた。
身体がこの先の行為に期待しているみたいだ。

先輩は顔じゅうにキスをしながらオレの浴衣の帯を解いて、合わせに手を掛けてそっと開いた。
空気に曝された身体はまたフルッと小さく震える。
先輩のキスは耳から首筋を伝い鎖骨をなぞる。

「噛むぞ」
「ふっ…」

鎖骨に息がかかって返事が出せない代わりに、コクコクと頷いた。
先輩はふっと笑うと、首の付け根に齧り付いた。

「ふぁ…あ、あ……はぁ…ん…」

オレの身体は一気に熱くなった。

「フェロモンが濃くなったな」
「せ、先輩……キス……したい…」

オレは先輩にしがみついてキスを強請った。


その後はもう夢中でよくわからない。
触れる肌が気持ちよくて、そこから伝わる体温も気持ちよくて、先輩がもたらす快感にずっと喘いでいた。
オレの後ろは先輩の指で時間をかけて解され、溢れる愛液でドロドロになった。

「結季、挿れたい。挿れていいか?」

その言葉と共に孔から指が抜け、代わりに熱い塊がそこに当たった。

「あ……オレも……先輩の……欲し、い……」

自然に出た言葉に先輩が微笑むと、熱い塊がオレの中に入ってきた。
十分に解されたけど、指よりも大きいものをはじめて受け入れたそこは痛かった。
痛みだけでなく拭えない違和感と質量がすごくてうまく呼吸が出来ないオレに、先輩は何度も触れるだけのキスをして「大丈夫だ」と言って呼吸の仕方を教えてくれた。

先輩のものが馴染むと痛みは快感に変わり、オレの中は更なる刺激を求め疼いて、無意識に腰が揺れた。

「はっ…あんっ…せん、ぱい…」

先輩を見上げると、苦しそうに顔を歪めた。

「その顔、ズルいな」
「えっ、何が?…あっ…また、大きく…待っ…」
「待たない」
「う、ああっ」

入り口まで抜けたそれは、ズンっと一気に奥を穿った。
何度も穿たれて、中だけでなく身体ももっと熱くなる。

「結季…おまじない、していい?」
「あ…」

その瞳に霞がかっていた記憶が蘇る。

『こうくん、また会える?』
『また会おう。また逢えたら……』
『……うん?』
『また、おまじないしていいか?』
『…うん、…していいよ…。僕、こうくんだけにして欲しい……約束だよ』
『ああ』

ああ、そうだ……。

「結季?」
「思い…出した。約束……。こうくんが、またおまじないしてくれる、約束…」

記憶が戻っても思い出せなかった大切な約束を今やっと思い出した。
先輩は目を大きく見開いてオレを見つめた。

「思い出したのか…?」
「うん…。今思い出した。遅くなって、ごめん」

先輩の頬に触れ、伝う涙を拭う。
先輩はフルフルと首を振り、頬に触れるオレの手を取り、掌にキスをした。

一度、中から出た先輩は、オレの身体を反転させうつ伏せにすると再び入ってきた。

「んっ、あ、あ、あ…」

さらに質量を増した先輩のものがオレの中で擦れて、それだけでまた達してしまう。

「これからが本番なのにへばるなよ」
「んっ、だってぇ……はぁっ」

オレの項をざらりと舌が当たった。

「また匂いが濃くなった」
「んんっ…あ、ぁん…」

キスと舌で項を刺激され、同時に中の良いところを刺激されたオレは必死にシーツにしがみ付いて受け止めた。

「結季、出すぞ」
「ぅ…ん、あっ」

オレの返事を待たずに、先輩はオレの中に熱い飛沫を出した。

「あ、あ、あ…」
「まだだ」
「ふぁ…ああああ…」

オレの項に鋭い痛みが走り、それを追いかけるように全身に震えが走った。
そのまま後ろから抱きしめられ、しばらくその余韻に浸った。


オレは皇貴先輩の番になった。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

「つか……番になったからって、こんなにする必要ないじゃないですか」

オレを抱きしめながら横になる先輩に文句を言うと、先輩は誤魔化すようにおでこにキスをする。

「お前、あの一回で終われるわけないだろ。そのために箱の中にアレも入ってたんだから」
「そ、それは…そうかもしれないけど…」

モジモジするオレを先輩は強く抱きしめると、裸のままのオレと先輩のものが擦れる。
また流されそうになる雰囲気をグッと堪える。

「結季、もういっーー」
「だからって、全部使うほどしなくてもいいじゃないですか!」

やっぱり納得いかなくてオレは叫んだ。

腰が痛い。
ベッドから起き上がれないくらい痛い。
絶対、筋肉痛になってる。
というか、本気で動けない。

現在、深夜1時。
発情期、終わりました。


____________________

ちなみに、先輩のポケットにある財布にストックが3枚あったそうです。
ヤメテクレ…(by.結季)
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