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第二十八話 サラマンダー
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カルファス城三階。長い廊下をカリーナとサラマンダーが駆けぬけていると、廊下の端に茶色のマントを羽織った一人の男が剣を握って二人を待ち構えているのが見えた。
カリーナが拳を構えた瞬間、サラマンダーが前に飛び出した。
ビュン!キィィィン!
空気が切れるような音と共に、男が目にも止まらぬ速さで距離を詰めた。
サラマンダーの刀と男の剣がぶつかり合い、火花が散る。
「この男は任せてくれ。カリーナは先に行け」
「誰一人通すなという上からの指令でここに来た。だから……そういうことされると困るんだよな!」
男は廊下を抜けようとしたカリーナに狙いを定める。男が剣を引き、カリーナの背中に剣を振ろうとしたその瞬間、サラマンダーが刀が男の剣を弾いた。
キン!
サラマンダーは距離を取ろうとした男に詰め寄る。
キィィィン!!
「どこへ行く。お主の相手は私だ」
「チッ……手間をかけさせやがって」
男は面倒くさそうに舌打ちする。その隙にカリーナは廊下を駆けぬけていった。
「仕方ない……早めにケリをつけて、あの女を追いかけることにしようか」
男は、腰に差したもう一本の鞘から二本目の剣を引き抜いた。男は二刀流の使い手だ。
「我が名はサラマンダー。これからひと合わせするお主の名を聞こうか」
サラマンダーは腰を深く落とし、重心を低くした。
「カインだ」
名乗ると同時に、カインは距離を詰める。
ガン、ガン、ギィィィン……
カインの連撃をサラマンダーは器用に捌いた。急所を狙い続ける鋭いカインの剣は正に『殺しの剣』であった。
一瞬の隙を突いたサラマンダーは、カインの足を払う。体勢を崩したカインだったが、華麗な身のこなしで体を捻り、地面を転がると、サラマンダーの一振りを躱した。
「ふむ……今のを躱すか」
サラマンダーは、その身のこなしに感心する。
「ぺっ」
カインは、血の混じった唾を吐くと剣を握り直した。
「若人の挑戦は嫌いじゃない。しかし、実にもったいない……これほどの技量を持ちながら、その年齢で盗賊に身を落とすとは……」
見た目からカインの年齢を二十そこらだとサラマンダーは推測する。
「人を斬るのが俺の性分。その点、盗賊は都合がいい。殺しが正当化される」
そう言うとカインは二本の剣を構えて突撃し、サラマンダーとまた剣を合わせた。
「その剣の荒さは天然か」
サラマンダーは、カインと短く打ち合う間で、カインの剣技のブレを見つけていた。『殺しの剣』であるカインの技はおおよそ、実戦向きではあるものの、基礎ができていなかった。
がむしゃらに急所を狙い続ける『アドリブの剣』とサラマンダーは命名した。
サラマンダーはカインの双剣を弾くと、ガラ空きになった腹部を蹴り飛ばす。
ドン!
カインは衝撃で床を何度も転がった。
「“魔物”風情が……!」
カインは剣を突き立てて立ち上がる。カインの口から漏れたのは、人間族以外の種族に対して“魔物”と呼ぶのは差別用語のひとつであった。
「ふーむ……」
サラマンダーは、カインの悪口に目を細めた。
「その首を狩る!」
カインは剣を逆手に持ち替えると、サラマンダーの視界からヒュンと消えた。
(何らかの歩術か)
サラマンダーは静かに目を閉じると、カインの気配を探す。視覚は手に入る情報が多いが、聴覚は音の波で確実に敵を捉えることできる。
わずかな音を聞いたサラマンダーは目を見開いた。
そして――
「ぐはぁっ」
振り向きざまの一刀で背後から迫るカインを沈めたのであった。
サラマンダーは鞘に刀を収めると、地面に這いつくばったカインの方を向いた。
「なぜ……トドメを刺さない」
カインの声は掠れていた。
「お主の粗削りな剣術を見て、もったいないと思ったからだ」
「情けはいらない、早く殺せ」
「直にこの戦いは我らの勝利で終わる。お主は今後の生き方を見直すんだ」
サラマンダーは、カインの言葉をまともに取り合わず聞き流した。
「もっとも、お主ほど拗れた男が間違いに気づくには、最低でも百年はかかるかもしれないがな。ハッハッハ」
「くそが……」
カインはサラマンダーに吐き捨てると、意識を手放した。カランカランとカインの手から離れた剣の音が廊下に響き渡る。
サラマンダーはカインの敗北を見届けると、カリーナの後を追って走り出した。
カリーナが拳を構えた瞬間、サラマンダーが前に飛び出した。
ビュン!キィィィン!
空気が切れるような音と共に、男が目にも止まらぬ速さで距離を詰めた。
サラマンダーの刀と男の剣がぶつかり合い、火花が散る。
「この男は任せてくれ。カリーナは先に行け」
「誰一人通すなという上からの指令でここに来た。だから……そういうことされると困るんだよな!」
男は廊下を抜けようとしたカリーナに狙いを定める。男が剣を引き、カリーナの背中に剣を振ろうとしたその瞬間、サラマンダーが刀が男の剣を弾いた。
キン!
サラマンダーは距離を取ろうとした男に詰め寄る。
キィィィン!!
「どこへ行く。お主の相手は私だ」
「チッ……手間をかけさせやがって」
男は面倒くさそうに舌打ちする。その隙にカリーナは廊下を駆けぬけていった。
「仕方ない……早めにケリをつけて、あの女を追いかけることにしようか」
男は、腰に差したもう一本の鞘から二本目の剣を引き抜いた。男は二刀流の使い手だ。
「我が名はサラマンダー。これからひと合わせするお主の名を聞こうか」
サラマンダーは腰を深く落とし、重心を低くした。
「カインだ」
名乗ると同時に、カインは距離を詰める。
ガン、ガン、ギィィィン……
カインの連撃をサラマンダーは器用に捌いた。急所を狙い続ける鋭いカインの剣は正に『殺しの剣』であった。
一瞬の隙を突いたサラマンダーは、カインの足を払う。体勢を崩したカインだったが、華麗な身のこなしで体を捻り、地面を転がると、サラマンダーの一振りを躱した。
「ふむ……今のを躱すか」
サラマンダーは、その身のこなしに感心する。
「ぺっ」
カインは、血の混じった唾を吐くと剣を握り直した。
「若人の挑戦は嫌いじゃない。しかし、実にもったいない……これほどの技量を持ちながら、その年齢で盗賊に身を落とすとは……」
見た目からカインの年齢を二十そこらだとサラマンダーは推測する。
「人を斬るのが俺の性分。その点、盗賊は都合がいい。殺しが正当化される」
そう言うとカインは二本の剣を構えて突撃し、サラマンダーとまた剣を合わせた。
「その剣の荒さは天然か」
サラマンダーは、カインと短く打ち合う間で、カインの剣技のブレを見つけていた。『殺しの剣』であるカインの技はおおよそ、実戦向きではあるものの、基礎ができていなかった。
がむしゃらに急所を狙い続ける『アドリブの剣』とサラマンダーは命名した。
サラマンダーはカインの双剣を弾くと、ガラ空きになった腹部を蹴り飛ばす。
ドン!
カインは衝撃で床を何度も転がった。
「“魔物”風情が……!」
カインは剣を突き立てて立ち上がる。カインの口から漏れたのは、人間族以外の種族に対して“魔物”と呼ぶのは差別用語のひとつであった。
「ふーむ……」
サラマンダーは、カインの悪口に目を細めた。
「その首を狩る!」
カインは剣を逆手に持ち替えると、サラマンダーの視界からヒュンと消えた。
(何らかの歩術か)
サラマンダーは静かに目を閉じると、カインの気配を探す。視覚は手に入る情報が多いが、聴覚は音の波で確実に敵を捉えることできる。
わずかな音を聞いたサラマンダーは目を見開いた。
そして――
「ぐはぁっ」
振り向きざまの一刀で背後から迫るカインを沈めたのであった。
サラマンダーは鞘に刀を収めると、地面に這いつくばったカインの方を向いた。
「なぜ……トドメを刺さない」
カインの声は掠れていた。
「お主の粗削りな剣術を見て、もったいないと思ったからだ」
「情けはいらない、早く殺せ」
「直にこの戦いは我らの勝利で終わる。お主は今後の生き方を見直すんだ」
サラマンダーは、カインの言葉をまともに取り合わず聞き流した。
「もっとも、お主ほど拗れた男が間違いに気づくには、最低でも百年はかかるかもしれないがな。ハッハッハ」
「くそが……」
カインはサラマンダーに吐き捨てると、意識を手放した。カランカランとカインの手から離れた剣の音が廊下に響き渡る。
サラマンダーはカインの敗北を見届けると、カリーナの後を追って走り出した。
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