姫様、国を買う〜亡国の姫は己の拳で金を稼ぐ〜

アジカンナイト

文字の大きさ
10 / 42

第十話 ジル

しおりを挟む
 「カリーナ、どうしますか?」
 アイは、この状況をどう打破するのかをカリーナに問うた。
「任せて」
 カリーナは不敵に笑うと、階段を堂々と降りていった。
 
――――(カリーナ視点)
 
 階段を降りると、そこには屈強な二人の男を後ろに控えさせた、小太りの男が立っていた。脂ぎった顔に、無駄に装飾のついた高価そうな服が鼻につく。
 
「そこの女! 何勝手に建物に入ってる!」
 男は唾を散らしながら怒鳴りつけてきた。
 
「ジルって人に用がありまして……」
 
「私が! この商会の副会長のジルだ!」
 
(……この人がジルなのね……)
 
「あなたがジルなのね。それなら良かった! 単刀直入に聞くけど、盗賊団のアジトを教えてくれない?」

 ジルは分かりやすく大きく動揺を見せる。
 
「な、な、な、盗賊団だと!? し、知らんぞ、私は!」
 
「残念だけど、昨日、あなたのお仲間がポロッと吐いちゃったんだよね」
 カリーナは動揺しているジルを哀れみの目で見つめた。
 
「や、やれ! お前ら! こいつを捕まえろ!」
 ジルは、裏返った声で後ろに控えさせた男たちに命令を飛ばす。
 
 男達は、カリーナを捕まえようと左右から飛びかかる。
 
「バレバレなのよ、初めから!」
 カリーナは拳を握ると、その男二人をまとめて殴り飛ばした。
 
 ドゴォン!
 
 男たちは壁に叩きつけられ、白目を剥いて呆気なく気絶する。
 
「さてさて、お話を聞かせて頂戴、ジル」
 腰を抜かし、後ずさるジルに優しく微笑んで近づいた。
 
「ひ、ひぃぃ!」
 突然、ジルは懐から白い球を取り出すと、それを地面に叩きつけた。
 
 ボンッ!
 
「ゲホッ、ゲホッ!」
 球から猛烈な勢いで白い煙が溢れ出し、煙で視界が遮られた。
 
「めんどくさいことをするわね!」
 煙を腕で払いながら悪態をつく。
 
 (大丈夫、入り口の扉が開く音は聞こえない。まだ近くにいるはず)
 
  しかし、煙が晴れた頃には、ジルの姿は跡形もなく消えていた。

 ◆◇◆◇

「みんなー! ちょっと降りてきてー!」
 下からカリーナの声が聞こえてくる。
 
「さっきの音、何だったのですか?」
 カリーナを心配していたアイが、すぐに階段を降りてきた。
 カリーナは、床で気絶している二人の男を指差した。
 
「あら……」
 アイは瞬時に状況を理解した。
 
「なんだ、怪我でもしたのか?」
 ブレイブが、浮かない顔をしているカリーナに聞く。
 
「怪我はしてないわ。それより、ジルが見つかったの」
 カリーナは皆に伝える。
 
「どこだ? あいつらか?」
 ブルーが倒れている男達を指差すが、カリーナは首を横に振った。
 
「さっきまでいたんだけど、煙幕を使って、この建物のどこかへ消えたわ」
 
「そういうことか。でもそれなら、二階には誰も来てないから、この狭い一階を探せばいいだけだな」
 ブルーは気楽に言った。
 
「そうね。でも、どこに隠れたのよ?」
 商会の一階は、入り口とロビー、そして受付カウンターしかなく、人が隠れられるような場所など見当たらない。
 
「あの受付のカウンターだとか棚だとか、全部どかせば、秘密の扉でも出てくるんじゃねぇか?」
 ブルーが適当なことを呟く。
 
「どかすったって、どうやってどかすのよ。これだけの家具を」
 
「よし、任せろ」
 ブレイブは、「待ってました」と言わんばかりに、腰につけた黒い球を手に握った。
 
「何よそれ」
 カリーナが、その球について尋ねる。
 
「まぁ見てなって。……よし、みんな外に出てくれ!」

 全員、外に出ると、ブレイブの所作を見守った。
 
 ブレイブは、全員出たことを確認すると、黒い球を建物の中に放り投げた。
 
「ボン!」
 
 ズドォォォォォォン!!!

 轟音と共に爆風が巻き起こり、建物は内側から弾け飛んだ。屋根が吹き飛び、壁が崩れ、一階の床だけを残して全てが瓦礫と化した。木片が雨のように降り注ぎ、辺りに散らばった。
 
「いやぁ、派手に散ったな。これで探しやすくなった」
 ブレイブは、満足げに笑った。
 
 ゴッ!!!
 
「いてぇよ! 何するんだ!?」
 ブレイブは、背後からアイにフルスイングで頭を殴られた。
 
「『派手に散ったぁ!』じゃないですよ! 建物を吹き飛ばすバカがどこにいますか!」
 アイは怒りにプルプルと身を震わせていた。
 
「ほら、私の言ったとおりだろ、アイ。些細なことで怒ったってキリがないぞ」
 サラマンダーは、我関せずと首をかいた。
 
 アイは、一人進んで建物の跡地へ足を踏み入れた。
 
「さて、綺麗になったことだし、探すか」
 ブルーとブレイブも、アイに続いて足を踏み入れた。

 ◆◇◆◇

 木片をどかしながらしばらく探していると、カリーナが入り口付近で異変を見つけた。
 
「ちょっと来て! ここの床、全く焦げてないわ!」
 カリーナの元に集まり、皆で確認すると、爆発にも耐え、煤一つついていない綺麗な木目の床がそこにあった。
 
「少し退いてくれるか?」
 サラマンダーが、皆をそこから離れさせる。

 ザン!
 キィン!
 
 サラマンダーはその床に向けて刀を一閃させた。
 鋭い金属音が鳴り響き、床が真っ二つに割れる。
 その下から現れたのは、地下深くへと続く暗い階段だった。
 
「探し物が出てきたぞ」
 サラマンダーは、刀を鞘に収める。
 
「流石、サラマンダーね!」
 カリーナは、サラマンダーの背中を叩いて、その階段を迷わず降りていく。
 
「ほら、行くぞ!」
 ブレイブは皆に声をかけ、カリーナの後に続いた。
 
 建物の地下には、蟻の巣のように幾つもの地下通路が延びていた。そして、通路の壁には、トグロを巻いた赤い蛇のマークが描かれていた。
 
「この通路を使って、色々な運送ルートに顔を出していたのでしょうね」
 アイが地図と通路を見比べながら考える。
 
「どの道が正解だ? これ」
 ブレイブは、ここ数日剃っていない髭をかいた。
 
「手分けするか?」
 ブルーが提案する。
 
「おい、ブレイブ?」
 ブルーは、何かモゾモゾと不審な動きをしているブレイブに目がいく。
 
「コインに聞いたところ、この道が正解だ」
 ブレイブが自信満々に右の通路を指差した。
 しかし、皆の反応は冷ややかだった。
 
「つまり、その道は絶対に不正解ってことですね」
 アイはブレイブに冷たい視線を送った。
 
「いや、なんでだよ」
 ブレイブは不満げに抗議するが、誰も聞いていない。
 
「とりあえず、手分けして探しましょう。ジルを見つけたら捕らえて。それ以外はいいわ。ジルは一人だけ服装が豪華だから分かるはずよ」
 カリーナは皆に伝えた。
 
 盗賊団を壊滅させる作戦が、地下迷宮で始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

処理中です...